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~ビアンカ視点~
こんなはずではなかった。
どうしてこうなったの?
アタシはただ幸せになりたかっただけなのに・・・・・・
いいえ、確かに幸せだった頃もあったわ。初めて愛した人と結ばれた時。二人の愛の結晶であるベティーを授かった時。確かに幸せだった。
◇◇◇◇◇
アタシに不思議な力があると知ったのは、普段は優しく物静かなお母さんに叱られたから。
物心ついた時からアタシは特別だった。
だって、アタシがお願いすれば何だって思い通りになったから。みんながアタシの願いを叶えようとしてくれたわ。近所のおじさん、おばさん、お兄さん、お姉さん。歳の近い友達も。
だからそれはアタシがあまりにも愛らしいからみんなに好かれるのだと思っていた。
ある日、お母さんに『無闇にその力を使ってはダメよ』と叱られた。その力の意味も分からないアタシにお母さんは説明してくれた。
アタシは僅かだけれど魔力があるらしいこと。それも『魅了の力』だということ。『魅了』の意味すら分からず問えば、アタシの力は強いものではないけれど相手が好意的になってくれるものらしいと・・・・・・そこで理解した。だからみんながアタシがお願いをすれば叶えようとしてくれていたのだと。
その時にお母さんも『魅了』の魔力を持っていること。生まれた国では『魅了』の魔力を持っている者は監視されること、悪用すれば収容されること、それが恐ろしくて監視の目を掻い潜ってこの国に逃げてきたこと、見つかれば強制的に母国に連れて行かれることを・・・・・・もちろんこの国でその力を使ったことがないことも。
この話を聞いてから幼かったアタシが怖れたのは、この力が知られたら大好きな両親と引き離されることだった。
だからこの日から人にお願いすることをやめた。
◇◇◇◇◇
アタシは16歳になり恋をした。恋をした場所はアタシの住んでいる町にある平民が通う学校だった。
一目惚れだった。
でも、彼には結婚の約束をしている女がいた。美人でも特別可愛いわけでもない、どこにでもいる平凡な女だった。・・・・・・アタシなら奪えると思った。
だから、その日から彼に必死にアピールしたわ。彼にはアタシの方が相応しいと、平凡な女よりどれだけアタシの方が魅力的か。
でも、どんなに頑張っても彼はアタシを選んでくれなかった。それどころか避けられるようになった。それでも諦められなかった。
だって欲しい人が目の前に居れば手に入れたくなるのは仕方のないことでしょう?
・・・・・・だから使った。
彼が1人になるタイミングを狙った。突然現れたアタシを避けようとする彼に無理やり抱きついて言った。
『お願い。アタシを見て。アタシを好きになって。アタシを愛して』
この日から彼はアタシだけを見てくれるようになった。
急に態度が変わった彼に捨てられたあの女が、柱の陰で泣いているのを見ても悪いとは思わなかった。
だってアタシは特別なのだから。
こうしてアタシは愛する人と結ばれた。
でもべティーを産んでから力が弱くなったことに気付いた。
いえ、気付かされたのよ。その証拠にアタシを愛していると言った口で罵声を浴びせ、アタシを抱いた手で頬を叩いた。アタシを熱く見つめていた瞳は憎悪と嫌悪で血走っていた。『すべて覚えているぞ。お前は最低の女だな!次に俺の前に現れたら殺すぞ!』
そう言って彼は出て行った。
すべてが一瞬だった。言い訳をすることも、引き止めることも出来なかった。
それでも2人の愛の結晶のべティーがいれば彼が帰ってくると思った。
でも何日待っても彼が戻ってくることはなかった。
そのうち彼があの女のところに戻ったことが噂話から耳に入った。
そしてもう一つの噂・・・・・・アタシが彼を洗脳していただとか、操っていただとか・・・・・・アタシは怖くなった。このままこの町に居たら、噂はどんどん広がり、そのうちお母さんの母国の人に見つかってしまうのではないだろうかと。
だから逃げた。小さな町よりも人口の多い王都の街へべティーを連れて逃げたのよ。
王都の街はそれまで住んでいた町とは何もかもが違った。
アタシと同じ平民でさえ身綺麗で洗練されているように見えた。そこでべティーと2人、生きていく為に仕事を探した。運良くすぐに仕事は見つかった。そこは子持ちの女性も働いていて、その間は子供の面倒まで見てくれる良心的な大きな商会だった。
その商会には貴族も買い物に来るけれど、商品を貴族の住む邸に届けることもあった。
立派な門を潜ると、そこは別世界だった。
何度か商品を届けるうちに欲が出てきた。欲というより願望だったのかもしれない。
アタシも大きな屋敷に住みたい。貴族のように綺麗なドレスで着飾りたい。豪華で美味しい食事がしたい。ふかふかのベッドで眠りたい。あげればキリがない。
だから探した。アタシのお願いを聞いてくれる都合のいい貴族の男を・・・・・・独身じゃなくてもいい。
もちろん『魅了』の力がどの程度まだ残っているか、同じ職場の男で試してからよ。
休憩時間にも休日にも貴族の男を探して歩いた。
そして見つけた。




