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「⋯⋯⋯⋯シア」
?
「おき⋯⋯リリーシア」
??
「いい加減に起きろ!リリーシア!」
ひっ!突然大きな声が聞こえて飛び起きればわたしと同じ、見慣れたロイヤルブルーの瞳とバッチリ目が合った。
な、なんでここにクロイツ殿下が?夢か?
てか、ここは⋯⋯周りを見回しても私の部屋で間違いない。そう思ったら寝顔を見られたかもしれない羞恥よりも怒りが先にきた。
「起こさないでよ!何時に寝たと思っているのよ?まだ眠たいの!」
「⋯⋯もう昼も過ぎているんだが?」
「え?」
「レイドリックとマリエルはちゃんと朝から起きていたらしいぞ」
「え?⋯⋯え~と?」
2人とも同じような時間に寝たはずなんだけれど⋯⋯
「ぷはっ、お前はどれだけ寝るんだよ」
うぅ~
「てか!レディの部屋になんで許可なく入っているのよ?」
「ノックはしたが返事がなかったからな、俺が自ら起こしてやったんだ感謝しろよ」
この顔⋯⋯見た目だけなら最高級。外面もいいから臣下からも国民からも人気がある。
でも私は知っている。この王子の本性を!
「で、なに?」
「ああ、帰国する前にお前の顔を見ようと思ってな。⋯⋯大丈夫か?」
⋯⋯そうなんだよね。いつもは私に対して憎まれ口ばかりなのに、たまに気遣う言葉をくれる。それに⋯⋯な 私が助けを求めたときには何処からか必ず現れて守ってくれた。
「うん、大丈夫だよ」
「そうか⋯⋯ぷはっ」
「な、何?」
この『ぷはっ』嫌な予感がする。
「お前寝相が悪すぎるだろ。どっち向いて寝てるんだよ。枕は足を乗せるものじゃないぞ」
ええ、ええ、寝相が悪いことは自分でもわかっているわよ。下半身が床に着いていることもあるし、ベッドから落ちたことも何度もある。
「う、うるさい」
「⋯⋯お前の旦那になる奴は大変だな」
「だ、大丈夫っ!それまでには直るから!」
「それは無理だろ⋯⋯そんなお前でも許してくれる優しい相手を選べよ」
そう言って私の頭をぐしゃぐしゃに撫でて『またな』と部屋から出ていった。
何だかいつものクロイツじゃないみたいで少し不安になった。
とりあえずメイドに支度を手伝ってもらってから、急いでいつものサロンに行ったけれど中にいたのはマリエルとレイだけでクロイツ殿下はもう出発したあとだった。
まだ、昨日のことで聞きたいことがあったのにな。
クロイツ殿下が夜会に戻ってからのワーグナー先生とのことも⋯⋯何を考えてあんな事を先生に言ったのか。『興味がある』なんて意味深なこと。今ごろワーグナー先生も期待しているんじゃないかな?
何を考えているにしてもクロイツ殿下がワーグナー先生の色香にヤラれることはないだろうし、
なんなら彼なりの思惑があるのだ思う。
⋯⋯やっぱり、もう少し話したかったな。せめて見送りできる時間が欲しかった。
次の長期休暇までは2ヶ月もある。
前回はその休暇前の卒業式の日に私は殺された。
昨日の様子だと、もうビアンカやべティーには二度と会うことはないだろう。
前回とは違って、彼女たちは我が家にも迎え入れられていない。もう関わることはないはずだけど、胸の奥の方では不安が消えないのはナゼだろう。
この国にいる限り不安が消えることがないのだろうか?
それに⋯⋯なぜだかオーギュスト王国は私の居るべき場所ではない気がするのだ。
◇◇◇◇◇
2週間の休暇はあっという間に終わった。
お父様の許可が出てから、レイは毎日王宮にある騎士団の練習に参加して充実していたようだ。
マリエルの方は趣味の刺繍の時間がゆっくり取れて満足な休暇だったらしい。
私は⋯⋯退屈だった。
レイに騎士団の練習に誘われたけれど一度も行かなかった。鍛錬ならミラドール公爵家の広い庭で十分だったのもあるし、ギリアン殿下に会ってしまうのをなるべく避けたかったから。
今日から新学期が始まるけれど、リズベットはまだ帰ってきていない。
確かに新学期までに少し遅れるかもしれないと言って帰って行ったけれど、一度も連絡がないのも変な話で落ち着かない。
まあ、リズベットのことだから心配はしていない。けれど早く彼女の顔を見て安心したい。
この時は、数日もすればリズベットに会えると思っていた。
まさか、彼女が身動きが取れない状況にあるなんて思いもしなかった⋯⋯
何も気付かぬまま、私はマリエルとレイと一緒に登校した。




