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最初からここに私の居場所はなかった  作者: kana


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2


 もともとお父様とお母様の婚姻は、この国オーギュスト王国と大国マシェリア王国との友好を深めるための政略結婚だと誰かから聞いた。本来ならお母様は大切にされるはずだった。いえ、大切にされなければならない存在だった。


 例え、二人の間に愛がなかったとしても・・・・・・


 それが国のためでもあり、それが政略結婚というものだから。


 お父様は現国王陛下の弟。所謂王弟と言うやつだ。

 お母様はマシェリア王国の筆頭公爵家の令嬢だったそうだ。

 そして、お母様はマシェリア王国の現国王陛下の幼馴染みであり従兄妹だった・・・・・・




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 お父様はお母様を妻に迎える前から平民の恋人がいたらしい。それも相手は既婚者だった。

 政略結婚のために一度は別れさせられた2人だったけれど、再会してから焼け木杭に火が付いたのか、2人の愛が再び燃焼したらしい。


 義母は元夫と髪色も瞳の色も同じ黒髪に赤い瞳のべティーをお父様の子だと言い張り、信じたお父様は再会してすぐに国王陛下の反対を押し切って彼女を後妻に迎え入れた。


 (まあ、瞳の色はお父様と元夫も同じ赤い瞳だけど、赤髪のお父様と茶髪の義母から黒髪の娘が生まれるとは思えないけれどね)


 この時私は10歳。

 お母様が亡くなってから7年後だった。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 目を覚ましてからお母様の生家ガルシア公爵家に手紙を送った。

 私が4歳になる前に亡くなったお母様のお葬式の時に伯父様とは一度会っている。伯父様の輝くような金髪に透き通るようなロイヤルブルーの瞳はお母様と私と同じだった。

あの時、血の繋がりを感じたのよね。私はお父様と同じ色も顔立ちも似ているところが一つもなかったから・・・・・・


『困ったことがあれば何時でも言ってきなさい。辛いことがあれば直ぐに連絡してくるんだよ。必ず迎えに来るから』


 そう言ってお母様に似た笑顔で優しく私を抱きしめて帰国した。

 残念なことにまだこの時には1度目の記憶が戻っていなかった。処刑されて次に目覚めた時は4歳だったから・・・・・・


 知識は王子妃教育を受けた記憶もあり十分な教養もあるけれど、4歳の現在は手紙の内容はともかく文字を上手く書けない・・・・・・丁寧な文字を書こうにも指先がぐらぐらと揺れて安定しないのだ。

 それと、4歳の私は言葉も舌っ足らずだ。甘えているようでこれは少し恥ずかしい。が、あと一、二年もすれば普通に話せるようになるだろう。



 手紙の内容は"私を迎えに来て欲しい"と・・・・・・この言葉以外にはない。


 父親の愛人と愛人の娘のべティーが来る前に、父親を含む彼女たちとの縁を断ち切る! 逃げるなら今だ!


 当然、すぐに迎えに来てくれるとは思っていない。


 ギリアン殿下との婚約が結ばれたのはたしか7歳の頃だった。せめてそれまでには迎えに来てほしい。


 希望を込めて生まれた時から世話をしてくれている乳母のマリーに手紙を託した。






 伯父様に手紙を出してから2ヶ月が経ってもまだ返事は来ていない。もう一度書こうかと悩んでいるとマリーから伝えられた。


「リリーお嬢様、旦那様がお呼びです」


 ??? この時期にお父様に呼ばれた記憶はない。

 覚えていないだけかもと思いながら、お父様が待っているという執務室に乳母のマリーと共に向かった。


 部屋に入りお父様の座っている執務机の前に立っても、彼は私の顔すら見ようとしない。


「支度をしろ」


「あい?」


「陛下が話があるそうだ。マリー30分で()()()を見えるようにしろ」


()()()ね〜・・・・・・前回もこんな感じだったわ。


「・・・・・・承知いたしました」


 マリーに促され執務室から出た。

 結局部屋を出るまでお父様は一度も私を見ることはなかった。ああ、前回もそうだった。この人は私に一切関心などなかった。


「リリーお嬢様急ぎますよ。さあ貴女たちも手伝ってちょうだい」


陛下に謁見するというのに30分で支度など、幼女とはいえ普通では考えられない。父親にとっての私は気に掛ける必要もない存在らしい。


 揉みくちゃにされながら、なんとか30分で支度を終えたけれど、私の頭の中はあのギリアン殿下との婚約が結ばれるのではないかと嫌な想像でいっぱいだった。


 馬車に乗り込んでも、過去に経験した処刑の場が何度も頭の中で繰り返される。

 あの意地の悪いべティーの顔、ギリアン殿下の冷酷な目が・・・・・・


 大丈夫、大丈夫よ。

 まだこの歳では婚約は結ばれてないわ。そう自分に言い聞かせても不安は拭えなかった。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 王宮に着いて案内されたのは、謁見の間ではなく貴賓を招いた時などに使用する応接間だった。


 お父様に続いて応接間に入ると一番最初に目に入ったのは、優しい眼差しで私に手招きする伯父様だった。


「リリーシア久しいな」


 前回王子妃教育で培ったカーテシーで礼を取ろうとしてグラついた。頭が重いから仕方がないよね。気を取り直して続けて挨拶を述べようとすると陛下に遮られた。


「リリーシアはまだ4歳だったよな?」


「あ、あい」


 ぐぐぐぅ・・・・・・こ、この舌っ足らずが恥ずかしい。


 今の私は4歳だった。

・・・・・・ここは笑って誤魔化すしかないよね。


 えへへっこれで見逃して!


「はははっリリーシア。もう立派なレディだな」


「ぷっ」


 今の『ぷっ』の出所は、伯父様の隣に座っている金髪に鮮やかで深みのあるロイヤルブルーの瞳の・・・・・・少年から青年になる手前の年齢に見える。

 前回も会ったことは一度もないけれど、彼が誰なのかは予想がつく。

 マシェリア王国の王族によく現れる紫がかったロイヤルブルーの瞳。年齢的にマシェリア王国の王太子。クロイツ殿下だ。


 流石王族、この若さで威厳もある。

 見た目だけなら優しそうな雰囲気を纏いつつ、整った顔は女性に大変人気がありそうだ。

 でもな~こんな人に限って腹黒だったりするんだよね。


「挨拶はいいから私の隣に座りなさい」


 新しい玩具を見つけたような笑顔を私に向けるクロイツ殿下に嫌な予感がした。



 でも、この日の彼の提案が私の運命を変えた。


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