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第二章:このシステム、少しおかしい

「クローズドβまで351日? 『無限職業者』? 本当に現実なのか!? でも、この周りの状況は……」

神崎 蓮は小声でつぶやいた。冷たく硬い瓦礫に触れた指先がかすかに震える。どうにか体を起こすと、虚空から落下したときの鈍い頭痛は徐々に和らぎ、代わりに圧倒的な驚きがこみ上げてきた。

周囲を見渡すと、目に飛び込んできたのは、恐ろしいほど生々しい荒廃した風景だった。鉄筋コンクリートの高層ビルは半ば崩れ、危うい角度に傾いている。錆びた鉄筋には奇妙な蔓が絡みついていた。建物は戦火でひどく破壊されていたが、瓦礫の隙間には壊れたマイクロ電子回路や高性能スマート機器の破片がかすかに見える。どうやら、この世界が崩壊する前の科学技術は、彼の知る時代をはるかに超えていたらしい。

彼が目を覚ましたのは、廃工業団地の比較的開けた空き地だった。幸い、その場所は崩れた壁や山のように積み上がった魔物の死骸に囲まれ、外からの視線を遮る天然の防壁になっていた。恐ろしい光景ではあるが、マップの死角を見つけることに長けたベテランのレベル上げ代行者にとって、ここは理想的な初期の隠れ場所だった。

-「ピコン! 宿主が初めてこの世界にログインしたことを検知しました。初心者スターターパックを配布します。内容:軍用ダガー×1、初心者用鉄のツルハシ×1、初心者用鉄のシャベル×1、軍用ハンドアックス×1、革鎧一式×1、たいまつ×15、パン×15、自由ステータスポイント×20」

感情のない機械音が耳元に響き、神崎 蓮を思考から引き戻した。彼はその場で固まった。『無限職業者』で11年間も稼ぎ、数え切れないほどのアカウントを代行育成してきたが、こんなに気前のいい「初心者パック」の話など聞いたことがない。元のゲームはプレイヤーを徹底的にこき使うことで有名だった。初心者が持っているのは、下着一枚と腐りかけた木の剣だけ。それが当たり前だったのだ。

「スターターパックだと? 転生者に付いてくるシステムは、どうやら特別扱いしてくれるらしいな」

神崎 蓮はぼそりと言った。意識を向けると、見慣れた半透明のグリッド式インベントリが目の前に現れた。画面下部のクイックスロットには、受け取ったサバイバル道具がすでに自動装備されている。3Dキャラクター表示の上では、濃い茶色で厚手の、少し粗い革鎧が痩せ気味の体を包んでいた。革の温もりと保存油のかすかな匂いが、これは仮想のゲームではなく、生身の肉体なのだと思い知らせた。

「システム、ステータス画面を開け!」

-「プレイヤーの指示を検知。ステータス画面を開きます。ご確認ください」

-------- ステータス画面 --------

名前:神崎 蓮

年齢:17

職業:無職流浪者(無職散人)

基本指標:

Attack Damage(物理ダメージ):15(+5[軍用ダガー装備])

Magic Damage(魔法ダメージ):0

HP(体力):20(+10[革鎧一式装備])

Mana(マナ):150

Crit Rate(クリティカル率):0%

Armor(物理防御):0(+6[革鎧一式装備])

Magic Armor(魔法耐性):0(+3[革鎧一式装備])

Auto Regen HP(HP自動回復):0.5/秒

Auto Regen Mana(マナ自動回復):5/秒

基本能力:

Strength(筋力):15

Stamina(体力):25

自由ステータスポイント:20

ステータスを眺めた神崎 蓮は、軽く舌を鳴らした。無職系統としてはまずまずの初期マナと、支給された20ポイントを除けば、残りの能力は哀れなほど低い。ゲーム序盤はいつだって悪夢だ。低レベルの魔物でさえ、油断すれば簡単に彼をあの世へ送るだろう。しかし、乏しい数値を管理し、最大限に活用することは、神崎 蓮にとって骨の髄まで染み込んだ本能だった。彼は緊急時に備え、自由ポイントをすぐには使わず、ひとまず温存することにした。

「だが……クローズドβまで351日? これは、ゲーム史上初の小規模テストが始まる前の時点なのか?」

そう考えた瞬間、神崎 蓮の心臓が一拍飛んだ。

古参プレイヤーの間には、2100年の正式サービス開始前に、極秘のクローズドβテストが二度行われたという都市伝説があった。当時、運営が配布したテストアカウントはわずか100個。ごく一部の専門家や、裏に強い影響力を持つ組織に渡され、短期間のテスト後にデータは消去されたという。もしこの時点が本当なら、これからほぼ一年間、他のプレイヤーと競うことなく、この世界の資源もメインストーリーも隠し秘境も独占できる!

「351日……これは試練なんかじゃない。掘り尽くせない金鉱だ!」代行育成のプロらしい興奮が神崎 蓮の目に宿った。「だが、金を掘るには、まず生き延びないとな。最初にやるべきことは、この戦場を片づけることだ」

彼はインベントリから「軍用ダガー」を取り出した。冷たい金属の感触とずっしりした重みが掌に伝わり、心臓が少し速く打ち始める。彼は周囲に散らばる魔物の死骸へと歩み寄った。

それは「凶暴星猪」と呼ばれる低級魔物だった。野猪に似た体つきで、全身に黒く鋭い骨棘が生えている。頭部は強力なエネルギー弾で吹き飛ばされ、傷口からは粘つく黒い液体が悪臭を放ちながら流れ出していた。神崎 蓮は吐き気をこらえてしゃがみ込み、採集クエストを周回していた頃の経験を頼りに、関節や筋肉の繊維に沿って正確にナイフを入れていった。

-「ピコン! スキル『骨取り・肉さばき』を獲得。食用可能な魔物または動物の死骸を解体した際、獲得できる肉の量が1%増加します」

-「ピコン! スキル『解体』を獲得。死亡した対象から得られる追加素材の報酬が3%増加します」

凶暴星猪の死骸を15体以上、苦労して解体したところで、システムの通知音が続けて鳴り、実用的な生活スキルを二つ手に入れた。神崎 蓮は、血の付いた猪肉と粗末な骨棘がバックパックに入っているのを見て、笑うべきか泣くべきか分からなくなった。

他の転生者なら神剣や神獣を与えられ、何でも思いどおりにできるのだろう。ところが彼のシステムは、粗末なサバイバル道具を渡し、自分で屠殺をさせたうえに低級の生活スキルを二つくれるだけだ。まさしく「少しおかしい」。それでも彼は、この過酷な荒野では食料と素材こそが命だと理解していた。

-「ピコン! クエストを発行しました。Commonクエスト:『最初の夜を生き延びろ』。宿主の幸運を祈ります!」

クエスト説明:死亡せずに最初の夜を乗り切ること。報酬は達成後に精算される。

神崎 蓮は無力感をにじませてため息をついた。タイミングは悪くないが、危険も大きいクエストだ。

『無限職業者』では、昼間の魔物は比較的おとなしい。多くは皮膚に軽いダメージを与える日光を嫌い、廃ビルの奥や洞窟に潜んでいる。だが夜になると、地中に隠された「魔物コア」が闇に反応して活性化する。

魔物コアは、世界に漂う暗黒エネルギーを吸い上げるポンプのようなものだ。人の気配が近くにあると、夜の間に魔物を猛烈な勢いで生み出す。この世界の夜は本物の地獄であり、NPCや高レベルの職業者でさえ、暗くなってから無警戒に外を歩こうとはしない。

だが、神崎 蓮は初心者ではない。魔物の隠された仕組みを熟知していた。暗闇での聴覚と視覚は鋭いものの、獲物を見つける主な手段は「気配」と「呼吸」を感知することなのだ。NPCたちは風の通らない密室に隠れ、息を止めたり、体臭を隠す薬草を使ったりして魔物をやり過ごす。

しかし神崎 蓮は、それよりずっと効率のよい方法を知っていた。この工業地区のマップに仕込まれた「地形バグ」――バグ探しを得意とする彼のような代行屋だけが知る抜け道だ。

彼は、遠くの廃墟の山並みに沈みかけた太陽を見上げた。夕日は空を悲しげな赤に染めている。神崎 蓮は素早く道具を片づけ、ダガーの柄を握り直すと、工業地区の陰に隠れた古い鉱山坑道の入口へ向かって駆け出した。獣の最初のうなり声が薄暗い闇の中に響いたころ、彼の姿はすでに地下深くへ消えていた。


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