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最初からここに私の居場所はなかった  作者: kana


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~ビアンカ視点~






欲を出さなければよかった。

お母さんの言うことを聞いていればよかった。

アタシのせいで娘のべティーまで巻き込んでしまった。




◇◇◇◇◇



何日も街を歩き回っていたある日、とうとう見つけた。


ラフな格好をしていても颯爽と歩く姿はとても人目を引き、間違いなく貴族。それも高位貴族だと確信があった。

もともと貴族なら誰でもよかった。

けれど、若く見目麗しいその男に惹かれた。だからターゲットにすることに決めて近付いた。


力が弱くなったのをここでも実感した。1度の接触だけでは思った結果が出なかったのだ。『アタシたちは過去に恋人同士だったのよ。身分違いのから無理やり引き離されたけれど、その時にできた貴方の娘がいるの』と植え付けたのに⋯⋯

ただ、何も効かなかったわけではなさそうで、あと、1、2度()()()すればアタシに夢中になるはずだと次に再会するのを待つことにした。

その再会に何年もかかるなんて思わなかったのよ。その間に()()()の効果が切れるなんて⋯⋯その時に何か分からないけれど嫌な予感がして、勿体ないけれど諦めたのよ。


⋯⋯だから次の男を探すしかなかった。


意外とすぐに次の男が見つかった。

男は愛する妻を亡くしたばかりだった。だからかあっさりと『魅了の力』に掛かった。


それからはすべてが変わった。夢見ていたものが手に入ったのよ。貴族の身分も、大きな邸に住むことも、毎日綺麗なドレスを着て、美味し食事にありつけて、ふかふかのベッドで眠る。平民の生活とは雲泥の差だったわ。

そんな生活にも慣れた頃、気付いたことがあった。


娘のべティーにも『魅了の力』が遺伝していたのよ。

それはアタシよりも弱い力だった。

ただ、アタシが力を使った後にべティーが接触しながら笑顔を見せる。2人がかりで『魅了』することに気付いたのよ。


それからは我が邸にお友達を招待して、同じことを繰り返した。

次はべティーにも幸せになって欲しかったから。

でも、なぜか高位貴族の子息子女が我が家に来ることがなかった。


もちろん、べティーにも力のことは説明した。

アタシたちは1人では弱すぎる力だから見つかることはないと安心していた。気を抜きすぎていたのよ。





◇◇◇◇◇





新年の夜会に参加したこの日。

普段から娘(だと思っている)からイジメにあっていると聞かされていた夫がミラドール公爵令嬢に話しかけたところから、夫の魅了が解けることも、アタシとべティーの破滅が始まるなんて思いもしなかったのよ。







冷たく暗い牢に入れられ頭をよぎるのはお母さんの言葉。


監視ならまだいい。不便はしても自由はあるから。

何よりも恐ろしいのは悪用した者は収容させるということ。

アタシにだってわかる。アタシのしたことはそれにあたるってことを⋯⋯

収容されるって、ずっとこの牢から出られないってこと?

それとも、お母さんの母国に送られるってこと?そうなったら何をされるの?何かの実験をされる?


頭の中は最悪の事態しか思い浮かばない。

よく考えれば貴族に魅了の力を使ったんだ。監視や収容で済めばいい方なのかもしれない。⋯⋯処刑も有り得るのかもしれない。と想像したところで体は震えだし、足の力も抜けて崩れるように地面に倒れた。頬に石の床が当たっても痛みも感じない。転がっても震えは治まらない。




あれからどのくらい時間が経ったのだろう。大広間から微かに届いていた音楽も今は聞こえないことに気付いた。

この頃には震えは止まっていた。


⋯⋯これからどうなるのだろう?

べティーはどうなるのだろう?

あの子はここではない別のところに連れて行かれた。

今ごろべティーも震えて泣いているに違いない。


「ごめんねべティー」


アタシが悪かったの。欲を出さなければよかった。

お母さんの言うことを聞いていればよかったのよ。

アタシのせいでべティーまで巻き込んでしまって本当にごめんね。


何度もべティーを思い浮かべては後悔を繰り返していた時、こちらに向かってくる足音が聞こえた。


また、自然と体が震えだした。


俯いているアタシの前で足音が止まった。心臓がこのまま破裂しそうなほど痛いくらいバクバクしている。


「ご苦労だったな」


誰かに話しかけている。


「いいよ~僕も面白かったからね」


聞いたことのある声も聞こえた。


「あとは任せろ」


「じゃあ、僕は帰るね~」


この会話から1人はずっとこの牢の側に居たようだった。


恐る恐る視線を上げて心臓が止まるかと思った。


「⋯⋯さて、始めようかビアンカ」


凍るような冷たい目で見下ろしていたのはクロイツ殿下だった。


終わった⋯⋯彼の表情を見てアタシは生きる希望を捨てた。


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