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リズベットが帰ってこない。
連絡が一つもないことがさらに不安を覚える。それはレイとマリエルも同じで毎日が落ち着かない。
それに、学院内の雰囲気も何かおかしい。
いや、確かに休暇に入る前から嫌がらせも多少あったし、私に関する悪意ある噂も流れていたのも知っていた。でも、気にしていないと言えば嘘になるけれど、そんなものは前回の私が受けてきたものと比べると可愛いものだ。
そして、もう1つ気になるというかストレスなのが⋯⋯ギリアン殿下だ。
新学期が始まってから、毎日何かと声を掛けてくるのだ。後ろに影のように控えるジョシュアも連れて⋯⋯
分かっていた事だけれど、やはりギリアン殿下は私の状況を改善しようとはしていない。
知っていて見て見ぬふり⋯⋯なんだろうね。それとも、自分が私に話しかける事で守っているつもりだとか?⋯⋯ないない、それはないね。そんな思考だったとしたら、好感を持つどころか気持ちが悪い。
本当は顔も見たくない。
前回はべティー母娘が原因とはいえ、彼は私を殺したのだから⋯⋯
◇◇◇◇◇
「なあ、いい加減犯人探ししないか?」
「そうよ。あれは人として最低よ」
何でレイとマリエルがこんなことを言うかというと、今日、登校すると私の机の上にお葬式の時に供える花が飾られていたからだ。
教室の外にまでに騒がしい声が聞こえていたのに、私たちが入った途端ピタリと止まった時から嫌な感じがした。
そして最初に目に入ったのがソレだった。
これは前にも見た光景だった。
隠れた嫌がらせはほぼ毎日。
ある日は靴箱にゴミを入れられ。またある日は教科書を破られ、ノートには『死ね』と書かれていた。小さな嫌がらせばかりだけど精神的には疲れる。
「おい!誰がやった?お前ら知っているんだろ?」
「わたしは、こんなことをする人を軽蔑します」
「お前らも知っていると思うが、リリーシアはオーギュスト王国とマシェリア王国、両国の王族の血を引いているんだぞ?自分たちのしていることが公になった時、お前たちの身がどうなるか考えたことがあるのか?」
「まあ、公爵家の令嬢にこんな幼稚なマネをして、本人だけの咎で済めばいいですわね?我が国にもしっかり報告させていただきますわ」
「ふん、全員だんまりか⋯⋯だがな昔から『人の口には戸は立てられぬ』って言うからな、そのうち処罰を恐れた奴から証言があるんじゃないか?」
レイとマリエルがここまで言うなんて、2人とも我慢の限界だったみたいね。
それにさっきまでニヤニヤしていたクラスメイトたちからそれが消えた。
「これ以上やるなら覚悟しろ。こんな事までされて黙っているお方ではないぞ」
「レイ、マリエルありがとう。⋯⋯もういいよ。今日は帰りましょう?」
「ああ、もうこんな学院辞めちまおうぜ」
「わたしもレイに同感です」
それがいいかもしれない。
ギリアン殿下の顔も見なくて済むもの。
「ふふっ、それは帰ってから話し合いましょう?⋯⋯では、皆さんごきげんよう」
私たちが背を向けるとガタガタと慌てたような机や椅子の音がしたけれど、もう振り向くことはしなかった。
3人で並んで馬車止めに向かっていると前からワーグナー先生が歩いて来るのが見えた。
「あら、何をしているの?もうすぐ授業が始まるわよ。教室に戻りなさい」
「俺たち早退しますので」
ワーグナー先生は引き留めようとしたのかレイに手を伸ばしたけれど、レイはその手を拒絶した。
まさか拒絶されるとは思っていなかったのか、すごく傷ついた顔を作っていた。
疲れたな⋯⋯
もう、この国の誰とも関わりたくないな⋯⋯
もう、帰りたい⋯⋯もう、帰ろうかな⋯⋯
リズベットが戻ってきたら相談しよう⋯⋯早く戻ってこないかな⋯⋯




