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やっぱり女ってすることが陰険よね。
あの生ゴミを机に入れられた日に、ギリアン殿下との婚約はないとハッキリとクラスメイトには宣言した。
私の予定ではクラスメイトの口から他クラスの生徒にも伝わり、嫉妬や妬みからの嫌がらせは終わるだろうと思っていた。
でもね、ムカつくことに嫌がらせはしばらく続いた。
それの原因だって分かっている。何を考えてるのかギリアン殿下が否定も肯定もしないからだ。
それがまたかわいいイタズラ程度なんだわ。例えると、机を泥で汚されている。ロッカーに入れていた体操着が破かれていた。移動教室の間に教科書とノートに落書きされていた。
この程度なのだ。私としては別に気にすることはなかった。まあ、彼女たちも学院内で公爵令嬢相手に目立つ嫌がらせはヤバいと理解していただろうからね。
もちろん数回は現場を押さえた。
小さいイタズラ程度とはいえ、何人かの女生徒は処罰を受けることになった。私的には厳重注意で終わらせてよかったんだけど彼女たちは運が悪かった。
あの話し合った日から、お父様との距離が近づいたんだよね。そこからのお父様は私に対して惜しみない愛情を前面に出して溺愛してくるのだ。そのお父様にそのことが知られてしまったのだ。お父様からしたら、愛する娘が虐めにあっていると大袈裟に判断したようで大激怒!
その結果、学院で彼女たちの姿を見ることはなくなった。
ま、まあ? やり過ぎ感は否めないけれど自業自得ともいえる。彼女たちだって貴族だからね。分かっていただろうに・・・・・・格上の令嬢に嫌がらせなんかしたらバレたらタダでは済まないってね。
それからは別の噂が広がって私に近づいてくる者は居なくなった。
『傍若無人で我儘な令嬢』
『親の権力を使う傲慢な令嬢』
『怒らせたら命まで奪う令嬢』
なんでよ! コレじゃあ本当に悪役令嬢みたいじゃない!
この噂のお陰で、しっかり嫌がらせは収まったけれどね。リズベットとミカエルには大笑いされ、マリエルとレイには同情された。
そんなこんなで、モヤモヤした気分のまま夏季休暇に入った。
二ヶ月もある長い休暇を利用して、予定通り私たちはマシェリア王国に帰省することになった。多少お父様には駄々を捏ねられたけれど、そこは上手く言いくるめて振り切った。
マシェリア王国へは馬車で1週間ほどかかる。今回はミカエルも一緒に帰ると言うので、同じ馬車に5人が乗っている。
流石と言うべきか、ミラドール公爵家の馬車。5人が乗っても余裕がある。もちろん長時間乗ってもお尻が痛くならない高級馬車だ。侍女や侍従用と荷物の乗った馬車、あわせて3台の馬車での移動だ。護衛は控えめだけどしっかりいる。
幼い頃から付き合いのある5人での旅行だからか、あっという間に国境を越えた。もうすぐそれぞれの邸のある王都に入るというところで突然馬車が止められた。
えっと・・・・・・暇なのかな? うん、暇なんだよね?
突然馬車が止まっても、襲われている音も雰囲気もなかったからねそんな気はしたんだよ。
「おかえり。皆んな元気だったかい?」
失礼にもノックもなくドアを開けたのは、見慣れた金髪にロイヤルブルーの瞳のクロイツ殿下だった。相変わらず胡散臭そうな笑顔だ。
そっとリズベットが席を立ち向かい側に移動するものだから、馬車に乗り込んできたクロイツ殿下は当たり前のように私の隣に座った。
「そう言えばお前たちにはまだ婚約者がいなかったな? いい人は見つかったか?」
「ん~リリーシア姉様とギリアン殿下に婚約の話があったよ~」
「ミカエル、それはもう話はついているわ」
「・・・・・・へぇ」
こんな話を聞かせたら『振られたのか』ってクロイツ殿下にまた揶揄われるからやめてよ。
って、あれ? 何も言ってこない。いつもなら笑い飛ばすか、馬鹿にするのにと思いクロイツ殿下の方を向くと、笑顔だけど目が笑っていないような・・・・・・てか怖い。
「わたくしも残念ですがそのような方には巡り会っておりませんわ」
この雰囲気を変えてくれてありがとうリズベット!
「わ、わたしもです」
「お、俺は・・・・・・いません」
ほら~マリエルとレイも怖がっているじゃない。
「だからね~ 僕がリリーシア姉様の婚約者に立候補したんだ~ でも即行でお断りされちゃった~ えへへっ」
ミカエルは通常通りね。もう、アンタは黙っていなさい。
「それでさ~ ギリアン兄上のせいでリリーシア姉様なんて女の子たちから意地悪されたんだよ~」
ミカエル! それを言うな!
「・・・・・・へぇ、それは解決したのか?」
ん? クロイツ殿下がレイに視線を向けた?
「うん! ミラドール公爵がね!」
「・・・・・・」
「でね! 今ではリリーシア姉様なんて悪役令嬢って呼ばれてて、皆から恐れられているんだよ~」
もうこの子イヤ! 馬車から引きずり下ろそうかしら?
「ぷっ」
このクロイツ殿下の『ぷっ』久しぶりに聞いたけれど何度聞いてもイラッとくるわね。
「悪役令嬢だって?」
「そうだよ~」
「ぷっこんなに可愛いのにな~」って、ニヤリと意地悪そうな顔で頭を撫でてきた。
うぐぐっ、これよこの顔! ムカつくけれど懐かしさすら感じてしまう。が、やっぱりイラッとする。
クロイツ殿下は今も私を子供扱いするのだ。
「相変わらず殿下とリリーシア姉様は仲がいいよね~ 僕ヤキモチをやいちゃうよ~」
本当に黙ってて!
マジでミカエルの口を縫いつけちゃおうかしら?
「俺はコイツがオムツをしている頃から面倒を見てやっているからな」
「んなわけないでしょ! クロイツ殿下と初めて会ったのは私が4歳の時よ! とっくにオムツは取れていたわ!」
リズベット? マリエル? なに笑っているのよ。レイ? 顔を背けても肩がプルプルしているわよ。
この休暇中にクロイツ殿下に何度付き合わされるんだろう? そう思うとため息が出ちゃう。
こんな感じのクロイツ殿下だけれど嫌いにはなれないんだよね。




