表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最初からここに私の居場所はなかった  作者: kana


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/53

52


ノックの音もなく勢いよく扉が開いた。


うん、我慢ができなかったんだね。


「⋯⋯リ、リリーシア⋯⋯」


「下がりなさい!貴方は待つことも出来ないのですか!」


入口で固まってしまったクロイツ殿下にお祖母様の叱責が飛んだ。

確かにマナー違反なんだよね。

仕来りでは新婦がバージンロードを歩く先で新郎が待っているはずなんだけれど⋯⋯


お祖母様の声も彼の耳には届いていないのか、私から視線を外すことなく真っ直ぐに一歩、一歩と近付いてきて⋯⋯


「⋯⋯綺麗だリリーシア」と、言ったかと思えば私を抱き抱えた。もちろんお姫様抱っこだ。


そのままお祖母様の制止を無視して私を抱えたまま歩きだした。

向かう先は各国の国を代表した王族や貴賓、マシェリア王国の貴族が待つ教会だ。


「リリーシア愛している。俺の最高の花嫁だ」なんて、蕩けるような目で言うから嬉しくて、幸せで、目頭が熱くなった。


王族の婚姻式に花婿が花嫁をお姫様抱っこして入場する姿は前代未聞で、問題になるかと思いきや意外にも支持される声が多かった。


誓いの言葉も交わし無事式を終えて、祝福の声を浴びながら私たちの婚姻式は終わった。


次は夜のお披露目パーティーだ。

一年前から沢山の人の手を借り、準備に取り掛かった大ホールは、王族のお披露目パーティーに相応しく豪華絢爛で、ホールの天井から壁に至るまで、招待客の目を楽しませた。


次々に挨拶にくる各国の代表者たちと、我が国の貴族たちと言葉を交わしていると疲れを意識するよりも早く、パーティーの終盤を迎えた。

そしてタイミングを見計らった侍従と侍女から退出を促された。


頑張って!と、ガッツポーズするリズベット。

顔を赤くして小さく手を振るマリエル。

さっさと行けと、手を振るレイ。

他にも沢山の人が、微笑ましげに見送ってくれた。皆がこれから初夜が行われると知っているから⋯⋯

でもね。今さらだけど⋯⋯私、純潔じゃないんだよね。

何となく罪悪感を覚え心の中で皆様に頭を下げた。




◇◇◇◇◇





湯浴みを終えて侍女たちが用意してくれた物はスケスケで、初めて見た時は目が飛び出るかと思った。


この一年間、王宮に訪れる度にお祖母様が私に付き添っていたから、クロイツ殿下と私が二人きりになることがなかった。

まあ、目を光らせていたとも言えるわね。


だからか⋯⋯世界に二人だけしか存在しないような⋯⋯時間が止まっていると錯覚してしまう行為が、今から行われると思うと恥ずかしい気持ちと期待する気持ちが私の心臓をうるさくする。


ドキドキが止まらないままクロイツ殿下の待つ寝室のドアを叩くとすぐに扉が開いたと同時に抱きしめられていた。


「この日が来るのずっとを待っていた」


「⋯⋯私も」


「「愛している」」


これ以上の言葉はいらなかった。







◇◇◇◇◇




「こら、リリー!出歩くなら俺に声をかけろっていつも言っているだろう!」


「もう、本当に心配性なんだから」


「当たり前だろう?リリーのお腹には俺たちの子がいるんだからな」


「4人目だよ?」


「何人目だろうが心配なんだよ。俺の見ていないところで、転んでないか、ぶつけていないか、腹が痛くなっていないか、とにかく出歩くなら俺と一緒に!」


「父上、母上の側には僕もいます」


「父さま、好き」


「とーた!あっこ」


上から5歳長男のルドルフ。面倒見のいいしっかり者。クロイツのミニチュア版だ。


4歳長女のアナリスは甘えん坊さん。実はお祖父様である陛下に一番懐いている。私によく似ていると言われている。


2歳次男のラルクはいつも笑顔で皆からは癒しの天使と呼ばれている。ラルクも私に似ている⋯⋯わね。


アナリスに好きと言われて嬉しそうに頬にキスをしてからラルクを抱き上げるクロイツ。


「ふふっ、分かった。今日も愛しているわクロイツ」


「俺も愛しているリリー」


そう言って優しいキスが唇に落ちる。




結婚して当然と言うべきかすぐに妊娠した。

まあ、妊娠を告げた時のクロイツは固まったかと思えば、突然お姫様抱っこでベッドまで運ばれた。


『リリーはベッドで子が生まれるまで安静にしてくれ。俺は今日からここでリリーの分もまとめて執務をする』


クロイツなりに考えた結果なのだろうけれど、生まれるまでベッドの中なんて反対に体に悪いわ!

まあ、クロイツ自身が真剣なので、彼が満足するまでは大人しく言うことを聞くつもりだった。


しかし!ここでお祖母様が降臨した。

はい⋯⋯クロイツは叱られ、私は自由になった。

過保護に、それはもう過保護になってしまったクロイツに、元気な子を生むためにも適度な運動も必要だと説得してくれたのもお祖母様だった。

それからのクロイツは私が移動する度に付き添うようになった。こっそり行動してもすぐにクロイツに見つかってしまうのは、誰かが報告していたのだろう。



ルドルフが生まれた時は引き離すのに大変だった。本当に側から離れないのだ。なんなら一度抱くと何時間でもルドルフがお腹が空いて泣くまで抱きっぱなしだったのだ。


それからも側近たちの目を盗んでは執務室から脱走してルドルフに会いに来ていた。


それはアナリスの時もラルクの時も同じで周りの皆を困らせていた。




幸せだな。本当に私は世界一の幸せ者だと思っている。

愛する旦那様と、可愛い子供たち。

毎日が幸せすぎて泣きたくなる。



今では前回のことを思い出すこともなくなった。

あそこには何処にも私の居場所はなかった。


ずっと探していた私の居場所はここにあったんだね。


本当に幸せだよ。

私を愛してくれてありがとうクロイツ。

生まれてきてくれてありがとうルドルフ、アナリス、ラルク。

お腹の子も元気に生まれてきてね。お母様はあなたに会える日を楽しみにしているね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ