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【完結】都合のいい私を、辞めることにしました【番外編あり】  作者: 福嶋莉佳
二十章

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第3話

やがて、レオンが荒い足取りで玄関から出てきた。


その後ろを歩くローレンスへ、突然振り返る。


「どうして、黙っていたんだ!」


ローレンスの足が止まった。


「何?」


「母上の遺言だ! どうして何も話さなかった!」


「お前のためだ!」


父も声を荒らげた。


「お前を、この家の当主にするために、私は――」


「だったら、最初から俺にも話しておけばよかっただろう!」


レオンは父へ詰め寄った。


「何も知らされないまま……俺はずっと、後継者だと思っていた! そのせいで、金も士官学校へ入る機会も、全部失ったんだぞ!」


「私のせいだと言うのか!」


「父上はいつもそうだ! 都合の悪いことを隠して、どうにかなると思って先延ばしにする! だから全部エリナに奪われたんだ!」


俺は眉間を押さえた。


最後まで、エリナが奪ったと思っているらしい。


「なら、お前はどうなんだ!」


ローレンスの顔が怒りで赤くなる。


「お前がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった! 後継者として領地の仕事を学び、周囲や領民から認められていれば――」


「俺のせいにするのか!?」


「貴族法院でお前が後継者として認められなかったから、こうなったんだろう!」


「もういい」


低い声に、二人がこちらを向いた。


互いに責任を押しつけ合いながら、エリナへしたことを悔いる言葉は一つもない。


俺は二人を見据えた。


「出ていけ」


ローレンスが何かを言おうと口を開く。


だが、それ以上聞く気はなかった。


「この屋敷は、もうあなた方の家ではない」


執行官が馬車を示す。


ローレンスとレオンは互いを睨みながら、それぞれ馬車へ乗り込んだ。


扉が閉まり、二台の馬車が屋敷を離れていく。


俺は、その姿が見えなくなるより先に背を向けた。



リュークハルト邸を出る頃には、すでに日が傾き始めていた。


馬車がグラーフ家の本邸へ着き、玄関へ入ると、すぐにエリナがこちらへ駆け寄ってきた。


「アーネスト様っ……」


俺の顔を見るなり、不安そうに眉を下げる。


「どうでしたか?」


「終わった」


「……お父様たちは?」


「退去した。執行官にも確認させた。もう、あの屋敷へ勝手に入ることはできない」


「お父様たちは……何か、言っていましたか?」


一瞬、迷った。


最後までエリナを責めていたことを、わざわざ聞かせる必要はない。


「大したことではない」


「……そうですか」


エリナは、それ以上尋ねなかった。


「これで……そうですね。本当に、私はお父様とお兄様との縁を切ったことになるのですね……」


その表情に、ほんの少しだけ寂しさが浮かぶ。


「ああ」


少なくとも、あの屋敷については。


これから先、あの二人が何をしようと、エリナの生活へ入り込ませるつもりはない。


そう思っていると、エリナがなぜか急に落ち着かない様子を見せ始めた。


指先を組んだり、ほどいたりしている。


「……どうした」


「えっ」


「何かあるんだろう」


「……」


分かりやすい。


しばらく俯いていたエリナが、意を決したように顔を上げた。


「あの、アーネスト様……すみませんでした」


「何がだ?」


「私……何も知らなくて……」


「……もう聞いたのか」


エリナの顔が、一気に赤くなった。


「リリアに、その……夫婦のことを……きちんと教えてもらいました」


「そうか」


俺としては、知った上でエリナがどう思ったのか、それだけが気になった。


怖いと思ったのなら、待てばいい。


昨夜もそう決めた。


だが、エリナはなぜか小さく拳を握った。


「で、でも……!」


「……?」


「私、大丈夫ですから……!」


「何が」


「ですから、その……」


耳まで真っ赤にしながら、エリナは俺を真っ直ぐ見つめた。


「今日こそは!」


「……」


何を言われたのか理解するまで、数秒かかった。


「……エリナ」


「はい!」


なぜ、そんなに気合いが入っている。


昨夜、何も知らずに自分から頬を寄せ、俺の腕の中で眠り、挙げ句に寝言で好きだと言った女が。


今日はすべてを知った上で、今日こそは、と言っている。


「リリアから、何をどう聞いた」


「えっ!?」


エリナの顔がさらに赤くなった。


「えっ、えっと……男の人の――」


「いや。言わなくていい」


思わず額を押さえる。


余計なことを聞いた。


「エリナ……怖くはないのか?」


エリナは目を瞬いた。


それから、少しだけ照れたように微笑む。


「少しは……怖いです」


「……」


「でも、それよりも……私は、アーネスト様と本当の夫婦になりたいです」


言葉が出なかった。


昨夜は、何も知らなかった。


だから止まれた。


だが、今は違う。


すべてを知った上で、エリナ自身が俺を望んでいる。


「……エリナ。それを、今ここで言うのか」


「え?」


「まだ夕食前だぞ」


「……? 早く、私の気持ちをお伝えしたくて……」


「使用人もいる」


「え?」


エリナが周囲を見回す。


離れた場所には、こちらを見ないよう懸命に努めている使用人たちがいる。


ようやく気づいたらしい。


エリナの顔が、一気に赤くなった。


「……っ!」


両手で口元を押さえる。


「わ、私……」


俺は深く息を吐いた。


本当に。


どうしてこういうところだけ、妙に抜けているのだろう。


「……行くぞ」


「え?」


エリナの手を取る。


「ア、アーネスト様?」


「ここで続きを話すつもりか?」


「……! い、いえ!」


「分かっている」


手を引き、そのまま歩き出す。


背後に残した使用人たちのことは、もう見ないことにした。


どうやら今日も、平静でいられる時間は短そうだった。


――その予感は、外れなかった。


腕の中で眠るエリナを見ながら、俺はしばらく動けずにいた。


その夜も、眠りについたのは遅かった。


それでも、不思議と疲れてはいなかった。

( ゜∀゜)・∵. グハッ!!


連投、とりあえずここまでです……ちょっと休ませてくださいm(_ _)m


作者、皆様のおかげで学びました。

クズ家族(笑)のオチ、ありますよ!\(^o^)/


暫しお待ちください!

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― 新着の感想 ―
朝チュンしなかったんだ? 生殺しとか可哀想w 兄貴は加害者でありながら被害者でもあったか。 毒父の性根は困ったモンですね。
アーネスト様生殺し耐久チャレンジで クズ家族のどうこうが全部とびました 彼らはまあどうでもいいや よかったですねアーネスト様笑
父の「臭いものには蓋をする」「面倒な事を後回しにする」性格&当主になれなかったコンプレックスのせいで 兄→母が考えた自立ルートを潰され、偽りの次期当主としてのプライドだけ育ち、正統な遺言書により木っ端…
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