双子の教育3
「ほら、ここを見て、鳥が巣をつくっているのがわかる?」
「わー……何かいる」
ジェニファーは興味津々だ。
「あれはアオリ鳥の赤ちゃんよ。あ、ほらほら見て!お母さん鳥が餌を運んできたわ」
「赤ちゃんなの?」
アオリ鳥というのは森の中によくいる鳥だ。だが、公爵家は木々がたくさんあるので巣を作っているらしい。
庭師たちもそのままにしているのだろう。
「あまり近づきすぎると親鳥が怒ってこっちに来るからそっと静かに見るのよ」
「はーい。ハンナおばさま」
「ジャックも見てごらんなさい」
「……」
「あ、ハンナおばさま!あっちにも何かいる」
「どれどれ。ああ。あれはねぇマンドルといって畑や小麦畑をよく走っている人懐こい小動物よ」
「わぁ……。すごい」
毎日管理され、城の中で勉強ばかりさせられ、外に出るなどろくになかったふたりだ。
アオリ鳥もマンドルもその辺りにたくさんいる小動物や鳥だが、いろいろ新鮮にちがいない。
「ジャック。ほらこっち見て!」
マンドルがジェニファーをじっと見ている。
人懐こい猫ぐらいの大きさのこの草食の小動物はぴょんぴょんと跳ねてこちらへやってきた。
そのうちそろそろと寄ってきて、そしてジェニファーを通り越してジャックの目の前で止まった。
と、ジャックの足元を前足でつんつんとつついている。
どうやらその場所に大好きな草が生えているようだ。
「え?これを食べるの?」
今まで黙っていたジャックが驚いてひょいっと飛びのいたら、そのあたりの草をむしゃむしゃと食べている。
草を抜いてジャックに差し出してあげるよう言うと、ジャックの手からマンドルが草をむしゃむしゃと食べはじめた。
「す、すごい」
「わたしもあげたい」
ジェニファーが言うので、草を引いてあげると、ふたりの手から食べ始める。
動物との触れ合いにふたりは夢中になっていた。
そんなふたりをハンナは微笑ましく眺めた。
笑顔も出て来て楽しそう。
やがて、マンドルは満腹になったのかふたりの前から去っていった。
「マンドル。すごいね」
「あ、ああ」
ジャックは少し照れくさそうだったが、ふたりとも満足そうに笑っている。
これが本当の子どもの笑顔だ。
この子たちはこの笑顔を今まで知らなかったのだ。
ひどい話だ。
「ねぇハンナおばさま。これが勉強なの?」
「そうよ」
「でも少しもつらくないわ」
「今あなたたちはマンドルについて勉強できたでしょう?」
「え?」
「何がわかった?」
「えっと、マンドルは草を食べる」
「マンドルはぴょんぴょん飛ぶ」
「マンドルはジャックを好きみたい」
そしたらジャックが「ぷはっ」と噴き出した。
「それはちがうだろう?たまたま僕の足の下に草があったからだよ」
「あら、わたしの方にもあったのにわたしの方にはこなかったわ」
「あ、そっか」
こんなによくしゃべる子たちだったなんて。
子どもってすごい。
それからは夕方までずっと庭を散歩していろんな動物や植物を見て回った。
本来はこうやっていろいろ覚えていくのが子どもの勉強である。




