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あらぎ島戦隊ソーリュージャー  作者: 黄昏 番長


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3/12

遅れてきたのは、ただの人

「お待たせやで」


翌日の3時過ぎ、柳生先生はピンクカブにまたがって、おやっさんの店にやって来た。

ダーンダーンとエンジン音立て両足を地面に着く。

両手で脱ぐ塗装したてのピンクのヘルメットは、柳生先生には全く似合っていない。

おやっさんが駆け寄って来た。


「ヘルメットの色以外なにが変わったんや?」


前カゴのケーブルに気がつき、つまみあげた。

遅れてあかりも、おやっさんの理容室から出てきた


「おー来とったか!早速これに乗ってエンジンかけて」


柳生先生の言葉にカブのハンドルを持ち、おそるおそるまたぐあかり。

「このヘルメット被って」

ピンクのヘルメットを渡され、慣れない手つきでかぶるあかり。

〜ウエルカムトゥケロリンク〜


「あれ?ケロ助の声が聞こえる」


「ブルートゥースでケロ助と繋げてある、あかりちゃんの声もケロ助に届くで」


「ケロ助!練習のとおりにリンクモード」


前かごに飛び込むケロ助、マグネットで腰の端子にケーブルのコネクターが刺さる。

勝手にエンジンが吹き上がった。

いやこのアクセルワークはケロ助のコントロールなのだ。


「あかりちゃん、力を入れずハンドル持って」


柳生先生の言葉に驚き慌ててハンドルを持つ


「ケロリンクスタート 自立運転」

挿絵(By みてみん)

ケロ助が言うとカブが前進しだす。

柳生先生はヘッドオーバーのインカムを装着した。

本体部分から伸びたマイクをつまんで、落ち着いた声で言う


「バランスとってるだけでええから」


左手で掲げ始めたタブレットには、リアルタイムにカブの情報が映されている。


「変速はケロ助がやってくれる、あかりちゃんは目的地までバランスとって!緊急時にブレーキかけるだけや」


だが、あかりはそれどころではなかった。大きな目を見開いて焦っている、パニクっている。


「ボクに任せて、かるーくハンドルもってて・・・」


ケロ助の声がピンクのヘルメットから聞こえた。


「わかった」


その声に安心したかのか、一気に余計な力が抜ける。安定し始めたその姿を見て、二人は胸を撫で下ろした。


「ところで穂波ちゃんは?」


「今そこいら走っとる、霞が一緒やし道には迷わんやろ?!しかし、穂波ちゃんは大したもんや!ロータリー変速は初めて乗ったみたいやったがな、じきに掴んだわ」


やがて、ケロ助とあかりが戻ってきた。


「すごくカブって楽しいです」


「そりゃよかった、ケロ助とのコンビネーションも良さそうや」


エンジン音がもう一つ聞こえ、穂波の乗ったイエローカブが見えた。

そして、あかりの乗ったピンクカブに平行に止まる。


「わあ!カゴの中にケロ助用のシートがある」


「ヘルメットも似合ってるよ!あかりちゃん」


「ありがとうございます。嬉しい」


間を割るように柳生先生が聞く


「穂波ちゃん ところで霞は?」


「いきなり止まったと思ったら、性能試すって一人で山のケモノ道に」


おでこに手を当ておやっさんが


「あ〜相変わらずマイペースやのぉ」


の言葉の後、折りたたみの椅子にガックリと座り込んだ。


「カブの塗装したてやのに・・・上塗りのクリアー完全に乾いてないぞ」


そんなおやっさんを横目に、柳生先生は、自分のリュックから、もう一台のタブレットを取り出す。

11インチぐらいだろうか、見やすそうだ。


「穂波ちゃん、これ持っといて!情報共有の端末や。クラウド管理やし、ケロリンクも管理できる。

奏くんにも、ミドにも同じ端末渡してある」


さすがに先を読んでいるのか、穂波は柳生先生の行動に感心してしまった。


「ところで、4台ですか・・・?!」


顔の前に、右手で4本の指を立てる。

柳生先生も笑いながら、同じ様に指を4本立てて


「4台だけや、穂波ちゃんと、奏くん、ミドと僕がタブレット持って、あかりちゃんにはケロ助やろ・・・

あとの二人に、こういうデリケートなモン使えると思うか?」


「確かに・・・」


さっきの別れ際の霞を思い出した穂波は立てた指をたたみ、グッと拳を握って目を瞑った。


その頃あらぎ島では、耕平が水田で水の量を確認していた


「しっかり育てよ」


苗に声をかけながら仕事をする。その目前にはこの前の大木が倒れている。

さっき一人で移動しようとしたのだが、持てない上に転がすこともできない。


「あの時の力って、普段は出ぇへんのやな」


自分の手のひらを見つめた。


「後でチェーンソーで刻んで運ぶか・・・」


「耕平、ジュース持ってたで♪」


防獣ネットの向こうにミドと奏の姿があった。


「今そっちいくわ」


耕平は軍手を脱ぎ、二人の方に歩き出す。


「すまん、すまん、ところで奏くん、この辺の事は色々わかった?」


奏は嬉しそうに


「温泉やら、あれこれ教えてもうたよ」


「あの温泉、去年綺麗になったとこやねん」


他愛もない会話をする三人だった。

その時三人の頭に直接に獣のような声が聞こえた。内容はわからないが、細かな方向はわかる。田んぼの中心部だ


「中心から聞こえたか?」


「うん、なんの声や」


同時に、おやっさんの店の前では

ヘルメットを脱いだばかりのあかりも言う


「聞こえたね」


「方向はあっちよね」


指差す穂波と、二人で頷きあってる


「よっしゃ!行ってこい」


すぐにエンジンをかけ

ピンクとイエローのカブは走りだす。



「柳生!まだ初戦みたいなもんや、お前も早よ行ったれ」


「言われんでもそのつもりですよっ」


白い箱バンに乗り込みエンジンをかける。慌ててスタートする。


「一応初心者の安全も、後ろから見たらんとな」


そしてカブ二台は、あらぎ島の入口である防獣ネットの場所までたどり着いた。だが、いつの間にか後続の白いバンは消えていた。

あかりが


「耕平さん、またあれなん?」


またもや漆黒の空間ができている

だが幸いまだ小さい。


「大きなるまでに勝負付けよ、また動物に憑依されたら面倒や」


耕平がネットの中に入ろうとすると


「あかん、今行ったら空間にのみ込まれる」


あかりが肘を引っ張って止める。


「どう言うこっちゃ、危険になったら前の力が出るんちゃうん?!」


横に首を振りながら、あかりが言う


「六人揃わないと力が出ないの、せめて200m圏内に居ないと」


「ほんでか、あの倒れた木を持てへんなと思てたんや、で!誰が足らんねん?」


「霞や!こん中におらへん」


ミドが慌てる


「なんかアレ、足止めできへんかな?」


奏が言うが、何も太刀打ちできない。そこへ柳生先生のバンが来た。


「お前ら何しとるんや?って、・・・五人しかおらへんやんか」


「力は六人おらんと出ぇへんのです、霞さんは?」


「待っとられへん、ミド!奏くん!これでいくで」


ミドにクワを渡す、奏でには大きなスコップを、そして耕平はエンジンの草刈機だ。


「おいおい、農民一揆とちゃうんやぞ」


柳生先生に言われても、耕平は頭に血が上って全く聞いてない。ミドと奏は冷静にやめたのだが、耕平はエンジン回すと同時に走って行ってしまった。

柳生先生は、スマホに向かい


「へい!コマンド!先輩(おやっさん)にビデオ通話!」


すぐにおやっさんが映る


「あっ先輩、霞そっち帰ってません?」


おやっさんのスマホにはあらぎ島の現状が映って居る。


「いや、まだ帰って来・・・・きよった」


ビデオ通話の向こうで


「くたびれたコーヒー飲ませて・・・」


「どこ行っとったんや、今あらぎ島が大変やねんぞ」


スマホを印籠のようにかざす。流石の霞も見て慌てた


「はよ行け」


追い出されるように、カブにまたぐ霞。エンジン掛け走りながらニヤリとをいう


「俺がおらんと、みんなあかんのやなあ〜!くくくっ」


国道を飛ばし気味に走り、坂を下る。ブレーキかけて後輪を横滑りさせながら、入り口の防獣ネットに到着


「ヒーローは遅れてくるもんや」


霞はカブから飛び降り、胸を張って得意げに言った。

挿絵(By みてみん)


「ただの遅れて来た人や!」


珍しくミドが怒った口調で、霞を睨んだ。


「もう力が使えるはずです」


「『光の核』稼働率100%!竜力も充分使えます」


ケロ助が機械的に報告した。


「待て!みんな!これを・・・!」


柳生先生のバンの荷台には、6色のアタッシュケースが並んでいた。

一番手前の赤のケースを開けるとベルトが出て来た。バックル部分には、大きな赤い宝石が装着されている。大半は金属のシルバーだが、ベルトの左右にファンが一個づつ付いていた。


「それぞれの色を間違うなよ、身長も特性も関係しとるし」


「みんな!耕平が一人で“農民一揆”しとる間に、全員でダッシュで耕平の元に走って、ミドがベルト渡すんや」


奏が聞く


「これ一体何なんですか?、先日のファイルには力になるとか」


柳生先生が皆の前に立って答える


「よっしゃ、みんな聞いてくれ、これにはパワードスーツが内臓されとる。ベルトのファンのスイッチ入れて『ティラノアップ』と叫ぶんや!登録させた声紋通りの声やったら、音声認識が作動して、パワードスーツがみんなの体を覆うんや!」


メカニズムとしては、それぞれ六人が宿す『光の核』より発せられる竜力を、スーツ内に充満させ外圧からの防御。また余計な放出ロスは避け、効率的に竜力を力として活用できる。だが、気温の高い炎天下などでは、3分以内にティラノオフしないと生命の危険もあるのだ。


「この前より何倍もの力と、防御力が上がるはず!弱点は、ジャンプ力が皆無な事、さらには鈍足や」


注意点がやたらと多いな、大丈夫なのか?と五人の心が無駄に一つになった。


「じゃみんな頼むで!耕平の近くまで走ってから『ティラノアップ』やで」


柳生先生の言葉を聞くと、みんな一斉にスタートした。耕平は畦道で、黒い影に草刈機を振り回している。なんか妙にシュールな絵面だ


「耕平、これー」


ミドが叫びながら走り寄った。振り返り耕平は嬉しそうに笑う


「みんな、揃ったんや!」


草刈機を停止スイッチで止めると畦道に置いた、同時にミドが駆け寄り


「これ耕平のベルトな、腰に巻いて!」

「何なんこれ?」


不思議がる耕平をよそに、ミドはベルトを装着させながら言う。


「やっぱりファイルの内容、理解してないやん、パワードスーツらしいんや

このスイッチ先に押して『ティラノアップ』って叫んで起動させるらしいよ」


「簡単やん、よっしゃ!みんないくで!」


自然に一列に並んだ六人、スイッチを入れ12個のファンの音が唸る。全員一斉に叫んだ。

挿絵(By みてみん)


「ティラノアップ!」


六人の周りにそれぞれのパーソナカラーのビニールのような質感の生地が覆う。みるみるうちに全身を覆い、装着完了したようだ。

視界が悪いな、横に誰がいるのだろう?それぞれの姿も確認できないほど見えない

“初めてって、不具合だけを見つけてしまうんよな”

などと奏は脳内で思考するのだが、みなぎる力はまさに全開中だ。

ベルト上部のBluetoothが青に点灯し柳生先生の声が聞こえた。

あのタブレット端末から・・・なのか


「いいかみんな視界が悪いと思う、これだけはどうしても改善せんでな、だが君らの能力の中には敵の位置を見定める心の眼がある」


「心の眼・・・みんなも、ちゃんと開けます」


あかりが言う、続けてケロ助の声で復唱される。声はそれぞれのベルトの通信機に届いていく


「肉眼に頼らないで集中して」


あかりに続き、ケロ助が同じ内容を復唱する。


「目ェに頼らんと全集中や」


「やってみるで!うおお!」


耕平がうなりだした。そして耕平の脳内にはイメージが浮かぶ・・・。仲間の位置はそれぞれのカラーで球体に見える。確かに自分以外の5色がある。『闇の核』を中心に黒い渦もある。どうやら全員の脳内には同じようなイメージが浮かんだようだ。奏が言った。


「これが核 今の我々だけで『半封印』のリペアみたいな事できないですか?」


柳生先生は即答する


「そのスーツなら『闇の核』にギリギリまで近づくことができる。六人で『闇の核』を囲うだけで『光の核』の力と相殺して、一時的にやが『半封印』の修正ができるはず」


意気揚々の耕平が


「よっしゃそれでいくで、みんな」


すかさず、柳生先生が水を差す様に


「耕平!お前にまだ言うてないんやが、そのスーツはパワーに全振りしとる分、ものすごい鈍足やねん!そやからゆっくり力で押すイメージや」


「わーったよセンセ、力押しやな」


「みんな行くで、脳内イメージに頼って渦の中心を囲むんや」


ミドが言う

ピンクの球、イエローの球、ブルーの球、グリーンの球、ホワイトの球、レッドの球、

ゆっくり漆黒の空間の中の突風にも揺るがず、目的の場所まで進む


「このスーツすごいな、皮膚痛くないし前回と全然ちゃう」


霞が嬉しそうに言う


「ほんとだよね、こんなに安全でスムーズに進めなかったわ」


穂波が柳生先生を見直し始めた

〜あの先生と先代の技術はホンマ確かなのね・・・〜

やがて六人は『闇の核』を囲む位置に到達した

すると、みるみるうちに渦巻きはなくなり最後の黒点も消失した。

見えるのは、6色の球が円陣を組んでいるような形だけ。


「よっしゃ〜みんな完了や、スーツの解除のコマンドは『ティラノオフ』や」


「ティラノオフ!」


六人が叫ぶと、各色のスーツはベルト部分の上下の隙間へと収納されていく。

ファンだけがまだ回っている。ベルトの下部にあるスイッチで切った。


「ふぅー!みんなで何とか出来たな」


六人の背後に、柳生先生がやってきた


「みんなホンマようやった、めっちゃカッコよかったで♪」


穂波はニコニコと

「ありがとうございます、このスーツすごい防御力ですよね」


その言葉に柳生先生は有頂天になった。


「そやろ!そやろ!よーできたんよ!めっちゃアップグレード重ねたからな!親父ら作ったんはドラム缶着て、バケツのヘルメット被ったようなモンやったし」


「ぷっ!それはやだな〜」


ミドを始め、全員が大声で笑った

耕平が手を挙げ


「センセ、視界悪すぎて何も見えんし、呼吸用のファンも音がおっきいし、どんな感じで封印したんか全然わからんのですわ」


「僕もそこが知りたいですよ」


奏も同調した。


「俺も俺も」


霞も手をあげた。


「スーツの外観も見たいですしね」


穂波の好奇心の言葉とは裏腹に、あかりだけは蚊帳の外

ケロ助をあやすように抱き上げるだけで、全く興味なさそうだ。


「実はその勇姿は、このタブレットで動画撮影してあるんよっ」


「ホンマですか、見たい見たい」


珍しくクールな奏もノッてきた。穂波もテンションが高い


「よっしゃーでは再生を、ポチッとな」


五人の視線がタブレットに集中する。覗き込む液晶画面に映るのは、6色のティラノサウルスだった。暗い竜巻のような空間を、二足歩行でのっそり歩く・・・まるでイベント用のコスプレだ


「まさか、これって俺たち・・・」


耕平と霞は顔を見合わせた。ミドは目をつむり、両手で髪をかきむしっている。奏は目が点になり立ち尽くすだけだ。

「一瞬でも尊敬して損した!女性に相手されないのホンマよくわかったわ」


穂波はまたふてくされる。そんな中、真面目ボイスでキリリと言った。


「まだ『封印』には至ってないからな!」


柳生先生の言葉に、五人は魂が抜けたのか、両膝から地面に崩れおちた。そんな姿を見てフワリと笑うあかりと、その手の中でニヤリ顔のケロ助だった。


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