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最初からここに私の居場所はなかった  作者: kana


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「あら、もうお帰りになりますの?」



 振り向くとそこには笑顔のビアンカがいた。


 前回、公爵夫人だった頃も本人は上品に振る舞っているつもりだったようだけれど、生まれた時から公爵令嬢で王子妃教育を受けてきた私には、食べ方、歩き方、話し方、すべてが不完全で哀れにさえ見えた。


 いま、目の前に現れたビアンカは身に着けているドレスも宝石も二流・・・・・・いえ、三流。

 それも当然か・・・・・・平民から貴族夫人になったとはいえ、公爵家と伯爵家では彼女が自由にできる予算は確実に少ないはず。

 身の回りの世話をしてくれる侍女も多少レベルの差はあるだろう。


「べティーちゃん、()()()()にもお友達を紹介してくれないかしら?」


 まず、一番近くにいたリズベット、次にマリエルが自己紹介をした。

 ビアンカは手を握って目を見つめながら「べティーの味方になってあげてね」、「べティーを助けてあげてね」と、二人に同じことを言った。ただ、リズベットもマリエルも眉間に皺を寄せ返事はしなかった。


 そして私「リリーシア・ミラドールです」ビアンカは()()()()()に反応したように見えた。


「まあ!リリーシア()()は公爵令嬢ですのね!」


 ああ、リズベットとマリエルの家名を聞いても反応しなかったのは知らない家名だったからか。元平民のビアンカはマシェリア王国の高位貴族の名など知るはずもないか。


 私の手を握ってビアンカの瞳が薄い緑色から赤色に妖しく変わった気がした。

 そしてリズベットたちと同じことを言ったと同時に頭に痛みが走った。その瞬間、前回にも同じようなことがあったことを思い出した。

 そうだ、ビアンカは何度も同じことを私にしていた。その度に頭痛がして・・・・・・それで・・・・・・ビアンカが急に怒り出し突き飛ばされたり叩かれたりしたのだ。

 何でこんなことを忘れていたのかは疑問だけれど、間違いなくビアンカには何かしらの力がある。


 そしてビアンカはレイにもミカエルにも手を握り私たちと同じようなことを言った。一瞬だったけれど、顔を顰めたレイも私たちと同じように頭痛がしたんじゃないかしら?


 ますますビアンカが怪しいと感じた。


 でもミカエルだけはニコリと微笑んでいたのよね。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 あの後すぐに私たちは帰路に就いた。

 ミカエルは置いてきた。と言うかべティーが離さなかった。


 帰ってから確認すると、やはりリズベットたちも一瞬だが頭痛がしたらしい。



 やはりあれが洗脳や魅了のトリガーだったのか・・・・・・もしそうならなぜ私たちに効かなかったのか・・・・・・


 前回の記憶があるだとか、ビアンカに不思議な力があるだとか、突拍子のないことを話せるはずもなく、その日は悶々と考えて眠れない夜を明かすことになった。


ただ、悔しいけれどクロイツ殿下の意地の悪そうな顔が何度も浮かんだ。








「ねえ、ミカエル。貴方がドドラー嬢と一緒にいる時は学院では話しかけてこないでほしいの」


「え~何でぇ?」


 ミカエルはいつもと変わらず可愛く首を傾げるけれど幼い頃から付き合いのある私たちには通用しない。


 あの日ドドラー伯爵家に訪問してから、べティーと話すと頭痛がするようになった。

 それは、リズベットたちも同じようで、顔には出さないが内心はべティーを拒絶していることには気付いていた。

 やはりべティーにも妙な力が? と思ったが、それまで会話をしても異常が無かっただけに頭痛の原因がわからない。


「とにかく! あのお馬鹿令嬢といると気分が悪くなりますの!」


「わたしも彼女は苦手かな」


「はっきり言うが俺はあの女が嫌いだ! ベタベタ触ってくるし、媚びてくるし、まるで娼婦じゃないか!」


 一番の被害者はレイかもしれない。べティーが傍にいたらレイの太陽のように眩しい笑顔が消えてしまうのよね。


「わかった? 私たちは彼女が嫌いなの。ごめんねミカエルなら分かってくれるでしょう?」


「うん! わかった!」


 そう言って笑顔で去って行くミカエルの後ろ姿に残念な気持ちになった。だからといって、ミカエルと付き合いが無くなる訳ではない。

 私たちにとってミカエルは困ったちゃんではあるけれど、可愛い弟的存在なのは変わらないから・・・・・・

 ただ、あの子の傍にべティーさえ居なければ今まで通りなんだから・・・・・・






 と、寂しいとさえ感じていたのに、ミカエルは次の日には私たちと一緒のテーブルで昼食を摂っていた。


「面白そうな人だと思ってたんだけどな~ 期待外れだったよ。あの人は顔が良くて身分が高ければ誰でもいいんだよ」


 まあ、確かに・・・・・・ミカエルの実家は侯爵家だし、今お世話になっている母方の実家は公爵家。しかも伯母はこの国の王妃とくれば申し分のない身分だ。


「なんて言って離れましたの?」


「ん~正直に言ったよ。品位の欠片もない()鹿()は嫌いだって~」


 忘れてた。

 このミカエル、愛らしい笑顔でバッサリと相手を切り捨てる子だった。

 でも、不思議なのは彼の別れ方が上手いのか、切り捨てられた相手はミカエルを恨んだりしないんだよね。その代わり私たちがミカエルの振った相手に、睨まれたりしていたな。


「あらあら、皆さんあちらを見てくださいな」


 リズベットの視線の先には私たちを睨むべティーが・・・・・・そうそうこんな感じだったわ。


「やあ、君たちはいつも一緒だな。余程仲が良いんだな」


 また面倒な人が・・・・・・貴方は私たちに話し掛けてこないでよ!べティーの目の色が変わったじゃないの~


「ギリアン様ぁ~聞いてくださぃ~酷いんですよぉ~」


 なんて学習能力のない子だろう。べティーはギリアン殿下目掛けて走ってきた。

 が! いつものようにジョシュアに阻止され、そのまま引き摺られながら食堂から退場させられて行った。



 しらけた気分でべティーを目で追っていた私をギリアン殿下がじっと見ていたことに気付いていたのはレイだけだった。

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