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乗馬体験1

その日は厩舎に行くことにした。

乗馬服はなかったが、乗馬できるようジェニファーもパンツを身に着けさせ、初夏の日差しが差し込んでいて日焼けするかもしれないのできっちりと長袖のシャツを着せる。


「お馬さんに会えるの?」


ジェニファーは今からわくわくしているのを隠そうとはしないが、ジャックは何も言わず口を結んでいる。だが緊張しているのかそわそわしているのがわかる。


ハンナは部屋にあったビアンカの乗馬服を身に着けた。

乗馬はやりこんでいたのかかなり着込んだ後がある。

双子なので体型は似ているためぴったりなのだ。


「ハンナおばさま。その服お母様のだわ」


ふたりを連れて厩舎まで歩いているとジェニファーが嬉しそうに服にそっと触れる。


「まぁ。一緒に乗馬をしたことがあるの?」


知っているということは一緒に乗馬も経験済みなのだろうか?

だが、ジェニファーは首を横に振る。


「お母様はいつもひとりでお馬さんに乗っていたわ」


眉尻が下がって悲しそうだ。


「連れて行ってくださらなかったの?」


だがまた首を横に振る。


「わたしたちはお母様と話しちゃいけないもん」


「え?」


「ジェニファー!」


ジャックが横から目をつりあげて声を上げた。


「お母様とは一日に一回しか会っちゃだめなの」


「ジェニファー!」


ついにジャックがジェニファーの腕をつかんだ。


「だって本当のことだもん。もうフィーネはここにはいないんだからいいじゃないっ!」


ジェニファーはジャックの腕を振り払うとハンナの足にしがみついてきたので、

ハンナはジャックの腕もつかむとそのまま座り込んでふたりを抱きしめた。


「そうよ。ジャック。フィーネはここにはいない。ここにはわたしたち三人しかいないから本当のことを言って。お母様に会っちゃいけないって決まっていたの?」


そう言うと、ジャックは口を真一文字に引き結んでからコクっと頷いた。


「お母様とは一日に一回。夕食のときに会うだけ。それ以外はずっとお勉強だから」


「まぁ……」


なんてこと。


「お母様のお部屋にも入ったことがないの?」


「はい」


「お母様がふたりのお部屋に入ったことは?」


「ないです」


「お母様はおしゃれにお忙しかったの」


ジェニファーが横から言う。


「え?おしゃれ?」


「だから、会えないってお父様が言ってた」


「お母様はお出かけばかりされていたの?」


「うーん。わかんないけど、お馬さんにはよく乗っていたわ。窓から見えていたの。いつもお馬さんでどこかに出かけて行かれるのが」


なんだろう。

ビアンカは確かにおしゃれには目がなかった。

だけど、馬で出かけるならおしゃれとは関係なさそうだ。


とにかくろくに会ってはいなかったということだ。

だが、ビアンカの意思とは考えにくい。

手紙にはあんなに双子のことを案じる内容が書かれていたのだから。


ということはあえて双子と会えないように仕向けられていたということだ。


「わぁ!見て。ジャック。お馬さん!」


「わぁ!大きい」


厩舎につくと、ふたりは大興奮でジャックも頬を紅潮させている。

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