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最初からここに私の居場所はなかった  作者: kana


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 小さい子の参加も多かったからか、王妃様とクロイツ殿下への挨拶も簡単に済まされた。

 そのあとは庭園を好きに駆け回る子もいれば、テーブルの茶菓子に夢中の子もいる。クロイツ殿下はというと、令嬢たちに囲まれている。


 うんうん。この中に未来の伴侶がいるかもれないよ? 是非いい子を見つけてね。と、心の中でエールを送る。


 そして、私は兄様たちと庭園に向かって駆け出した。・・・・・・本当に4歳の身体は思うように動かない。

 気持ちは前に前に向かうのに、足がついて行かない。転びそうになる度にユーリ兄様が支えてくれる。


 兄様たちに連れられた先には懐かしい遊具が!


 前回、オーギュスト王国では一度も見たことがない。ブランコも滑り台もある! なんなら木でできたジャングルジムまである! テンションは爆上がりだ!


『きゃー』っと目の前のジャングルジムに掴まってよじ登ろうとした。最初はブランコに乗りたかったけれど、男の子たちが並んでいたからね。

 それに見える限りでは遊具で遊んでいる女の子はいなかった。確かに貴族の令嬢がドレスでブランコはないだろう。

 私? 私はワンピースだし幼児だ。幼児は本能の赴くまま興味のあるものに突っ走ればいい!


 まずはジャングルジムからだ・・・・・・ん? 手は届くが引っ掛けようとした足が届かない。それならばと、腕に力をいれて体を持ち上げようとしても上がらない。・・・・・・うん、次は滑り台だね!

 長蛇の列の最後尾に並んで、今か今かと自分の番を待つ。そしてついに、この世界初の滑り台!


「きゃ~」


 ・・・・・・すぐに終わった。

 わかっていましたとも子供用だもんね。でも! もう1回! 小さくても順番は守りますよ!


 ユーリ兄様は少し離れたところで友達と話しながら私から目を離さない。アルト兄様は一度で滑り台に満足したのか、ブランコに興味津々なのでそちらを薦めた。


「わたち、ここにいりゅからあーとにいたまはぶりゃんこいっちぇいいよ」


 だって、ブランコは順番が来るのに時間が掛かりそうだもん。それなら滑り台の方が面白い。


 何度か滑ったところで、お姉様方に声をかけられた。


「まあ!ワンピースが汚れているわ」


「此方にいらっしゃい」


「着替えさせてあげるわ」


「手と足も汚れを落としましょう」


 そう言われて見下ろすと白かったワンピースが茶色に! 優しいお姉様方なのね! と、感謝した。


 心配したユーリ兄様がこっちに向かって来たけれど、お姉様方に説明されて私も行ってくると伝えたからか、お姉様方にお願いしますと引き渡した。






 最初におかしいと気付けばよかった。だって本当に優しい人なら、汚れていても手を繋いだり、背中に手を添えてくれたりするのではなかろうか?


「あなた調子に乗りすぎよ」


 どこがだろう?


「あなたみたいなチビがクロイツ殿下に本気で相手にされると思っているの?」


 いやいや、私の方が仕方なく相手してあげてますが?


 こんな風に蔑まれるのは前回で慣れている。


「ちょっと聞いてるの!」


 ドンッと、肩を押されて踏ん張る力のない4歳児の私は後ろにひっくり返った・・・・・・

痛いな~ と、見上げたお姉様方の冷たい視線はあの日の断罪を、あの日の恐怖を嫌でも思い出させた。







 こんなの平気だ。

 前回だって公爵令嬢の私をこんな風に嘲笑う人ばかりだった。慣れているのよ。どおってことはない。


 なのに・・・・・・動けない。

 体が勝手に震えて立ち上がることも出来ない。これは恐怖なの?


 あの日のべティーの意地の悪いニヤついた顔と、冷酷な目で睨むギリアン殿下が脳裏に蘇る。そんな2人と比べると、彼女たちの蔑む視線なんてなんてことないはずなのに・・・・・・


 これがフラッシュバックってやつなの?


「何、怯えたフリしてるのよっ!」


 それでも立ち上がろうとして、震えて立ち上がれない私はまたひっくり返った・・・・・・それから肩に痛みを感じた。

 この痛みは知っている。前回は義母に何度も与えられたものだ。


 立ち上がれなかったんじゃない。いま蹴られたよね? は? こんな小さな子を蹴ったの? どう見ても彼女たちはクロイツ殿下と同じ年頃の令嬢だ。善悪の分別はつくはず。


 悔しい・・・・・・何で動けないのよ。


「何とか言いなさいよ!」


 痛っまた、蹴られた・・・・・・


 うぅ・・・・・・うぅ~・・・・・・私は弱い。

 自分らしく生きるって決めたのに。前回のように我慢ばかりの人生を送りたくなかったのに。人の顔色ばかりを伺うなんて二度と御免だと思っていたのに。震える身体は思うように動かない。言葉も上手く発せるとは思えない。


 うっうぅ~ こんな卑怯な人たちに泣き顔なんて見せたくないのに。悔しい・・・・・・何もできない自分が悔しい。


 た、助けて・・・・・・誰か助けて・・・・・・


「リリーシア!」


 最近ではよく聞き慣れた声が私の名を呼んだ。


「「え!」」


「「嘘!」」


「お前たち何をしているんだ!」


 初めて聞くクロイツ殿下の厳しい声と目が彼女たちを責めている。


 き、来てくれた。

令嬢たちに囲まれて小さい私の姿は隠れて見えないはずなのに、こんなに人気のない場所なのに、クロイツ殿下だけが来てくれた。


 いつも意地悪なことばかり言うクロイツ殿下の声と姿がこんなにも安心できるなんて。


「うぅ~・・・・・・く、くろいちゅ~」


 限界だった。前世と前回を思い出してから自分らしく生きる!なんてイキっていたけれど怖かったんだよ~


 手を伸ばせば、驚いたような顔をしてすぐに抱き上げてくれた。首にしがみついて顔を埋めると同時に涙が溢れてきた。


「くろいちゅ~。うわ~ん・・・・・・ぎゃ~ん・・・・・・」


 こんな大きな声を出したのは記憶にある限り初めてだ。

 それに背中を撫でるクロイツ殿下の手が優しくて余計に涙を誘う。


 私の泣き声があまりにも大き過ぎたからなのか、子供も大人も関係なくこの場に集まりだしてしまった。


「リリーシアちゃん!」


「「リリーシア!!」」


 焦るお婆様と兄様たちの声も聞こえた。


「わ、わたくしたちは・・・・・・」


「言い訳はあとで聞く」


 クロイツ殿下の肩に顔を埋めているから表情は分からないけれど、聞いたこともない冷たい声は彼女たちを確実に怯えさせているだろう。でも、私の背中を撫でる手は変わらず優しい。


「ご、ご・・・・・・ごめんしゃい。あ、ありあとぉぉぉぉ~。ヒッヒック」


 お婆様、兄様たち、心配かけてごめんなさい。クロイツ殿下、助けてくれてありがとう。今はこれしか言えない。




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