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あらぎ島戦隊ソーリュージャー  作者: 黄昏 番長


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12/13

闇の核

最終話 三部作と計画していましたが 四部作になってしまいました(汗)

柳生の風邪の熱が下がった頃、耕平と霞は、あらぎ島でコンバインの手入れをしていた昼下がり。いつものように吹き出す黒い闇。異変にいち早く気づき、二人は愛車からベルト取り出す。穂波とあかり、奏も駆けつけた。若干遅れてミドも合流、六人全員が揃う。


ほとんど同時にスイッチを入れ、12個のファンが同時に唸る。


「ティラノアップ」


ベルトの側面に隙間が開き、ティラスーツであるDマテリアルが噴出する。わずかな時間で六人は装着できるのだった。更に今日は、手足のプログラムがアップデート済み。Dマテリアルの素材も、下半身だけだが変更されている。Bluetoothの青いランプが点灯し、通信が可能になる。インカムから聞こえるのは紫音の声。


「いいすか?耕平先輩。“耕す情熱”と“ミストハリケーン”同時発動でいきます。ミド先輩と奏さんは陽動に。あかりさんと穂波さんは、万一のために耕平先輩とカス先輩のバックで待機。ミド先輩、奏さんのスタートと同時に作戦開始です。3、2、1、GO!」


戦闘が開始された。ミドと奏が前に出る。やはり黒い影が吹き出し始めた。だがいつもと違うのは、全く勢いがないのだ。黒い影はある場所を避けようとしていた。それは、いくつか置かれた小さな銀色のバケツたち。蚊やブヨ対策の火をつけた“虫除けのローソク”だった。嫌がるような素振りの黒い影・・・六人はタイミングを見計り、“半封印“の作業を手早く終えた


遠くから拍手がパチパチ聞こえ、柳生が現れた。 


「さすが若いだけあって、動きも手際もいいな」


歩きながら柳生は、両腕で構えるポーズを取った。インカムを弄りながら紫音が


「ありがとうございます!」


ついさっき柳生自身が発案したのは、紫音に指揮を任せて、バックアップに徹することだった。先日と違い、少し気持ちに余裕がある様子。しかし柳生の頭の中では何故“ロウソクを避けた”?そればかりが思考されていた。顎に手を当て、ジッと考え込む柳生。そこへ、六人揃ってやってきた。霞は開口一番に


「紫音ちゃん、酷いやん!“カス先輩”って」


「“ム“も言いましたよ、聞こえへんだんですか?」


「ほんま、いっつも遠足ムードやな」


柳生は暖かい目でみんなを見た。もうすぐ決戦の日だと親父(ソーリュー)が言ったが、それは今日ではなかった。一刻も早く、完全封印の方法を見出さなければ・・・。


その夜、柳生はパソコンに向かい“ストレス”について調べ始めた。検索結果を見てポツリと言った。


「世界中の温暖化も、地球のストレスのあらわれなんやな・・・」


既に始まっている事を、改めて感じた。すっと襖が開き、ノートパソコンを小脇に抱えた奏が立っていた。


「先生、僕も手伝いますよ」


「すまんな、そしたらリビングに出るわ」


こんな煮詰まりそうな時は、一人より二人だ・・・。


“ピンポン”


「こんばんは、遅くにすいませんミドです」


インターホンのカメラに映るのは、パソコンバッグを持ち、反対の手には差し入れのレジ袋を持ったミドだった。奏はミドを迎え入れ、リビングにやってきた。


「奏くんから協力要請いただきまして・・・」


柳生は笑顔で


「助かる・・・」


三人はそれぞれのパソコンを開け、早速検索を始めた。


「ストレス緩和・・・っと!・・・人間の事しか出てこないですよ」


ミドの言葉に頷く二人。


「そうやねん!もしヒットしても、この”闇の核“の一件で使用できるかどうか・・・って、ストレスの話はまだしてないぞ!」


柳生と、奏は目を丸くした。


「耕平も霞も知ってますよ、僕ら三人とも小学生の時に、ソーリューのビジョン見ましたから。先日まで三人とも忘れてましたけど・・・」


柳生は首を縦に振りながら


「そうやったんか?そしたらおじいさんのことも?」


ミドは真面目な顔で


「ええ・・・先代の一人やったって・・・ソーリューに、」


柳生は少し鼻声で


「とてもいい笑顔の、優しいおじさんやった・・・」


「先生、なったもんはしゃない!切り替えていこう!ですよ」


ミドの言葉に、柳生は苦笑しながら


「それは俺のセリフやがな」


ミドの声のトーンが急に変わった。


「鎮魂・・・地球の魂を鎮めるんですよね・・・!?」


続けて、奏が小声で


「そうか鎮魂といえば・・・祭り・・・」


故郷の吉野も、お寺の行事など盛んな地域である。それに結びつけてみたのだ。ミドは椅子から勢いよく立ち上がって


「そういうたら、あらぎ島に“ろうそく祭り”ってありましたよね?」


柳生は二人に言った。


「そや!ロウソクや!今日“虫除けロウソク”を避けてた事に気ィついたか?」


奏はハッとしたような表情で


「そういえば、僕ら二人が最初に向かった時、避けてたように見えましたね・・・」


やはりそうか、柳生は確信を得た。ロウソクの成分か?発生する二酸化炭素か?どっちにしろ苦手だったならば、“ロウソク祭り“はチャンスだ。その祭りとは、あらぎ島の畦や道に等間隔で1700本の竹灯籠が建てられ、その中でロウソクを灯すという祭りだ。あらぎ島中が、幻想的な光景になるのだ。


慌ててカレンダーを見る柳生。まさかこう繋がるとは思わず、全く日付をメモしていない。


“そうや!おやっさんとこの奥さん!こんな行事が好きそうや”


メッセージで問い合わせた。しかしおやっさんからは返信の電話が入る。


「なんや、急にロウソク祭りとか?」


「先輩、いつ開催するんですか?今回は封印に大いに関係あるんですっ!」


「今週末や!明日から竹筒立てるって、副会長いうとったぞ」


スマホのスピーカーから、おやっさんの声が響いた。


「よっしゃ!」


三人はハイタッチをした。


「これはイケるかもやな」


三人は深夜まで話し合い、作戦を練った。


翌朝、奏は展望台の地下基地に来た。昨日の会議で決まった準備を始める。まず奏のベルトの攻撃プログラムのアップデートを行う。耕平や、霞のように大技が使えるようにするのだ。早朝に紫音が作業台に置いたUSBメモリーでインストールする。一時間毎に経過報告を聞いてくる紫音に、返事を送る。柳生とミドは出勤しているが、客先の打ち合わせの移動時にやってきたミド。


「奏くん、アップデート終わった?」


不安そうに奏が返事する


「なんとか僕のは終わったよ、二人みたいな力がホンマに出るんかな?」


ミドが遠い目をして


「僕も小学生の時、何も知らんとソーリューのいうとおりにして、手ェから緑の光を出したことあるんよ」


奏は驚いて


「ホンマに?すごいな・・・。そや、ミドくんのベルトも、攻撃系のアップデートせんとあかんな」


腕時計見ながらミドは


「わっ、予定の時間や・・・このベルト頼んでいい?」


アタッシュケースごと預けたミド。両手を奏に合わせると、急いで車を走らせ行ってしまった。


奏はミドを展望台で見送ると、ミドから預かったアタッシュケースを持って、作業台に戻る。台の上に置いたケースからベルトを取り出す。出したベルトに引っかかったのか、するりと手帳が落ちた。床でページが開き、そこには挟まれた一枚の写真。穂波の笑顔が写っている。集合写真を拡大して、プリントしたんだろう。


「ミドくん♪昭和世代の男子みたいや・・・スマホに入れとけばバレなくてええのに♪」


奏は微かな笑みで作業を始めた。


その頃あらぎ島では、耕平と霞が軽トラに山盛りに積まれた竹筒を、一本づつに間配りながら立てていった。汗を拭きながら、耕平が霞に向かい


「なんかこれ、“封印”の為にもなるらしいぞ」


霞は考え込んだ


「え?どない使うんやろな?」


その夜、全員が基地に集まった。穂波とあかりのベルトも、夕方から紫音が作業し終えた。これで四人分の攻撃性能のアップデートは全て完了、六人全員が大技を使えるようになった。


「後はDジェネレーターの再点検かな、なあ紫音くん」


後ろで手を組み、ロボットアニメの博士のようにキメたつもりだった柳生だったが、


「それには欠陥があります。ケロ助、・・・メインモニターオン」


紫音は図面の映ったモニターを指差し説明を始めた


「ネオイオンクラフトの回路と、Dジェネレーターの回路。お互いのキャブレター使った配線が近すぎて、同時に使用すると電磁誘導のような現象を起こします。電流同士なら“シールド”かフェライトコアで軽減できますが、構造的に配線同士を離すこともできません。最悪の場合オーバーロード、つまりは暴走します・・・」


…14年の時を超えてしまった原因はこれだったのか…


柳生は心の中で納得した。紫音はモニターの一点を指で刺し


「ここの部品は、イチから作らないと!毎日掛り切りでも、多分一ヶ月以上は必要かと」


柳生の様子を見ながら、紫音は答えた


「とりあえずネオイオンクラフトは、使用しない方針で行きましょう。位置は今のままで、油圧とサーボモータだけを使用して角度調整、方向転換ですね」


納得せざる得ない柳生だった。設計時に親父も気づいていなかったのか?俺も最近まで図面と対峙したのに、気づけなかった・・・…


考え込む柳生を、不安な顔で見守るあかり、穂波はそれに気づき目を背けるように下を向いた。



ロウソク祭りの当日、昼間から耕平と霞は特に忙しい。会長、副会長の指示のもと、あくせくと本番の準備するのだ。イノシシが現れたといっては呼び出され、駐車場に車の整理に駆り出され、まだ夕方なのに体力持つのか?と不安になるほど動く二人だった。


19:00に展望台付近から、あらぎ島中心の封印場所辺りまで、張られたワイヤーづたいに野猿(やえん)が移動する。そこには火種が積まれており、その火を分け、当番の人達がロウソクをつけて回るという予定だ。


「全部つけ終わったら、六人の勝負や。もう暗いよって、ティラノアップしても展望台からはわからへんはずや」


柳生の指示が聞こえた。全員が動き出す。紫音は基地内のモニターで全員を監視、六人はあらぎ島内で行動し始めた。


「こちら、耕平・霞ペア!指定の場所に到着」


「こちら、あかり・穂波ペア到着」


「ミド・奏ペア到着しました」


「オッケー、こちらもコクピットで待機中」


柳生はDジェネレーターの操縦席、つまりはソーリューロボに搭乗していた。ここにいる理由は、七人の“光の核“のエネルギーを一つに集め、”闇の核“に向け放射”完全封印“するためだ。現在、展望台下の扉が左右に全開され、ソーリューロボはあらぎ島からはっきりと見えている。だがあらぎ島内にいる人達は、元々からソーリュージャーの存在も全て把握している人達。展望台にいる他処から来たお客さんには、角度的に何も見えないという手筈だ。緊張をほぐすためか、柳生はポケットからおもちゃのソーリューロボを出した。御守りのように、メインモニターの横にコトリと置いた。


19:00 野猿が展望台よりスタートした。


「約45秒で到達予定、現在の3箇所から分散し、6箇所へ展開・・・カウントダウン・・・5、4、3、2、1・展開!」


紫音の声に


「おう!」「了解!」「はい!」


「耕平、霞、ミド、奏ペアは展開ですが、あかり・穂波ペアがまだ展開しません」


紫音は慌てた。時間がない。


その頃、穂波は竹筒と竹筒の間に立ちあかりを凝視していた。


「穂波さん、早く・・・みんなの作戦が・・・」


あかりは穂波を説得するが、穂波はあかりを凝視したまま


「なんで、なんで・・・先生が選んだのが私じゃないんだよぉ!ねぇ!教えてよ!ねぇ!あかりちゃん・・・!」

挿絵(By みてみん)


穂波泣きながら、あかりに向かってきた。あかりは


「穂波さん・・・なんとなく私・・・」


穂波は涙声であかりに迫ってくる。


「だったら、私に譲ってよ・・・」


その時、地面から現れた黒い闇。小さな竜巻を描き、等身大の人型のようになった。得意気、かつ低音の男性の声で言った


「だ〜か〜らぁ、人間てのは自分さえ良ければいいのね!あんたたちって男の取り合い?ちゃんちゃらおかしいわ・・・!うふ、他人の事なんてどうでもよくってさぁ〜」


ミドが一番に駆けよってきた。


「“闇の核”!? 言葉、話せないはずじゃ・・・」


「ん〜日本語なんて簡単じゃない、我の知性なら、既に理解済みよぉ〜!」


黒い影はミドに殴りかかる。ミドは紙一重で避け、そしてみんなに


「ティラノアップだ」


「よっしゃ!」


耕平、霞、奏、ミドに駆け寄りながらベルトに向かって叫んだ!


「ティラノアップ!」


「そうそう、そうこなくっちゃ!ねえ!其方の・お・ふ・た・り・さんっもっ!」


黒い影は、あかりと穂波に向かい挑発してきた。


「ねぇ?!何万年たっても人間ってのはエゴの塊なのよね!」


あかりを蹴りにかかる。ギリギリで避ける。だがあかりの体力では、いつまでも続くはずがない。

挿絵(By みてみん)

「ふっ、さすがソーリューの巫女!先に動きを読んでるの?でも、これならどぉ?」


連打?!今から避けられない・・・両手で顔をガードし、目を瞑った。時が止まった・・・気がした・・・。だがいつまでたっても痛みがこない。目を開けると、穂波が影の両手を抑えながら


「あかりちゃんは、私のぉ!友達だぁ!」


黒い影に盛大な頭突きをした。影から離れた穂波は、泣きながら空を向いて


「ごめん・・・あかりちゃん・・・ティラノアップ・・・」


その姿を見届け、あかりも


「穂波さん、私・・・ティラノアップ」


六人揃った。だが今日はいつもとは違う敵に、心を引き締めた


「さあ!楽しいお手合わせ、お願いするわ・・・フッ」


走り出す影!速い!いくらプログラムをアップデートしてもついていけない。急に止まり、振り返る。その影は笑ったように


「あら?忘れてたわ、さっき基地から拝借した“こんなモノ”があるのよ!これに向かって何て言えばよかったのかしら?“ティラノアップ?”」

挿絵(By みてみん)

どこからかベルトを出してきた。紫音はモニターを見て慌てる。ロッカーに駆け寄り扉を開く。さっきあった7本目のベルトがない?!紫音にも必要になるかもしれないと、柳生が用意したのだ。


「先生、ロッカーからベルトが消えてます!」


「なんだと、まだ特性もつけてないし、音声認識も未登録のままだぞ!」


柳生が慌てる中、黒い影はニヤリと六人を見て笑った


「ティラノアップ・・・」


ベルトの電子音と共に、合成音声が流れる。


…音声認識、登録完了しました…


「これで使えるわね!そろそろ行くわよ、自分たちの武器でやられなさい!ティラノアップ!」


黒い影は、瞬時にティラスーツをまとった。スーツは青黒く光って、みるみる漆黒の体色へと染まっていく。


「あ〜ははぁ!さしずめブラックティラってとこね!私の“闇の核”でも充分使えるわぁ」


ブラックティラは六人に疾風のように駆け寄る。スピードが違いすぎる。着る人の素養で大きく性能は左右する。右パンチ、右キック、左回し蹴り。六人同時に攻撃されているのに、一人一人は避けるのが精一杯だ。


「格が違いすぎる・・・」


普段の落ち着いた奏なら、決して言わないような言葉だ。空気に揺れる沢山のろうそくの中、六人の呼吸と鼓動は、早まるばかりだった・・・。挿絵(By みてみん)その夜はあらぎ島に響くのは、鈍い打撃音だけだった・・・。


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