第十六章:仲間(2)
神崎 蓮は袖をまくり、さっそく料理に取りかかった。今回は食材を惜しむつもりなどなかった。ショッピングモールでの激戦で得た魔石に、地下倉庫から回収した大量の日用品も加わり、アイテム欄はかつてないほど充実していた。この資源があれば、豪華な食事を用意することだってできる。しかし、子供たちの衰弱した様子を見て、消化しやすく胃に優しい料理を選ぶことにした。
彼らが選んだスイートルームは、最も豪華なプレジデンシャルスイートではなかったものの、室内の小さなキッチンは比較的良好な状態を保っていた。神崎 蓮は燃料の切れたビルトインガスコンロを取り外し、代わりにシステムのアイテム欄から携帯用の薪コンロを取り出した。終末世界では魔法式の電力もガスも、いずれ尽きるぜいたくな資源だ。乾いた薪のような原始的な燃料を自分で用意して使うほうが、最も安全な生存手段だった。
神崎 蓮が火を起こすと、揺れる炎が彫りの深い顔を照らした。長年一人暮らしをしてきた者らしい手際で、ゆっくり米を研ぎ、手早く赤身肉を細かなそぼろに刻んでいく。
二つ目のコンロにも火がついた。神崎 蓮は二つの鍋を同時に操り、その手つきは熱心な料理長にも劣らないほどだった。炊きたての米の香りと、ひき肉の濃厚なうまみが混じり合い、リビングに座っていた五人の亜人の子供たちの鼻をくすぐった。
「わあ……すっごくいい匂い!」アーロンが大きく息を吸い、頭の虎耳をぴくぴく動かした。
「本当だ、いい匂い……神崎 蓮さんはいったい何を作っているんだろう?」セレスも思わず唾を飲み込んだ。
キッチンでは、ひき肉に火が通って香ばしい匂いが立ち始めると、神崎 蓮はそれをぐつぐつ煮立つ米粥の鍋へすべて移した。作ろうとしていたのは、ひき肉入りのとろとろ粥だった。胃に優しく、長期間の衰弱を経験した者の体力回復にも向いている料理だ。
弱火で30分以上煮込むと、粥は理想的なとろみになった。神崎 蓮の筋力なら百キロ以上の物を軽々と持ち上げられるが、それでも鍋を運ぶときは細心の注意を払った。粥はぐつぐつと煮え、非常に熱いうえに濃厚だ。少しでもこぼせば、せっかくの努力が水の泡になる。今夜、子供たちを空腹のままにしておくことだけは、絶対に避けたかった。
鍋がテーブルに置かれると、立ち上る湯気と濃厚な香りに、子供たちはうっとりした。最初のひとさじを口へ運んだ瞬間、五人全員の目に驚きが浮かんだ。この粥は、彼らが終末世界の食事について想像していたものをはるかに超えていた。
子供たちが夢中で食べている間に、神崎 蓮はキッチンへ戻った。銀狼の王女との約束も忘れてはいない。アイテム欄からみずみずしい羊肉を三塊取り出し、熱々の鋳鉄フライパンへ高級バターを三切れ落とした。
ジュウジュウジュウ……
バターで焼く肉の香りが、たちまち外まで広がった。子供たちは食べたくてたまらなかったが、とてもおとなしく分別があり、追加をねだろうとはせず、黙って自分の粥を食べきった。
最高の羊肉三塊を焼き上げると、神崎 蓮は熱々の皿を持ち、一階のロビーへ降りていった。
「ふん! どれだけ待たせたと思っているの?」階段を下りてくる彼の姿を見るなり、ひなは気位の高い声で言った。「子供たちの世話に夢中になって、この王女のことなんて忘れたのかと思ったわ。ここで飢え死にさせるつもりかしら?」
「言いがかりはよせ」神崎 蓮は平然と近づき、湯気の立つ羊肉の皿を彼女の前に置いた。「約束のご褒美だ。一度約束したことは破らない。さあ、食べろ」
バターソースをまとった三塊の肉を見て、ひなの銀色の目がぱっと輝いた。彼女は威厳を保つために軽く鼻を鳴らしたものの、すぐに肉へ顔を寄せて食べ始めた。さらに三匹の銀白妖狼にも食料と清潔な水を分けてから、神崎 蓮は四階へ戻った。
部屋に入った神崎 蓮は、テーブルに粥が大量に残っているのを見て少し驚いた。子供たちの気まずそうな表情を見れば、すぐに理由が分かった。満腹になったのではない。彼の分を残そうとして、わざと食べる量を減らしたのだ。助け出して食事まで作ってくれた相手の前で、素直な子供たちは全部食べ尽くすことができなかったのだろう。
神崎 蓮は首を振り、困ったように笑った。
「みんな、残さず食べていいぞ。それは体力を戻してもらうために作ったんだ。余らせるな。俺は自分の分を作れるから」
そう言われると、子供たちの顔から申し訳なさが消え、代わりに感動と喜びがぱっと広がった。彼らは嬉しそうに残りの粥をすべて食べた。神崎 蓮は微笑み、キッチンへ戻って自分の食事を用意した。いつもの簡単な料理――カリカリに焼いたパンと、香り豊かなマッシュポテトだ。簡素ではあっても、栄養は十分だった。
食器を片づけたあと、神崎 蓮はシステム画面を開き、資源の残量を確認した。食料の備蓄はまだ豊富にある。たとえ尽きたとしても、モンスターを狩り、システム報酬と交換し、廃墟の金庫を開ければいい。さらにアイテム欄には魔法の種も大量に保管されていた。いずれは、殺し合いだけに頼らず自給自足できる農業を営むための基盤になるはずだ。
手拭きを外すと、神崎 蓮は輪になって座っている五人の亜人の子供たちを振り返り、何気ない口調ながら重みのある誘いをかけた。
「なあ、狩りに行ってみたいか? 明日の朝、出発する予定だ。行きたいなら一緒に来てもいい。そのついでに、本当の戦い方を教えてやる」
「狩り」という言葉を聞いた途端、子供たちの目が輝いた。全員が声をそろえて行きたいと叫んだ。亜人の血に流れる戦闘本能と、若さゆえの有り余る体力が、彼らを身体を動かすことへ駆り立てていた。それ以上に、神崎 蓮に自分たちの生存価値を証明する絶好の機会だと理解していたのだ。最も内気なアリスでさえ、置いていかれたくはなかった。
全員の決意を見て、神崎 蓮は満足げにうなずいた。床に腰を下ろし、皆に集まって相談するよう合図した。熟練のレベル上げ代行者として、狩猟やダンジョン攻略の前に戦術を立て、役割を分担するのは生死を分ける鉄則だった。『無限職業者』の仕組みで動く世界では、正確なチームワークこそが生と死の境目を決める鍵となる。
「じゃあ、僕から!」アーロンは肩をすくめ、元気よく話し始めた。「僕は完全な獣人形態に変身して、近接戦闘ができます。防御力もパンチ力も、けっこう自信があります!」
虎族の少年はすっかり警戒を解き、無邪気に自分の能力を明かした。
「私は剣士です」セレスは一歩前へ出て、白金色の瞳に決意を宿した。「剣が一本あれば戦えます。仲間を守るための軽い盾もあれば、もっと助かります」
年齢以上に落ち着いた少女の姿を見て、神崎 蓮は感心したようにうなずいた。
「私は魔法使いです」妹のマナが続けた。「でも、王室近衛の一族で厳しい訓練を受けたので、剣術にも慣れています。近接戦闘をしながら詠唱できるように、丈夫なレイピアが欲しいです」
神崎 蓮は驚かなかった。アステロン家は、卓越した剣術と豊富な魔力を併せ持ち、王族を守る魔法剣士を育てることで有名だった。
クリスの番になると、神崎 蓮は狼族の少年が二本の指で目の前を横切るように合図するのを見て、呆然とした。それは、極めて特徴的なサインだった。
暗殺者の合図!
神崎 蓮は嬉しさのあまり、危うく吹き出しそうになった。これは『無限職業者』において、暗殺系の特殊継承職が仲間を勧誘する際に使う秘密の合図だった。ランダムなNPCが、あの神聖な動作を現実の肉体で正確に再現しているのを目の当たりにし、ゲーマーとしての血が再び騒ぎ始めた。
最後に、全員の視線が一番小さな少女へ集まった。アリスは両膝を抱きしめ、小さな顔を真っ赤にしていた。勇気を振り絞り、か細いながらもはっきりとした声で言った。
「実は……わ、私は……ヒーラーなんです……」
ピタッ!
「ヒーラー」という言葉が出た瞬間、神崎 蓮の思考が一秒ほど停止した。
ヒーラー!
なんということだ。これはゲーム全体でも極めて希少な隠し職業の一つだった。前世、何百万人ものプレイヤーがいた全サーバーを見渡しても、この職業系統を解放できた者は片手で数えられるほどしかいなかった。
はっきり区別しなければならない。前世で名を馳せた女プレイヤー『小妖妖』のような教会の修道士も、回復や浄化のスキルを持っていた。しかし、それらは魔法系クラスの補助魔法にすぎない。本物の『ヒーラー』は、独立した専門性の高い隠し職業なのだ。覚醒した時点で、圧倒的な回復、シールド付与、状態異常解除、さらにはチーム全体の連続戦闘中の生命維持までこなすスキル一式を備えている。
優秀なヒーラーが一人いれば、レベル差のある敵を狩り続けるチーム全体を支え、仲間のHPが赤い危険域に落ちることすら防げる。前世の大ギルドでは、ヒーラーに覚醒した者はレベル1であっても王侯のように大切にされ、最大限の保護を受けていた。
神崎 蓮自身も、前世で隠しアカウントのレベル上げを請け負っていた際、幸運にもヒーラー系統を解放したことがある。そのときはアカウントの価値が一気に十倍へ跳ね上がり、持ち主は金を惜しみなく彼に叩きつけた。彼は大金を手にし、祝うために一週間もレベル上げの仕事を休んだほどだった!
「そういうことか……ははっ、そういうことだったのか!」神崎 蓮は突然、太ももをバンと叩き、頭をかきむしりながら狂ったように笑い出した。子供たちはぽかんとして彼を見つめた。
理想のパーティーだ! 獣人タンクのアーロン、盾役もこなせる剣士のセレス、妨害役の魔法剣士マナ、瞬間火力を叩き出す暗殺者クリス、そして国宝級のヒーラーであるアリス! さらに万能型のダメージディーラー兼ステルスDPSである自分が加わる。終末世界のあらゆるダンジョンを攻略するための、黄金比ともいえるレイドパーティーが完成していた!
神崎 蓮の頭の中では、次々と計算が弾き出されていった。過酷な訓練計画と、格上の敵に挑む大胆な狩猟作戦が、たちまち形を成していく。
つい先ほどまで落ち着いて粥を作っていた年上の青年が、今は間抜けのように笑い転げている。五人の亜人の子供たちは顔を見合わせ、主人の気まぐれな性格が理解できず、困り果てた。しかし、神崎 蓮のどこか「変態じみた」笑顔の奥に、不思議な安心感と信頼を覚えてもいた。
ただ一人、狼族の少年クリスだけは鋭い本能で、うっすらと察していた。神崎 蓮の笑顔は、すべての始まりを告げる号砲なのだ。新たな章が始まろうとしている。そして明日から、この男によって五人の力への道は形作られ、永遠に変えられていくのだ!




