第七章:「金庫」と「料理」
日が暮れ始めると、屋外の気温は肌を刺すほど下がってきた。神崎 蓮は外にとどまらず、仮の住まいへ引き返し、慎重に「石壁」を使って出入口を塞いだ。手で軽く叩いて防御の頑丈さを確かめてから、ようやく気を緩め、システムショップの画面を呼び出した。
先ほど手に入れた魔石350個を持っている感覚は、実に気分がよかった。店にはきらびやかな装備や高価なスキルがいくつも並んでいたが、神崎 蓮はそちらには目もくれず、生活用品のカテゴリへまっすぐ進み、まずは最低限の必需品を買うことにした。装備のことは後回しでいい。今は生活の質を上げ、精神を常に明晰に保つことが何より重要だった。
「ピコン! 『調理器具セット』×2、『ジャガイモ』×10、『1.5リットルの水ボトル』×1、『キッチン調味料セット』×1を購入しました。魔石150個を消費。残高:魔石200個」
すぐに収納空間から道具を取り出し、部屋の隅へ向かった。灰を少し払いのけ、乾いた薪を数本くべて火をつける。間もなく橙赤色の炎がぱちぱちと音を立て、心地よい暖かさを放ち始めた。神崎 蓮は火のそばに膝を曲げて座り、冷え切った手を温めながら、水で丸々としたジャガイモの土を洗い落とした。
前世ではダンジョン攻略に明け暮れるプロのレベル上げ代行屋だったが、神崎 蓮には一つ譲れない信条があった。自分で調理した食べ物こそ、最も安全だということだ。自炊を続けてきたおかげで、料理の腕は十分に実用的で、むしろかなりのものだった。だが今日は、少し変わった料理を試してみたい。彼は『Alvibion Tome of Knowledge』を開き、「料理、美食と人生」の項目からジャガイモを使ったレシピを探した。
いくつものレシピに目を通し、手元にある食材と照らし合わせてしばらく考えたあと、彼は笑みを浮かべて決めた。「キノコとチーズソースのジャガイモ焼き」――草の国の住民に人気の軽食だ。
選んだ理由は単純で、彼にとって馴染み深い料理だったからだ。ありふれたジャガイモを使った素朴なレシピだが、草の国の人々の手にかかれば、やみつきになるほどおいしい一品になる。実際にどんな味なのか、自分で確かめてみたかった。
調理に取りかかると、神崎 蓮はどこからともなく布製のエプロンを取り出し、背中で手際よく結んだ。その姿は妙に手慣れていた。新鮮なジャガイモを炎の下の赤熱した炭へ直接埋め、余熱で中までじっくり火を通す。その間に野生のキノコをきれいに下処理し、干し肉を数切れと一緒に串へ刺して焼き台にかけた。
脂がじゅうじゅうと音を立て、焼いた肉とキノコの食欲をそそる香りが、閉ざされた部屋いっぱいに広がった。神崎 蓮は串に粗塩を少し振り、木の棒で灰の中から焼き上がったジャガイモを取り出した。表面の皮は少し焦げ、煙が立っていたが、灰を払うと中身はほくほくに柔らかくなっており、穀物特有の香ばしい匂いが鼻をくすぐった。
ジャガイモが熱いうちに「キッチン調味料セット」を開け、チーズの塊、オリーブオイル、乾燥ハーブを少し取り出し、小鍋に入れて弱火にかけた。ほどなくして、濃厚でなめらかなチーズソースができ、表面に小さな泡が浮かび始めた。
神崎 蓮はジャガイモについた灰を丁寧に吹き払い、木の器へ並べた。ナイフで中央に深い切れ目を入れ、焼き上がったキノコと肉の串を中に詰めてから、串をそっと抜き取る。最後に、とろりと熱いチーズソースを切れ目の上からゆっくりとかけた。草の国らしい一品の完成だ。食材が限られているため本場の味を完全に再現することはできなかったが、終末世界でここまでの味を作れたのなら十分に満足だった。
たっぷり味わって食べたあと、神崎 蓮は壁にもたれ、満足げにげっぷをした。Alvibionの知識の豊かさには、感服するほかなかった。草の国では軽食にすぎない料理が、これほど鮮烈な味わいを持っているとは。道端の料理として扱われているのに、毎日膨大な量が消費されるのも納得できる。材料が不足した再現版ですらこのおいしさなら、本場の味はどれほど素晴らしいのだろう。
ゆっくりと片づけをして調理器具を洗い終えると、神崎 蓮は上機嫌で二階へ上がった。だが、見慣れた部屋へ足を踏み入れた瞬間、目を細めた。部屋の真ん中に、奇妙な模様が刻まれた金属製の箱が置かれていたのだ。朝には確かに存在しなかったものだった。
以前受け取った謎のプレゼントを思い出し、神崎 蓮は警戒することなく近づいて箱の蓋を持ち上げた。
*シャッ!
まばゆい銀色の光が突然閃き、神崎 蓮は慌てて手で目を覆った。直後、目の前にダンジョン型のインベントリ画面が開いた。中には、竜の一種「衛竜」について記した古い革表紙の本、さまざまな作物の種が入った袋が大量に、そして初級の治療用医療品がいくつか収められていた。
「ピコン! 初めて『金庫』を開くことに成功しました。名前のとおり、これは『無限職業者』の世界における重要な探索システムの一つです。宿主やほかのプレイヤーは、荒野や保護の失われた地域に入ると、『金庫』を探して開き、ランダム報酬を獲得できます。報酬にはあらゆるランクのアイテムが含まれ、希少度が高いほど抽選プールに出現する確率は低くなります。プレイヤーの『幸運』の数値は、入手アイテムの品質に直接影響します。注意:金庫が完全に破壊されていなければ、ほかのプレイヤーも同じ金庫を開き、それぞれ個別の報酬を受け取ることができます」
予想どおりだった。神崎 蓮は驚くどころか、興味深そうに目を輝かせた。これは無料のガチャに似ているが、『無限職業者』ではギャンブル以上に生死を左右する、過酷な仕組みなのだ。
誰でも開けるとはいえ、それは金庫が無傷で残っている場合に限る。神崎 蓮なら、金庫を丸ごとインベントリに回収し、好きなときに開けてから外殻を破壊することもできる。そうすれば、あとから来た者は資源を永遠に手に入れられなくなる。これも初期のプレイヤーたちが夢を打ち砕かれ、脱落していった残酷な仕組みの一つだった。大ギルドやランキング上位の猛者が資源地帯の金庫をすべて占拠して守り続けたら、周囲の弱小プレイヤーにいったいどれほどの機会が残るというのか。
手に入れた品を見直すと、生物について記された古書以外は、今の彼にとってさほど価値がなかった。神崎 蓮が『Alvibion』を取り出して調べようとした瞬間、その古書は光の粒となり、Alvibionに自ら吸収されてしまった。するとすぐに、書物の「進化技術-竜の技術」という項目に赤い感嘆符が現れた。
どうやらAlvibion自体も、成長するためにデータを蓄積する必要があるらしい。神崎 蓮の創作操作に関わる高度な知識を大量に収めているとはいえ、外部由来の知識や特殊な種族の秘密については、強化するために実物の素材を取り込む必要があるようだ。
空になった金庫を閉じ、何気なくインベントリにしまうと、神崎 蓮はベッドへ飛び乗り、両手を頭の後ろに組んで考え込んだ。今日の経験から分かったことは一つ――残された時間は多くない。急いで資源と力を蓄えなければならない。正式なプレイヤーたちが大挙して降臨したとき、背景も力もない弱いNPCのままでいたら、前世で十一年間積み重ねた経験も何の役にも立たなくなる。
翌朝、太陽が地平線から顔を出すよりも早く、一つの黒い影が風を切って建物の間を駆け抜けていた。どの建物にも、長くて十分ほどしか滞在しない。
それは神崎 蓮だった。彼はこの地域に残っている金庫を、ここを離れる前にすべて回収しようとしていた。身軽な動きと熟練者の経験を生かし、崩れた建物を何百棟も駆け巡り、休むことなく金庫を集め続けた。インベントリの未開封の金庫は、みるみる増えていった。
ひとしきり徹底的に探し回ったあと、神崎 蓮は高圧電線の柱の頂上に立って周囲を見渡した。半径数百メートル以内には、もう金庫が一つも残っていない。未練を残すものがないのなら、そろそろ出発するときだ。




