驚くべき事実2
「もちろん父だ」
父?
父って誰のこと?
ウィルバートの父?
ということは?
「先の公爵閣下のお子だと?」
「そのとおり。知らなかったのか?」
知らないも何も……ビアンカからはウィルバートの子だと聞かされていた。手紙にも間違いなくそう書いてあった。
「世間的には俺と結婚したことになっていたのか知らないが、俺は君の姉と寝たことはないね」
ね、寝た?
年増とはいえ、まだ独身の令嬢に対してそんなストレートに……言わないでほしい。
「事実、ここに結婚証明書もある」
ウィルバートがヤーコンから受け取ったのは確かにビアンカの筆跡でサインされた神殿発行の結婚証明書だ。相手の名はウィルバートではなく『フランチェスコ・キングスフォード』と書かれている。
「そんな……父も母も姉は閣下と結婚したものと思っておりますわ」
だが、よく考えてみたら結婚話を聞いた時に、キングスフォード公爵家からの縁談だと彼女は言っていた。ウィルバート公子様とは言っていなかった気がする。
結婚式はお相手も忙しいので挙げないし、遠いので来なくていいとひとりで嫁いで行ったのだ。
奔放なビアンカは大人になってからはひとりで王都のタウンハウスに滞在していたため家族とも疎遠だったのもあり父も母も彼女の言う通り結婚式には行かなかった。
だが、まさかこんなに早く亡くなるとは思ってもおらず今になってふたりとも後悔している。
もっと彼女と交流しておくべきだったと。
だが、まさかこんな嘘が隠されていたとは……。
「そもそも俺は一度も君の姉と結婚していたとは言ってはいない」
その通りだった。
勝手に姉の夫という前提で話を進めていただけだ。
「だが、世間でも俺と結婚していたと思っていた者が大半だろう」
「閣下はどうして否定されなかったのですか?」
「別に……、結婚してると思われた方が付き纏ってくる女が減るだろうからな」
何それ。
モテる男の嫌味にしか聞こえないわ。
「そういうことだから俺は双子に情はない。俺の子ではないからな」
「けれどそれなら弟と妹になるのですよね?可愛くは思われないのですか?」
「ん……俺は父親とは疎遠だったからな。十歳の時に母が死んでからはプレストンの寄宿学校に入れられて、卒業したらそのまま近衛騎士団に入団したからあまり父にも情が湧かなくてな」
そんな暮らしを……。
十歳でお母様を亡くされていたとは……。
十歳から寄宿学校だなんて、本当に父親とは疎遠だったのかもしれない。
「早とちりして申し訳ありませんでした」
そもそもビアンカとろくに連絡もとらずにいた自分たちも悪いのだ。
素直にハンナは頭を下げた。
「意外だな」
頭をあげるとウィルバートが不思議そうな顔をしている。
「何がですか?」
「素直に謝ったことだ」
「え?」
「ここに来た時から一方的に決めつけて勝手に解釈する女だなと思ってたが、自分の比は認めるんだな」
なっ!
にやっと口角をあげると、その顔がまた魅力的だ。
こういう男はどんな顔をしたって魅力的なんだろう。
「じ、自分が悪かったことはちゃんと認めます。そんな身勝手ではありません」
「はははは」
腕を組んで高らかに笑った。
なんなのよ。この男。
明らかにハンナがこの男に翻弄されている。
モテる男というのは女性の扱いになれている。
それは知っているが……。
この男のペースにのせられてはならないわ。
「ですが!」
「ん?」
「このままほうっておくわけには参りません」
気持ちを切り替えてきりっと口を結んで言った。




