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第十二章:対決(3)

神崎 蓮は疲れ切った様子でシステムショップを開き、迷わず低級の水属性魔法スクロール『水域陣法』を選んだ。新しい魔法を習得すると、彼はすぐに手のひらを地面へ軽く押し当てた。すると二人の頭上に淡い青色の魔法陣が浮かび上がり、ひんやりとした雨を降らせた。心地よい水が、死闘の後に残った疲労とべたつく不快感をいくらか洗い流してくれた。

突然降ってきた水に「銀狼」は少し驚き、本能的に後ろへ跳びのこうとした。しかし、熱くなった肌を爽やかな冷たさが癒やしていくのを感じると、逃げるのをやめ、前脚を折りたたんで目を閉じ、心地よい人工の雨を楽しみ始めた。

『水域陣法』で二人が汚れと疲れを洗い流したあと、それぞれの方法で手早く身体を乾かした。この状況で風邪をひきたい者などいない。特に神崎 蓮は、アイテム欄を確認して風邪薬を一錠も持っていないことに気づいていた。今ここで病気になれば大惨事だ。

神崎 蓮がぼんやりと髪を拭いていると、ついさっき雨を楽しんでいた「銀狼」が、いかにも不満そうに顎を上げて言った。

「ふん! まったく、ひどい主人ね! さっきは私の毛並みが暖かいって褒めたくせに、今度は頭から冷水を浴びせるなんて。私を凍えた狼にするつもり!?」

「……」

神崎 蓮は黙って銀狼の目を見つめた。まるで変人でも見るような目つきで、この狼の頭は本当に正常なのかと疑っていた。その見下したような視線に気づいた銀狼は、頭から湯気が出そうなほど怒った。歯を食いしばって彼に噛みつこうとしたものの、数秒後には悔しそうに怒りを飲み込んだ。目の前の男が自分の契約上の主人なのだから、仕方がない。

「なあ、お前には名前があるのか?」神崎 蓮はふざけた様子を引っ込め、真剣な口調で尋ねた。

「ないわよ! 何でそんなことを聞くの? 私に名前を付けるつもり?」銀狼は誇らしげに頭を高く上げ、鼻を鳴らした。「変な名前を付けたら承知しないからね。本当に噛みつくわよ、このクソ主人!」

自分の考えをあっさり見抜かれたことに神崎 蓮は驚いたが、気にするほどのことでもなかった。銀狼が反対しないのなら、きちんとした名前を考えてやるべきだろう。いつまでも「銀狼」や「この狼」と呼ぶのでは、主従関係にしてもよそよそしく、失礼に聞こえる。

二人は考えながら歩き、ほどなく街の西門に近づいた。神崎 蓮はありきたりなペットの名前をすぐに候補から外した。しばらく考え込んでいると、前世で耳にした名前がふと頭に浮かんだ……。

「そうだな……ひな、という名前はどうだ?」神崎 蓮は銀狼を振り返った。「花の名前なんだ。意味は……たしか、自分がずっと願い求めているものを表していたはずだ。それに、君に似合う青い色のイメージもある」

「ひな……うーん、ひな……」狼の娘はその名を何度か口の中で繰り返し、目を輝かせた。「いいわ! 今日から私の名前はひなよ!」

ひなが新しい名前を受け入れた瞬間、空から神々しい金色の光が降り注ぎ、狼の身体全体を包み込んだ。光が徐々に消えていくと、ひなの身体は以前の約1.5倍に大きくなっただけでなく、その気配もいっそう威厳に満ち、鋭さを増していた。

「システム通知:宿主がペットの命名に成功しました!」

「宿主はペットの3つ目のスキル『命名』を獲得しました」

「スキル説明:自らテイムし、双方の合意に基づいて契約したペットに名前を付けると、Manaを消費してペットのレベル、品質、潜在能力をそれぞれ上昇させる。ペットが強いほど消費Manaは多くなり、上昇する能力も大きくなる。さらに、命名によって主従間の好感度が大幅に上昇し、『心霊リンク』機能が起動する。これにより、千里離れていても互いの位置を把握でき、特別な場合には隠された潜在能力が目覚めることもある」

神崎 蓮は呆然と立ち尽くした。前世では一度も聞いたことのない、とんでもないスキルがまた現れたのだ! かつて遊んでいたゲーム『無限職業者』では、ペットに名前を付けるには情報欄に文字を入力するだけでよかった。名前を変えたければショップで改名カードを買えば済む。それなのに、命名そのものがシステムの固有スキルになり、これほど凄まじい能力強化まで起こるなんて、いったいどういうことなのか。

驚きを消化する間もなく、激しいめまいが突然襲ってきた。神崎 蓮は慌ててステータス画面を開き、自分のManaが急激に減り、ひなに一度名前を付けただけで約4分の3も失われたことに気づいた。どうりで身体が急に疲れ切ったわけだ。

彼はすぐにシステムショップへアクセスし、魔石を使って『冷えたコカ・コーラ』を一本購入した。冷たい炭酸飲料が喉を勢いよく通り抜けると、神崎 蓮はすっかり目が覚め、満足げに長く息を吐いた。やはり、どんな世界でも冷えたコカ・コーラこそ真理だ!

立ち止まって周囲を見渡すと、神崎 蓮は街の区画の境界付近まで来ていることに気づいた。先ほど東門付近では、資源の入った金庫をほぼすべて回収し尽くしていた。何も変わっていなければ、この西門付近でも大量の『金庫』を手に入れられるはずだ。

しかし、旅を続ける前に能力値を振り分ける必要があった。現在、彼には自由ステータスポイントが160も余っている。途方もない数だ。こんな過酷な世界でポイントを温存して能力値を上げなければ、真っ先に死ぬのは自分に決まっている。

「システム、HPに15ポイント、筋力に20ポイント、スタミナに37ポイントを振り分けろ」

「配分中……能力値の更新に成功しました!」

神崎 蓮がこのようにポイントを配分したのには、明確な計算があった。蓄積したポイントのほぼ半分を使うことになるが、彼のHPは現在のレベルに対して低すぎ、奇襲を受ければ簡単に倒されかねない。さらに、スタミナと筋力を上げ、金庫から手に入れた弓を試してみたかった。前世で歴史を読んだことのある彼は、古代の名将たちが放つ矢が百発百中だったという、その弓の威力を自分で味わってみたかったのだ。

神崎 蓮は北門の方角を見上げた。そこにそびえる高層建築群は、東門や西門にあるどの建物よりも巨大だった。長い間放置され、足元から頂上まで青々と苔に覆われているにもかかわらず、古代の建築強化魔法のおかげで、どれも崩れることなくそびえ立っていた。

北の景色に見入っていると、ひなの声が心霊リンクを通じて頭の中に響き、思考を遮った。

「ねえ、クソ主人! こっちに敵が近づいてきているわよ。いつまでぼーっと突っ立っているつもり?」

狼娘の切迫した口調から、事態が深刻だと悟った神崎 蓮は、急いでひなのもとへ駆け寄った。そして目の前の光景を見て、足を止めた。錆びついた鉄鎧を身にまとった異形のモンスターが、路地のあちこちから数百匹も押し寄せてきていた。

神崎 蓮は迷わず目配せした。ひなはすぐに意図を理解し、左側の群れを引き受け、彼は右側を掃討することにした。指示を受けたひなは、自信に満ちた鋭い視線で応えた。

神崎 蓮は矢のように飛び出した。モンスターの群れをすり抜ける際に能力値を素早く確認し、敵の攻撃力が自分とほとんど変わらないことに驚いた。彼は即座に『軍用ダガー』を抜き、前世で得た知識と身軽な動きを最大限に活かし、敵の弱点を狙った。鋭い刃が空を切り、最初のモンスターの首筋を鮮やかに斬り裂いた。

キンッ!

クリティカルヒットでダメージは5倍になったが、相手のHPを65%削っただけだった。首の鎧が硬すぎる! 神崎 蓮が二撃目を加える前に、別のモンスターの爪が胸を引き裂いた。

ズブッ!

HPバーが急降下し、残り30ポイントを下回った。神崎 蓮の額を冷や汗が伝う。あと一撃でも食らえば、跡形もなく消し飛ぶ。

一方、ひなは敵を圧倒していた。風を切る速度に加え、レベルアップで強化された鋭い爪と牙を駆使し、敵の陣形を次々と切り裂いていく。十分に食事を取り、品質も向上した今のひなは、昨日、神崎 蓮に殴り倒された弱々しい狼とはまるで違っていた。モンスターの群れが取り囲んで食いちぎろうとすると、ひなは狂暴な咆哮を放った。衝撃波のような音波が群れをまとめて吹き飛ばした。

ひなの戦いぶりを見た瞬間、神崎 蓮の目つきが変わった。生死を分ける危機が、身体中の神経を刺激した。胸の奥から殺気が激しく湧き上がり、彼はもはや最初の冷静さを保たず、獣のように敵へ突進した。

「もっと来い! ハハハ! かかってこい! こんなものじゃ全然足りない……足りないんだ!」

神崎 蓮は狂乱状態に陥った。刀の閃光が連続して走り、血しぶきとともにモンスターの首が次々と地面へ転がった。不思議なことに、底をつきかけていた彼のHPが、恐ろしい速度で回復し始めた。

HPが回復するたび、神崎 蓮の姿は空中から完全に消え、別のモンスターの背後へ突然現れた。相手が反応する間もなく刃を振るい、とどめを刺す。その死の循環は、彼の担当する側のモンスターが首のない死体だけになるまで繰り返された。

「システム通知:宿主は特殊スキル『捕食』『消失』『狂乱』の3つを覚醒させました!」

スキル説明:

「1.『捕食』:発動すると大量のHPを即座に回復し、敵の死体から生命力を吸収する。『狂乱』状態では、敵を倒すたびに自動発動し、敵の血液をすべて吸い尽くして自分のHPを回復する」

「2.『消失』:自分の姿を曖昧にし、移動速度を80%上昇させ、5秒間、物体をすり抜けられる。再発動すると隠密状態を解除し、攻撃速度を50%上昇させる。敵から吸収した生命力を消費する必要がある。『狂乱』と組み合わせると、完全な透明化へ変化する」

「3.『狂乱』:『狂暴』状態に入り、与えるダメージと攻撃速度(ASPD)が2倍になり、移動速度(Agility)が50%上昇する。さらに『捕食』と『消失』の効果が強化される。その代わり、受けるダメージも100%増加する。持続時間:1時間。『消失』を発動するたびに『狂乱』の持続時間が2分延長される。クールダウン:4時間」

戦いが終わった。神崎 蓮はモンスターの死体の山の上に立ち、血の海の中で、ゆっくりとダガーを持ち上げて刃についた鮮血を舐めた。その瞳は狂気を帯びた鮮烈な赤に染まっていた。

自分の担当区域にいた最後のモンスターを片づけたひなは、振り返ってその光景を目にすると、思わず一歩後ずさった。人間の主人に対して、これまで感じたことのない冷たい恐怖が胸に湧き上がった……。



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