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「おはようリリーシア嬢」
「⋯⋯おはようございます。ギリアン殿下」
何で登校するなり朝から眩しい笑顔のギリアン殿下が目の前にいるの?まだ、馬車から降りたところだよ。
ジョシュアまで居るよ。
「夜会の日に痛めた足はもう大丈夫かい?」
「え、ええ。もう痛みはありません。ご心配をおかけしました」
本当は痛めてもいなかったけどね!
「よかった」
と、安心したような顔をしたと思ったら自然に私の隣を歩き出した。⋯⋯ナゼ?もしかして教室まで送ってくれるつもりなんだろうか?嫌なんですけど!周りを見て?視線を感じませんか?私はその視線が痛いよ?皆から向けられる視線が優しいものではないことぐらい気付かないの?
まあ、休暇前の私の状況を本当に知らなければ仕方がないけれど、出処は分からなくても私に関する悪意のある噂ぐらいは耳に届いているんじゃないの?親しくはしていなくても私たちは一応いとこだよ?庇うなり原因を突き止めようとはしなかったよね?
まあ、頼るつもりはないけれどね!
「君たちはいつも一緒にいるね。余程仲がいいんだね」
なんて事ない会話の間にもギリアン殿下は私の後ろにいるマリエルとレイにも声をかけている。
「ええ、幼馴染みですから」
「でも、卒業式後は君たちはマシェリア王国に帰るのだろう?」
「そうですね」
「公爵家の一人娘であるリリーシア嬢はこの国に残ることになるだろう?」
「⋯⋯予定ではそうなりますかね?」
前にお父様はミラドール公爵家のことは考えなくてもいいと言っていた。私が継がないのならギリアン殿下に継がせることもできる。と⋯⋯
それをギリアン殿下本人が知っているかどうかは知らないが曖昧に答えておく。
逃げ場のない前回と違って、今回の私には手を差し伸べてくれる伯父様家族も、友達も、⋯⋯クロイツ殿下もいる。
何もこの国に拘る理由はないからだ。
「聞いてる?リリーシア嬢」
「え?」
「べティー嬢のことだよ。あれからどうなったのか知っているかい?」
彼女のことは今のところ何も情報は入ってきていない。もう会うことはないとは思うけれど、確かに気にはなっている。
「⋯⋯いいえ、あの夜会で騎士に連行されたところまでは現場にいたので知っていますが、それ以降のことは何も」
「結果的に言えば、母娘ともどもマシェリア王国の王太子が引き取って行ったよ。研究対象にするらしいよ。貴族院では処刑一択だったんだけどね。クロイツ殿下のおかげで2人とも命拾いしたよね」
確かに前回私が処刑されたのはビアンカとべティーの魅了のせいだったのは頭では理解したけれど、ギリアン殿下が指示したんだよ!それも義姉を虐めたから、という理由で私は簡単に殺されたんだよ!
そんなアンタが軽く言うな!⋯⋯ムカつく!ムカつく!ムカつく!ギリアン殿下にイライラする!ああ~叫びたい!
⋯⋯でも、ここは我慢するしかない。
「そ、そうですか」
「君も彼女には迷惑をかけられた1人だから安心しただろう?」
「そうですね」
「⋯⋯ところで、き、君とクロイツ殿下の関係なんだけれど⋯⋯」
「おはよう。皆さん」
またですか。ここでもまた登場しますかワーグナー先生。
「「「おはようございます」」」
「あら、お邪魔だったかしら?」
まったく。
「それにしてもギリアン殿下とリリーシアさんが並ぶと本当にお似合いだわ」
ワーグナー先生は、うふふって笑っているし、ギリアン殿下は耳が赤くなっている。
だからって全然嬉しくない。
「リリーシア、そろそろ行こうぜ」
「遅れてしまいますわ」
「そうね。それではお先に失礼します」
やっとギリアン殿下から解放される。それにワーグナー先生の目⋯⋯なんなの?気分悪いわ!
「なあ、ギリアン殿下って明らかにお前を狙っているよな」
「あ、それ!わたしも思いました!」
「ん~婚約の打診はあったみたいだけど、とっくに断っているわよ」
「それよりワーグナー先生のリリーシアを見る目っておかしくないか?挑発的って言うか、見下してるって言うか」
「そう⋯⋯ね」
「この間の夜会でもクロイツ殿下の前では雌の顔になっていたし、気持ち悪ぃ~わ」
「もうレイ!いくらなんでも雌は失礼よ。確かに女の顔になって媚びていたとわたしも思うわ」
レイとマリエルも何か感じるものがあるのね。
「まあ、クロイツ殿下に考えがあるみたいだから私たちは気にしなくていいと思うよ」
多分ね⋯⋯
新学期から10日。まだリズベットは帰ってきていない⋯⋯




