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あらぎ島戦隊ソーリュージャー  作者: 黄昏 番長


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11/12

時を超えた者(クロノノーツ)

前回、紫音の“傾聴者(リスナーズ)”としての力、つまりはソーリューから送られる声やイメージで、科学理論や技術を伝えられてくる。そのオーバーテクノロジーを瞬時に理解し具現化できる力を、目の当たりに見てしまった柳生。大きなショックを受け、魂が抜けたようにフラフラ歩いていた。ソーリューの伝言、それは“決戦の日は近い”だった。


雨の降りしきるあらぎ島の展望台に、脱力した一人の男の影が立っていた。白衣を纏い、ずぶ濡れで立つ柳生だった。まるで魂が抜けたように、基地から外に出てきたのだった。


「なぜ俺にも声が聞こえへんのや!もっともっと技術進められるのに!」


叫びながら、正面の手すりに拳を振り下ろす。何度も殴ったのか、すでに小指のあたりは出血していた。ずぶ濡れになる髪、メガネのレンズは雫でほとんど視界がない。


「俺は、何の為に・・・今までやってきたんや!」

挿絵(By みてみん)


激しい雨音を、柳生の声が切り裂いた。


「俺なんかでは、力不足だと言うのか〜」


また手すりに腕を振り下ろす。おやっさんの奥さんが手すりに取り付けた“季節ごとの飾り“が、音を立てて揺れていた。


「くそぉ!」


柳生の背後に、すっと入ってきた鈍い雨音に混じって


バンッ!


乾いた音が響いた。同時に柳生は頰の痛みを感じ、バランスを地面へと崩した。水たまりに倒れこみ、身体中泥だらけになる。柳生のメガネの視界の外から、落ち着き払った声がする。


「あんたの役目は、まだこれからや」


そこには、傘を刺した着物姿の女性が立っていた。柳家の女将であり、柳生大輔の実母だ。


「か、母さん・・・なんで?」


「あかりちゃんが、泣きながらウチに電話かけてきたんや」


柳生の母は “女将の威厳“というオーラを身にまとい、息子柳生を凝視していた。その後ろには、柳家の文字が入った前掛け姿の実弟が立っていた。


「兄貴・・・俺な・・・兄貴の事ずっと理解できなくてゴメン・・・一人で親父の事を引き継いでくれてたのに・・・」


その言葉を聞くと、更に泣き崩れる柳生。四つん這いになり地面を両手で叩き始めた。


「俺は、俺は本当の無力だ・・・!うあぁ〜!!」


いつの間にか通りがかったおやっさんが、自分の傘の下で遠巻きに見ていた。


「柳生・・・」


柳生は涙も雨も混じって、顔も頭もずぶ濡れになっていた。それでも地面に、自分の拳を振り下ろす事をやめない。


「中学の頃からの俺の努力は、いったい何やったんや!」


叫び続ける柳生の背中が、急に人の体温で暖かくなった。


「もう、ヤメてください・・・お兄ちゃん・・・」


背中から、穂波の小さくかすれた声がした。


「その手・・・、これ以上怪我したら、明日から何もできなくなります・・・」


「うぉ〜・・・」


空に向かい泣き叫ぶ柳生の背中を、より強く抱きしめたあかり。


「お・・・お兄ちゃん・・・」


二人の暖かさが伝わり合う中、かすかな声が頭に聞こえた。


“大輔・・・”


「大輔?俺を呼ぶのは誰や?」


立とうとする柳生を、あかりが両手でぎゅっと制止する。


「お兄ちゃん、この声はソーリューの声」


「俺にはソーリューの声は聞こえへんはずや・・・!?」


“大輔・・・”


「聞こえとる・・・、俺にもソーリューの声が・・・ああ・・・」


柳生は“聞く事が出来た”その感情だけが涙が溢れた。同時になぜ“大輔”と親しげに呼ぶのかと違和感を感じた。


“大輔・・・私の自我と意識が消え去る前に・・・”


“自我と意識”?、柳生は困惑する。それ以上に、どこか懐かしくて優しい声は、大輔の記憶を巡らせる。仕事が休みの日曜にも、真剣に溶接をする姿。小さな大輔の顔を見るなり、笑顔に変わる父の顔・・・。


「親父の声・・・なのか?」


声の主は、静かに告げた


“この世を去って30年、私”柳生一郎”の意識は今はソーリューに同化している。ソーリューはエネルギー体。生物であって、生物ではない”


「親父がソーリューなのか?」


“その答えは、半分は合っている。ソーリューの意識は今は私だが、いずれかは誰かにバトンを渡す事になる”


「親父!率直に聞きたい、通常俺には聞こえない声が、なぜ今は聞こえる?」


“今聞こえるのは、あかりと接触しているから、通常聞こえない理由(わけ)は私にとってお前は「一親等」、お互いの”魂の色“が近すぎるからだ。


「聞こえなかったのは・・・そんな訳があったからなのか?」


会話の中でふと気づく


「待てよ!13年前にも、幼いあかりちゃんを背負ったまま神事に出ていた。だがあの時は、声は全く聞こえなかった、既にあの時は親父の意識を持ってるソーリューだったんだよな?!」


“そうだ、私だった。今になって聞こえるのは多分、あかりのお前への想いが強くなったからだろう・・・”


「・・・そうなのか?」


“あかりはお前を助ける為、志願してここにやってきた。大輔!以前私と行った旅を思い出せ、それでこの戦いをもう終わらせようぞ。その後は「人としての心」を取り戻していくのだ”


声は途絶えた、理由はわからない。だが今聞いた事、起こった事は現実だ。


「親父・・・」


柳生は泣いた、顔をそ向けた母親も涙していた。ソーリュー、いや親父の声が母親にも届いていたのだろうか?


「大輔・・・これからは、あかりちゃんを大事にしな・・・」


やはり母親にも聞こえていたようだった。


「母さんは、なんで親父の声が聞こえるんや?」


「私、あの人と血縁的には、赤の他人や」


「・・・」


絶句する柳生の背中には、まだあかりの温かみがあった。そして、雨の降る夜空を見上げた・・・。


「親父、俺・・・なんとか大丈夫かもや・・・あかりちゃんが居ってくれるからな・・・」


「あの・・・すいません

抱きついちゃって、そのぉ〜柳生先生・・・」


あかりは顔を真っ赤にして、慌てて後ずさり離れた。


「謝るのは、こっちの方や・・・!そのぉ〜昔みたいに、俺の呼び方・・・お兄ちゃんでもええで」


柳生は視線を遠くに向け、頰を人差し指で掻く。


「はぁい〜!」


あかりはまた柳生に抱きついた。


「他に誰かおったら、その呼び方は絶対禁止やで!」


柳生は耳まで真っ赤になっている。いい歳した大の男が、歳の離れた女の子に泣き顔を見られ、自身の幼さを見せつけてしまった。だが、この子だからこそ頼っていきたい。今までの人生の中で、初めて芽生えた感情だった。



そして夜が明け、朝になる。布団の中から聞こえる、クシャミと唸り声。柳生の状態は酷いモノだった。季節はすでに秋、あの雨の中ズブ濡れともなれば、かなり堪えたようだ。しかも、今思い出しても恥ずかしい昨日だ。もし体調良くても、できれば他人とは接触したく無い。現在月曜朝6時、出勤できる体調ではなさそうだった。電子体温計の音がピピッと鳴る。


「・・・38.5度・・・」


7時半〜ぐらいには、誰か出勤してるだろう。襖の敷居の擦れる音がし、奏の顔が現れた。


「先生・・・大丈夫ですか?」


「クシュン・・・すまん」


昨日の柳生の一件は、奏は何も知らない。その時は、あかりのたっての頼みで、


“六人とも、しばらく基地から出ないで欲しい”


と泣きながら懇願されたのだ。言われたとおりメンバーはテーブルを囲み、紫音のポジション、これからの体制について話し合った。


「風邪ですか?昨日僕がここに帰った時、すでに濡れて玄関で座ってましたもんね」


「迷惑かけた、いつもの出勤時間・・・そのちょっと前に起こしてくれ。学校に連絡入れないと、ゴホゴホ」


奏はわかりましたと伝え、部屋を出た。直後キッチンに立った。最近は柳生に鍛えられ、料理が好きになってレパートリーが増えてきていた。


「先生、卵粥なら食べれるかな?」


鍋で作った出汁を温め、ネギを切り粥の準備し始めた。


柳生の意識は・・・今・・・現実と夢の狭間にいた。今、柳生は・・・



俺の枕元にある襖の向こうで、包丁の音が聞こえる。熱のせいだろうか、近くなのに音が遠い。。


やがて幻聴なのか声が聞こえた。聞き慣れた父の声だ


「大輔、今日は海釣りに行こうか?」


「いいの・・・、今日の仕事は?」


「大丈夫だ、緑山のおじさんに任せた」


おおきな背中を俺に見せ、麦わら帽の父親は釣り竿を担いだ


「えーおじさんにも一緒に行こうって言ってよ。僕、おじさんの事大好きや」


ふっと場面が変わった。オレンジ色の空気の中、床で重なり倒れるおじさんたち。パニックの中


「緑山のおじさん、おじさん!」


揺り起すと、昨日会った時とは打って変わり、頬はこけた上に目の光は消えていた。まるで肉体は“か細い器”と化している。ふくよかでよく笑う緑山のおじさんとは思えなかった。


「お父さん、お父さんはどこ?」


「だ、だ、い、すけ・・・」


虫の息の父親は、スイッチとダイヤルが並ぶ席に突っ伏していた。


「お父さぁ〜ん!お父さぁ〜ん!」


なぜか俺の髪が、徐々に白くなっていった。


急に場面は変わった。アナログの計器が並ぶコクピットだった。操縦桿を持つ。唯一の蛍光管デジタル表示の数字には


“Date1995.3.15 Time19:15”


挿絵(By みてみん)


と表示されている。気がつくと俺の身体は既に大人になっていた。父親の葬儀がさっき済んだばかりの礼服だった。十四年間の車椅子生活の、介護が終わった日でもあった。黒いネクタイを緩め、礼服のまま此処に一人で訪れた。基地内のハンガーに保管してある、Dジェネレーター(ソーリューロボ)のコクピットである。ポケットに入れて持ってきたのはロボットのおもちゃ。小さい頃に父親に買ってもらったもの。ずっと大事に持っていた。

そのおもちゃと同じカタチに作られているのは、Dジェネレーターの器、ソーリューロボだった。気密性をはじめ、大半は完成させているが、駆動系の一部だけは未完成だ。ロボットのおもちゃをモニターの前に置き、何気なく操縦桿を握った。メインスイッチを入れるとパイロットランプが点灯する。電源はずっと生かしている。


“いつか完成したら、大輔と一緒に宇宙にでも行くかな・・・”


幼少の頃、父親が言った言葉を思い出す。次にネオイオンクラフトのスイッチを入れた。すると光に包まれ、古いエレベーターが動き出すような浮遊感がした。


目に見えるのは、まばゆい爆発で青い星が生まれた光景。水を発生させ、そこから生まれた生物を育み、何代にも渡って継承、進化させる。そんな映像を見た、いや実際に体験している。風も、硫黄の匂いも、塩水の味も全て感じている。やがて人類が生まれ、お互いのエゴだけで争い始めた。争う道具は棒切れから、鈍器、刃物、銃、爆弾へと変わってゆく。


…食物連鎖以外で、同種同士が争う醜い姿か…


人が争う度に、青い星に翳りが生まれ時間が経ってから消える。その工程は、くり返す間隔がだんだん短くなっていく。まるで、生き物がストレスを感じているように見えた。


またもや場面が変わる。元のコクピットだ。ロボットのおもちゃも、置いたそのままの位置にある。蛍光管デジタル表示の数字には


Date2009.3.15 Time19:15


俺は電源を全て切り、操縦桿から手を離した。おもちゃをポケットに入れ、コクピットを離れた。搭乗用の足場まで50cm以上開いている。乗り込む時は10cmぐらいの間隔だったのに。足場を大股で乗り移り、床まで鉄のハシゴを降りた。コンクリートの土間に辿り着くと同時に、疲労感が半端なく襲いかかる。俺は倒れコンクリートの冷たさを感じ気を失った。


場面がまた変わった。俺の視界には白い天井、そこに母親の顔がフレームインしてきた。気のせいか老けたな?いやこんなもんだったかな?昨日の葬式が終わって、今日はいったい何の日なんや?モウロウとしている俺は考えるのをやめた。操縦桿握った後の記憶が全くと言っていい程出てこない。


…なったもんは、しゃあない…


点滴に腕を繋がれ、とことん眠った。起きて味がしない食事食う。同じ事を数日間繰り返した。やがて自力で立てるようになった。退院の日になり、年上に見える弟の運転する車で、自宅に帰った。しばらくは家で養生することになっているそうだ。


「おかえり・・・」


出迎えてくれた母親は太陽の下で見ると、やはり年齢が上に見える。座敷に座り、母親はやっと口を開いた。この約14年間、俺は現世から消えていたらしい。


…大輔と出かけてくる…


父親が亡くなった直後、頭の中に父の声が聞こえたという事だ。しかも昔の元気な声だったらしい。気のせいだろうと、母親は、通夜・葬儀と慌ただしく行った。だが葬儀の終わった夕方、俺と巨大なDジェネレーター(ソーリューロボ)が忽然と消えた。まあ、すぐに戻るだろう・・・が14年。その間は周囲には、海外に行った事にしていたらしい。おかげで穏便に今ここに座っている。


…いわゆる、ウラシマエフェクトか…


SF小説や、アニメの話かと思ってたが、まさか自分が経験するとは・・・。これからしばらくは、周囲の流れに合わせて生きていこう・・・。



ハッ!目が覚めた。布団の中、現実世界だ。時間は?!


…11:50…


無断欠勤か?!やってしまった!?慌てて学校へ電話する柳生。スマホの向こうから聞こえた学校の人の返事は


「始業前に同居されてる背の高い男性の方が来られて、ひどい風邪だとおっしゃってましが、柳生先生っ!大丈夫ですか?」


その一言でホッと肩の荷が降りた柳生だった。


「・・・いえ、熱のせいで少し混濁して、熱が下がり次第出勤いたしますので」


とりあえず、無断欠勤は伝言してくれて免れたのであった。


…奏くんに感謝やな?…


襖がそっと開いた。湯気の出る茶碗が乗ったお盆を手に、奏が立っていた。


「先生が熱でうなされてたんで、朝イチ学校行ってきましたけど・・・」


「すまない・・・ん?!」


おでこを触ると冷熱用のシートが貼られているのに気付く。少し熱が下がったのか、周囲の状況がなんとか判断できた。


…ピンポン…


インターフォンが鳴った。奏はお盆を畳に置きゆっくり玄関に向かう。やがて廊下をパタパタ走る音。直後勢いよく襖が開き、飛び込んできたあかり。持参した袋を手にもったまま、柳生に抱きつく


「私がもっと早く止めてたら・・・」


「こらっ風邪がうつるって・・・」


引き剥がそうとする柳生。周囲に目もくれないあかり。フリーズし、動きが止まった奏。


「・・・っと・・・僕、用事思い出したんで、おやっさんとこ行ってきます」


奏は真っ赤な顔で襖を閉めた。あわてて廊下を駆けて行くのが、音だけでわかる。エンジン音が鳴り、急発進したのすら伝わった。


「あれ?スカートと違うな?珍しい」


「昨夜汚してしまいましたし、何かこれからパンツスタイルの方が良い気がして」


柳生はこういう時、どういうリアクションをして良いのかわからない。


「そうだ、柳生先生のお父様からの伝言です。決戦の日は近い。この戦い収束させるには、私が大輔に与えてしまった経験と、その記憶がキーになると・・・」


「さっき熱でうなされるまで忘れてた。“闇の核”の正体は地球のストレスやってことか・・・」


正体がわかっても、対処する方法を考えねばならない。困り果てた柳生だった。


その頃、おやっさんに借りた部屋の中、穂波は自室で居た。さっき慌てて出て行ったあかりは、いったいどこへ向かったのだろうと考えていた。おやっさんと話した直後やったから、今から店に行って聞こうと、階段を降りた。目の前の路地を歩いてすぐだ。通りに出る角を曲がったら、店の前でうつ向きハアハア息を切らせた奏がいた。


「奏さん、急いでどうしたん?」


「いや、なに・・・急におやっさんの顔見たくなって」


奏は余計な事は言わないタイプだが、隠し事は苦手だ。今は穂波から逃げるが勝ちと考えた。


「あ・・・先に片付けらんなん用事・・・、忘れてたぁ・・・」


踵を返し、この場から離れようとした。


…今、声が裏返ったよな…


と思った途端、痛い視線を感じた。


「どこへ・・・?何しに・・・?今の声・・・おかしいですよ!」


いつものように頰ふくらませて、穂波の問い詰めの刑が始まった。


「あ・・・いや・・・その・・・」


奥から声がした


「おお奏くん、柳生の様子はどないや?熱だいぶ高いんか?」


…そや!?僕は何も後ろめたい事ないし…


奏は普段のペースを取り戻し、落ち着いた声に戻った。


「朝から随分うなされてたんですが、お昼前には熱も落ち着きだしたようです」


…さあ僕はこの場から、さっさとフェードアウトを・・・…


「で、どこへ?何しに?行くんですかね?奏さん・・・」


穂波の追撃は続いた。焦る奏は回避方法を見つける事ができない・・・。そこへおやっさんが


「さっきあかりちゃんに柳生の事を話したら、慌ててすっ飛んで行ったんやけどな。ケロ助をウチに忘れて行ってしまいよったんや。いま預かっとるんやが、まるで我が家みたいにテレビ見てくつろいどんねん、あいつホンマにロボットか?」


奏の背中に冷たいモノがグサリと刺さった。絶対零度の冷たい穂波の視線だ。


「奏さん、隠し事してるんですよね・・・」


穂波の周囲からメラメラとオーラが見えそうだった。観念した奏は、さっきあった事を二人に話した。


「ほー、やっと柳生にも春が来たんか? 42歳でついにやな〜」


おやっさんは昨夜展望台で見た事には、一切触れずに話した。


「え?昭和45年生まれの免許証見ましたけど・・・」


「戸籍上はな・・・!親父さんの葬式の直後14年間やったか、居れへんようになってな。お袋さんは海外行った言うし、ええ就職先見つけたんやの・・・って程度に思とったんや。ところが、ひょっこり散髪してくれってココ来てな、俺40代になったのに、柳生はどう見ても20代の前半や。何あったか聞いても“解らへん”や!」


「時を超えた?タイムマシーン?」


奏は昔見た映画を思い出す。おやっさんは続けた。


「後で柳家に行ってお袋さんに聞いたんや、Dジェネレーター、あっソーリューロボな!それと一緒に14年間消えとったらしい。ワシの親父も先代の一人やったからな、包み隠さんと教えてくれたわ。柳生がちゃんと帰って来たから、落ち着いて話してくれたんやな。」


奏は疑問が少しだけ解けた。


「って事は、肉体的には42歳。見た目が異常に若いなとは思ってたんですが」


その会話の間、穂波は黙って床を見ていたが、急に立ち上がり


「用事思い出したし、帰る・・・」


「え?コーヒーぐらい・・・」


おやっさんの制止も聞かず、出てゆく穂波。なぜか涙声のような気がした。奏は意味が全くわからないまま


「なんか、あかん事言いました?」


「さあのぉ〜、女心だけは還暦過ぎた俺にもようわからん!ってことにしといてくれ」


奏の肩をポンと叩き、おやっさんは椅子から立った。そして振り返り


「昼飯、一緒に食うやろ?」


こういう時のおやっさん、かっこいい大人やな!奏は心底思った。


外は初秋のあらぎ島。不穏な空気がかすかに張り詰めていた。



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