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何年も前から思っていたけれど目の前で長い足を組んで優雅にお茶を飲んでいる彼は 王太子だよね? 仕事は腐るほどあるよね?
何故かマシェリア王国に戻って来てから週に一度は王宮に呼ばれて・・・・・・いいえ違うわね。強引にクロイツ殿下に付き合わされていた。
・・・・・・王太子で、次期国王が確定していて、頭脳明晰で、長身で細身の割りに服の下はギュッと引き締められた硬い筋肉が隠されていて、顔もピカイチで超絶美形。
認めたくはないけれど最高の男だと思う。令嬢たちに大人気なのも頷ける。・・・・・・性格は最悪だけどね! 外面がいいから皆んな見た目に騙されている! と、大声で叫びたい!
まあ、性格は置いといて、私よりも8歳年上のクロイツ殿下は現在25歳だ。結婚していてもおかしくない。それどころか子供がいてもいい年齢だ。
これだけモテているのに、この歳まで浮いた話を聞いたことがない。女嫌いなら私とも会わないだろうし、他に何か理由があるのだろうか?
「なんだよ」
「な、何でもない!」
「プッ、俺の顔に見惚れていたのか?」
「そんなわけないでしょ! 自意識過剰よ!」
確かに顔がいいのは認めるけれど、やっぱり性格が残念なのよね。その辺が婚約者が出来ない理由なんじゃないだろうか? さすがに本人に聞くのも何だかな~
「言いたいことがあるならハッキリ言えばいい」
この際だから聞いてもいいかも。
でもその前に確認は怠らない。
ここに通うことになったのも、4歳の私相手に不敬だなんだとクロイツ殿下が言い出したからなんだよね。
「・・・・・・不敬だと言わない?」
「ああ、何を言っても罪には問わない」
部屋の端で壁化している侍従と侍女の方を見ると頷かれたのでクロイツ殿下が怒りだしたら証人になってもらおう。
「失礼を承知で聞きますけど」
「なんだ?」
「クロイツ殿下っていつになったら結婚するの? 性格に問題があるから相手が見つからないの?」
「・・・・・・本当に失礼なやつだな」
「違うの?」
「当たり前だ! 完壁王子の俺だぞ? 国内だけでなく他国からも婚姻の申し込みが殺到している。お前と違って引く手あまたってやつだな。プッ」
ぐぐぐぐぐぐ~
このバカにした言い方!
私だってギリアン殿下から婚約の話が上がった・・・・・・だけ。で申し込みはないわね。
「わ、私だってそのうち素敵な人と婚約するわよ!・・・・・・たぶん」
「そっか~頑張れよ。プッ」
く~悔しい!
「・・・・・・レイドリックなんかいいんじゃないか?」
「レイ? だめだめ。前に彼が友人たちと話しているのを聞いたことがあるの。その時に私は愛人か妾だなって言っていたもの。女として見られていないのね。まあ、お互い様だけどね」
「はあ? 愛人? 妾?」
なんでクロイツ殿下が怒るの?
「ふふっ私とレイはただの幼馴染みよ? それだって冗談で言っただけでしょ」
結局、帰る時間になるまでクロイツ殿下の機嫌が直ることはなかった。
クロイツ殿下にとって私なんて暇潰しの相手か、年の離れた妹のような存在でしょう? レイの冗談なんだから軽く流してよ。
~レイドリック(レイ)視点~
俺が5歳になった頃、王宮で5歳から15歳までの子息子女を集めたお茶会に招待された。
初めての公式の場に最初は緊張していたものの、もともと人見知りするような性格でもない俺は、すぐにその場にも慣れ同年代の輪の中に入ることが出来た。
そこへ5歳の俺から見ても整った顔立ちの少年2人に左右の手を繋がれた、とても5歳には見えない小さな女の子が現れた。
保護者と子供ばかりが集まった会場は騒がしかったが、この3人の登場にいっきに静まり返った。
年齢など関係なくこの場にいる皆の視線が3人に集まった。
その視線に小さな女の子が怯えたように見えた。
不安そうな女の子から目が離せなくなった俺は、ずっと目で追っていた。そのうち場の雰囲気に慣れたのか、その子は笑顔を見せるようになった。
その後、滑り台が気に入ったのか何度も並んではしゃいでいた。その行動すら可愛らしくて俺は女の子にくぎ付けになった。
そのうち年上の令嬢たちに声をかけられて、その子は連れて行かれた。
何故か気になってあとを着いて行った。
少し距離を置いて陰からこっそり覗くと、女の子は令嬢たちの集団に囲まれていた。そして令嬢たちの中の一人に肩を押され後ろにひっくり返った。
"あんな小さな子相手に!"助けに行こうと足を踏み出そうとしたが躊躇してしまった。令嬢とはいえ俺よりも背が高く力だって強いはず、と情けないことにビビってしまった。
女の子の方を見ると今度は足で蹴られていた・・・・・・それも二度、三度と! ビビっている場合じゃない! 怯えて震えている女の子は今にも泣き出しそうじゃないか! 俺が助けてやる! と意気込んだものの『リリーシア!』と叫んで現れたのは先程挨拶をした王太子殿下だった。
殿下はすぐにリリーシアと呼ばれた女の子を抱き上げ、令嬢たちを睨んでいた。
『うぅ~・・・・・・く、くろいちゅ~』
ああ、泣いてしまった。
『くろいちゅ~。うわ~ん・・・・・・』
もっと早く俺が動けていれば、『リリーシア』が痛い思いも、怖い思いもすることがなかったのに。
『リリーシア』の背中を撫でるクロイツ殿下の手が慣れた手つきなのは気になったが、泣き声に引き寄せられるように大人たちも集まってきた。
『リリーシア』の祖母と兄たちも慌てて来た。
言い訳をしようとする令嬢をクロイツ殿下は冷たい声で彼女たちを黙らせた
その間も『リリーシア』を安心させるように背中を撫でていた。
『ご、ご・・・・・・ごめんしゃい。あ、ありあとぉぉぉぉ~。ヒッヒック』
何も悪くない『リリーシア』が謝るのが痛々しくて、一歩を踏み出せなかった自分が情けなくて、許せなくて・・・・・・
殿下に抱かれたままその場を去る後ろ姿を見つめながら決心した。俺は『リリーシア』を守れるぐらい強くなると。
次に俺がリリーシアと会えたのはお茶会からすぐで、王宮の騎士団の練習場に参加した時だった。




