吉報
帝国軍参謀本部。
広大な作戦指揮室では、各戦区の状況が大型スクリーンへ映し出されていた。
通信士官たちが絶え間なく情報をやり取りし、参謀たちは地図へ新たな部隊配置を書き込んでいく。
その時だった。
作戦室の扉が勢いよく開かれる。
「急報!! 急報!!」
伝令将校が息を切らしながら駆け込んできた。
室内の視線が一斉に集まる。
「報告しろ。」
参謀本部長が鋭く命じた。
伝令将校は姿勢を正し、大きく息を吸う。
「セリオン群島への上陸、成功しました!」
そして次の瞬間、室内から歓声が湧き上がった。
「よくやってくれた!」
「第一段階は成功だ!」
握手を交わす者、安堵の息を漏らす者、誰もがその報告を歓迎した。
しかし、参謀本部長はすぐに表情を引き締める。
「喜ぶのはまだ早い。」
「急いで追加の物資と兵員を送り込め。」
「補給船団を直ちに出港させろ。」
「予備部隊も投入する。」
参謀たちが一斉に動き出す。
「輸送艦隊を増派!」
「燃料、弾薬、食料を優先輸送!」
「工兵部隊も送り込め!」
参謀本部長は戦況図を見据えたまま命じた。
「一刻も早く戦力を送り込み、奪還地域を拡大せよ。」
「敵に立て直す時間を与えるな。」
「了解!」
命令は各方面軍へ次々と発令されていった。
一方その頃。
ヴェルテクス連邦、大統領府の地下戦略統制室には重苦しい空気が漂っていた。
巨大なスクリーンにはセリオン群島の戦況図が映し出され、その一部が帝国軍を示す色へと変わっている。
そこへ一人の通信士官が駆け込んできた。
「緊急報告です!」
室内の視線が集まる。
「帝国軍に占領地域の一部を奪還されました……!」
言葉が終わると同時に、大統領が机を叩いた。
「どういうことだ……。」
「どういうことだと聞いている!!」
怒声が地下司令室へ響き渡る。
将官たちは顔を伏せ、資料へ目を落としたまま沈黙していた。
報告を続けた通信士官も言葉を失う。
その沈黙を破ったのは、統合参謀本部議長だった。
「大統領。」
「今は責任を追及している場合ではありません。」
「急いで増援を送りませんと、帝国軍の橋頭堡の拡大を許してしまいます。」
「航空戦力の再編成を急ぐべきです。」
「予備機甲師団の投入も具申します。」
「海軍にも機動艦隊の増派を要請すべきでしょう。」
大統領は歯を食いしばり、戦況図を睨みつける。
赤く塗られていたはずの島が、少しずつ青へ染まり始めていた。
「……分かった。」
苦々しく吐き捨てるように言う。
「予備兵力を投入しろ。」
「セリオン群島を奪い返す。」
「帝国軍を、一歩たりとも本土へ近づけるな。」
「はっ!」
地下司令室は再び慌ただしく動き始めた。
こうして、セリオン群島を巡る攻防は、さらに大規模な戦いへと発展していくのだった。




