第六章:暗殺者?
神崎 蓮はショップ画面を開いて確認し、思わず驚いた。システムショップでも通貨には魔石が使われているらしい。しかし、現時点で販売されているのは、わずかな生存必需品だけだった。武器や戦闘装備の上位カテゴリはすべてロックされており、解放条件には最低でもレベル10が必要だと表示されている。最も重要な商品区画を利用できるようになるまで、まだしばらく経験値を稼がなければならないようだ。
ショップ画面を閉じると、神崎 蓮は先ほどの激しい狩りで得た戦利品を、グリッド式インベントリで整理し始めた。大量に備蓄した生肉や野草のほかに、今回の戦利品には少し破れたスーツ一着と、普段着が数着含まれていた。おそらく、かつて「ゾンビ」へと変異した不運な者たちが落とした装備だろう。考えてみれば、この終末世界の設定では、「ゾンビ」は噛みつくことで普通の人間に感染させられる数少ない生物の一種だ。狩りに出た者が命を落とし、怪物へ変わってしまうことも珍しくない。
神崎 蓮が「実績パネル」を開くと、聞き慣れたシステム音声が立て続けに鳴り響いた。
「ピコン! 宿主は実績『武器マスター-0』の解放に成功しました。スキル『武器マスター-0』を獲得しました」
「ピコン! 宿主は実績『サバイバル武器-1』の解放に成功しました。EXPを500獲得しました」
二つの通知が同時に表示され、それぞれの実績項目には赤い感嘆符が点滅していた。詳細を確認すると、スキル欄に新しい能力が追加されており、画面の隅にある経験値バーも自動的に三分の一以上伸びていた。
だが、かつてトップクラスのレベル上げ代行をしていた神崎 蓮の注意を引いたのは、経験値の報酬でも、獲得した二つの実績でもなかった。「実績パネル」の最下部にある「???」という項目だ。興味を引かれて開いてみると、隠し実績の枠が五つ並んでいた。名称も説明も、謎めいた疑問符ですべて隠されている。この仕組みを見れば、五つの隠し実績が並大抵ではない力につながる節目であることは明らかだった。
システムの仮想空間から意識を戻すと、神崎 蓮は便利な変化に気づいた。もう機能画面を開くたびに、わざわざ声に出して命令する必要はない。考えるだけでも、ちょっとしたジェスチャーをするだけでも、操作パネルが自動的に表示されるのだ。さらに、属性ウィンドウをパソコンのウィジェットのように視界の中へ固定することもできた。かつてPCゲームをやり込んでいた頃を思い出させる、実に使い勝手のよい機能だった。
画面を固定する操作を試していたとき、インベントリの隅に見慣れない荷物があるのが目に入った。先ほどの狩りで拾った覚えはない。戦利品を急いで回収しているうちに、うっかり拾ってしまったのかもしれないし、システムからの別の隠し報酬なのかもしれない。いずれにせよ、その荷物には赤い感嘆符が表示され、開封可能な状態になっていた。
神崎 蓮がプレゼントを開くと、インベントリに古びた一冊の本、「血玉」と一通の手紙が現れた。百科全書の題名は『Alvibion Tome of Knowledge』。短い説明文には、重みのある言葉が記されていた――あらゆる世界の知識を集めた書物。
アイテム情報
*Alvibion Tome of Knowledge
-ランク:レジェンダリー-ユニーク
-説明:さまざまな世界の中級以上の知識を集めた書物。学習可能な百科全書だが、収録された内容を習得するには、それに見合う理解力が必要となる。収録内容は「魔法概論-初級」「血の魔術-知識と歴史」「並行世界&電磁空間」「製作&修理-鍛造技術と設計図」「進化技術-竜の技術」「黒魔術-魔女と魔術師」「薬草&魔術、植物と自然」「永遠の砂漠-情報と知識」「雲上世界と蒼天-失われた第三皇子」「黄昏の森-闇の世界の裏側」「深淵の森-沼地の魔術」「機械技術-現代、電力と歯車」「星空-星々と月」「家畜育成-素材生産技術」「軍用装備-武器製造」「従者と執事の作法」「武術-戦場の叙事詩」「季節と植物」「料理、美食と人生」「核反応」など。
-注記:魂に永久に結びつくアイテム。ドロップせず、通常の収納箱にも保管できない。また、他者への伝授や取引は一切できない。
もう一方の手紙を開くと、その中の文章に神崎 蓮は再び言葉を失った。
「陳洛お兄ちゃんへ。こんな道を選ぶことになって、ごめんなさい。お兄ちゃんが私をひどく責めるだろうって分かっているけれど、本当にごめんなさい。それでも、私はこうするしかなかった。この旅に出たら、もう戻れないかもしれない。でも、もしこの災厄を生き延びられたなら、どうか私のことは忘れて、新しい人生を幸せに生きてください。あなたが一番愛した人、莫詩児より。」
遺書なのか? 神崎 蓮には何が起きているのかまったく理解できなかった。ところが、手紙を読み終えた途端、胸が締めつけられ、涙が紙の上へとこぼれ落ちた。自分でも思い出せない何か大切なものを失ったかのような、耐えがたい悲しみが押し寄せてくる。転生者である彼は、莫詩児という人物をまったく知らない。それでも、一つだけ確信できることがあった。この世界に来て、自分の身体が十七歳の少年へと若返っていると気づいた時から、薄々察していたのだ。この身体の外見も名前も、彼自身とまったく同じだった。どうやら転生した際、彼の魂はこの世界の本来の持ち主と完全に融合し、二人の存在は一つになったらしい。
しばらく黙って考え、気持ちを落ち着かせたあと、神崎 蓮は手紙をインベントリの奥深くへ丁寧にしまった。すぐに、機械的なシステム音声が再び響いた。
「ピコン! 連続クエスト『記憶の回復』を解放しました。説明:転生してきた宿主の意識は、元の身体の持ち主と完全に融合し、魂と精神も一つになりました。今、元の持ち主に残された唯一の執念は、失われた記憶の断片を取り戻すことです。この連続クエストは、その最後の願いを果たすために発生しました」
神崎 蓮は少し驚いたものの、すぐに平静を取り戻した。システムがそう説明するのなら、この身体を受け継いだ以上、その使命も引き継ぐ責任があるということだ。隠された過去という不確定要素に心は少し乱れたが、最終的に彼は受け入れることにした。そもそも他人の身体を使わせてもらっているのだから、元の持ち主の願いを叶えるのも善行の一つだろう。
「ピコン! デイリークエストを受注しました:任意の木を10本伐採する。達成すると報酬を獲得できます。進捗:0/10」
ようやくデイリークエストが出現した。昨日一日、繰り返し受けられるクエストがシステムから一つも提示されず、彼はずっとこの機能を待ち望んでいた。外を見ると、午後になったばかりだった。十七歳の身体にはまだ十分な体力が残っている。神崎 蓮は「軍用斧」を手に、廃工業区を抜けて市郊外へ向かうことにした。
建物の間を縫うように進み、ようやく市門付近へたどり着いた。頑丈だった都市の門は、今や崩れた瓦礫の山と化していた。周囲にはエネルギー攻撃による切断痕や深い爆撃跡が残っている。ここではかつて、凄惨な籠城戦が繰り広げられたに違いない。そうでなければ、旧時代の頑丈な合金構造がここまで破壊されるはずがなかった。
外の世界へ足を踏み出すと、見慣れないようでどこか懐かしい荒野が広がっていた。果てしなく続く森の間を、変異生物の姿があちこちにうごめいている。高度なテクノロジーを基盤とする世界ではあるものの、『無限職業者』の地形は本質的に途方もなく広大だ。現実世界の人類全員をここへ連れてきて、一人あたり十平方メートルずつ土地を割り当てたとしても、大陸の片隅すら埋め尽くせないだろう。別次元の空間まで考慮すれば、なおさらだ。
二時間以上斧を振るい続け、神崎 蓮はようやく大木十本分の木材を集め終えた。朝に割り振った筋力とスタミナのおかげで、この重労働も以前とは比べものにならないほど楽だった。前世のようにキーボードとマウスを神業じみた速さで操作することはまだできないが、今の身体能力は普通の成人の限界をはるかに超えている。
「ピコン! クエスト達成。スキル『鑑定』を解放し、経験値を30獲得しました」
またしても予想外の大きな収穫だった。正式なプレイヤーだけが使えるはずの中核スキルを、直接習得できるとは思ってもいなかった。NPCという立場を押しつけられていても、付随する全能システムは彼をこの上なく優遇しているらしい。
新しいスキルがステータス欄に登録される頃には、空は薄暗くなり始めていた。神崎 蓮は道具を片づけ、急いで拠点へ戻った。
ところが、いつもの道を通って帰る途中、神崎 蓮は突然足を止めた。以前、自分で仕掛けておいた石の警報標識が目に入ったのだ。それは作動したうえ、破壊されていた。直感が告げていた――また命懸けの戦いが始まろうとしている。
彼は一瞬もためらわず、「呼吸抑制」を発動して気配と体温を完全に消し、崩れた壁に身を寄せながら、ゆっくりと自分の家へ近づいた。拠点の外周に差しかかった途端、熟練のレベル上げ代行屋として培った戦闘感覚が警告を発した。暗闇の中を、何かが恐ろしい速さで移動している。周囲には風を切る「ヒュッ、ヒュッ」という不気味な音だけが響いていた。これほどの速度では、十分に高い敏捷性がなければ相手の動きを捉えることすら難しい。
神崎 蓮は、厄介な相手にぶつかったと悟った。余計な言葉はなく、静かに「軍用ダガー」を抜き、目を閉じて聴覚を研ぎ澄ませ、周囲の風の揺らぎから相手の動きを読み取ろうとした。決着をつける一撃に備える。
「これほど移動速度が異常なら、相手は暗殺者かアサシン系統で、レベルは10以上のはず……。戦闘システムの典型的な移動軌道から考えると……ここだ! 死ね!」
頭の中でフレーム単位まで正確に計算し終えると、神崎 蓮は迷いなく腕を振り、目の前の何もない空間へダガーを投げつけた。
ブスッ!
金属が肉に深く突き刺さる音がした直後、重い身体が冷たい地面へ倒れ込んだ。神崎 蓮は安堵の息をつき、危険を排除できたと確信した。幸い、敵は敏捷性に特化している一方で、防御力や装甲はそれほど高くなかったようだ。そうでなければ、先ほどの遠投で即座に仕留めることはできなかっただろう。
「ピコン! 弱点への致命的な投擲一撃で、レベル8の『暗殺者』を格上撃破しました。実績『武器マスター』の効果により、短剣系統の特殊スキル『投擲マスター』を解放しました」
*スキル情報『投擲マスター』:宿主がナイフ型の武器を投げ、対象の弱点または急所に命中させると、必ずクリティカルが発生し、追加ダメージが200%増加する。熟練度によってスキルレベルを上げられる。現在、対象の装備はすべてドロップしており、所有者の死亡によってアイテムの所有者認証も解除されたため、宿主は自由に回収できます。
「ピコン! レベル8の『暗殺者』を討伐しました。EXPを1000獲得。レベル6に上がりました!(現在のEXP:100/1800)。レベルアップ報酬:自由ステータスポイント20。固定追加能力:攻撃速度+1、敏捷性+1、魔法貫通+2、HP+3、自動HP回復+2、スタミナ+1」
短剣系統の専門スキルを解放できたのは、神崎 蓮にとって予想どおりだった。熟練のレベル上げ代行屋だった彼は、基本武器系統のスキルを解放する方法や隠し条件を熟知している。前世では、極めて希少な隠し職業専用の神兵だけは試す機会がなく、その解放法則を知らなかったにすぎない。
遠くに倒れている暗殺者の死体へ近づき、神崎 蓮はしゃがみ込んで所持品を調べた。相手の持ち物はかなり乏しく、価値のあるものはほとんどない。奇妙に湾曲した短剣と、複雑な魔法陣が刻まれた黄ばんだ羊皮紙の巻物があるだけだった。
その短剣を「鑑定」した神崎 蓮は、ありふれた装備ではないことに気づき、驚いた。名前は「毒牙狼の短刀」だった。
アイテム情報
*毒牙狼の短刀
-ランク:超レア
-能力値:AD+20、攻撃速度+10%、敏捷性+15
-説明:極寒地帯の雪狼王が持つ唯一無二の毒牙から鍛えられた鋭い短刀。刃には秘伝の手法で抽出された猛毒が塗られている。攻撃を正確に当てるたび、対象に「凍霜」と「毒侵食」の二つの状態異常を同時に与え、HPを継続的に削りながら移動速度を大幅に低下させる。
-効果の詳細:
凍霜:攻撃するたび、対象の敏捷性と攻撃速度を4%低下させる。最大20回まで累積可能。
毒侵食:対象を重度の中毒状態にする。毎秒、魔法ダメージ8~10(+ADの15%)を与える。各スタックの持続時間は3秒で、毒ダメージが累積するたびに威力がさらに5%増加する。効果の最大持続時間は30秒。
「毒牙狼の短刀」の強力な能力値をじっくり眺めて、神崎 蓮はようやく、前世でアサシン系プレイヤーたちがゲーム序盤から中盤にかけてこの装備を血眼になって探していた理由を理解した。追加能力値に加え、相手のHPをじわじわ削る厄介な効果まで備えているのだから、暗殺者なら誰もが欲しがるはずだ。特に単独行動する者にとって、攻撃速度と敏捷性の上昇は、絶体絶命の場面で命を救う切り札になり得る。
もう一方の手にあった羊皮紙の巻物を調べると、それは「魔獣封印符」だと分かった。巻物の中心では、獣の形をしたぼんやりとしたエネルギーが、魔法陣の封印から逃れようともがいている。しかし、今の自分にはまだ従わせる力がないと判断し、神崎 蓮は巻物をインベントリにしまった。ついでに、死体から暗殺者の革鎧一式を剥ぎ取り、売却することにした。
システムショップの売却画面を開き、剥ぎ取った暗殺者の装備と、モンスターから集めた腐った素材を取引欄へ入れた。確認操作を終えて仮想ウィンドウを閉じると、システムの精算音声がすぐに流れた。
「ピコン! 『暗殺者の装備一式』と『腐った肉』93個を売却しました。魔石350個を獲得。システムからの案内:宿主が一定のレベルに達するたび、システムショップは自動的にレベルアップし、より高級なアイテムの販売枠が解放されます。引き続き努力してください!」




