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結局、ギリアン殿下をエサに私を呼び出しただけだったようだ。
それに知っている話ばかりで時間の無駄とは言わないけれど、為になる話ではなかったわね。それにしても、ローレン殿下って性格変わった? 前回はもっとこう温かみがあったような?
まあ、彼も諦めるって言っていたし、私は自分が大切だから? 私の関係ないところでなら好きにしてって感じ。
でも、今になって伯父様と悔しいけれどクロイツ殿下には感謝ね。
あの時、後見人の伯父様の許可なく婚約者を作るな! って言ってくれたものね。
屋敷に帰ってくると、リズベットとマリエラもちょうど買い物から帰ってきたところで、のんびり三人でお茶をしている時になってレイを置いてきてしまったことに気付いた。ま、子供じゃないんだし大丈夫だよね!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
最近、ギリアン殿下に声を掛けられることが増えた。
内容としてはただの挨拶だったり、調子を聞かれたりと大したことはないんだけど、周りはそうは見ない。それと言うのもギリアン殿下にも私にも婚約者が居ないからだ。
それに王族と公爵令嬢。身分的にも申し分ない。だからか、あちらこちらから視線を向けられるのだ。なんならお近付きになろうと媚を売ろうと無駄に話しかけてくる者もいて、編入当初よりも周りが騒がしくなっている。
それに毎日のように邸にお茶会の招待状が届く。お断りの返事を書くのも疲れるのよね。
「鬱陶しいわね」
「リリーシアにその気がないことが分からないのかしら?」
リズベットは機嫌が悪そうだし、いつも優しいマリエルまで言葉に棘がある。
「お前に婚約者が出来たら静かになるんじゃないか?」
「はあ? そんな人いらないわよ」
いい加減なこと言うレイに少し苛立つ。
確かに特定の相手がいれば噂なんてすぐに無くなるとは思う。
でも、こう見えて私は公爵令嬢だ。少し騒がしいからって適当な相手を婚約者にしちゃうと、あとで面倒なことになるのは見えている。
ミラドール公爵家の婿に入りたい人なんて腐るほど居るだろうからね。
実際、婚約を結んだりしたら目の前にぶら下がった地位を手放す馬鹿は居ない。簡単に破棄をするにも解消をするにも無駄に労力が必要になる。
それに、この学院の生徒の中から選ぶことはギリアン殿下を含め絶対にない!
今が前回とは違うってことは頭では分かっている。
それでも前回、私の死を望んだ人たちを信用することも許すことも出来ないのだ。
「なら、僕が婚約者役を引き受けましょうか? 僕が相手なら誰も文句は言ってこられませんよ? どうですか? リリーシア嬢」
後ろから聞き覚えのある声に嫌な予感がするも振り向くと!!
「なんで貴方がここに居るのよ~!」
「えへっ、追い掛けて来ちゃった」
今、語尾にハートが付いていなかった?
「い、いや、追い掛けて来ちゃったって」
「だって~入学したらリリーシア姉様に会えるって楽しみにしていたのに居ないんだもん! この学院に編入したって聞いて急いで編入手続きをして来たんだよ?」
褒めて~っと、頭を下げるのは撫でて欲しいからなんだろうけれど・・・・・・癖で自然と手が伸びて撫でてしまった私は悪くない。リズベットとレイは呆れ顔だけど、ミカエルは嬉しそうだ。
簡単に説明すると彼は、マシェリア王国のバーンズ侯爵家の長男で、名前はミカエル・バーンズ。癖のある水色の髪は柔らかそうで、垂れた瞳は黄色でとっても可愛らしい見た目だ。彼もまた騎士団の練習に私たちとは一年遅れて入ってきた幼馴染み的存在だ。
私の何処に気に入る要素があったのか、その頃から懐かれている。
私たちも弟が出来たみたいで可愛がった。
それでも付き合いが長くなるにつれミカエルの性格? 本性? が、可愛いだけのものでないと気付いたのだ。
コテンと首を傾げるしぐさも可愛い。
上目遣いでお願いをしてくる姿も可愛い。
甘えて抱きついてくるのも可愛い。
だが! これはミカエルが己の武器を最大限利用した、すべて計算されつくした姿なのだ。
いや~コレを5、6歳の頃から本人が自覚して利用してるってどんな子供だよ! 末恐ろしい子! って、当時から思っていたけれど、さらに拍車がかかって私たちがオーギュスト王国に来る前には、年上のお姉様方には甘えて可愛がられ、同い年や年下の令嬢には見た目は王子様なものだから憧れられていた。
そんな男からしたら天国とも言える場所から、何故転入までしてこの国に来たのか・・・・・・
まさか! このオーギュスト王国でもチヤホヤされたいからか?
「違うからね!」
「まだ何も言っていないわよ」
「リリーシア姉様の考えていることなんてお見通しだよ! 顔に書いてあるもん!」
頬を膨らませてプンプンするのも可愛いのだが・・・・・・あざとい。
「ところでミカエルは何処に住んでいますの?」
「ん~王宮でもよかったんだけど、伯父様のところだよ」
そうなのだ。
ミカエルは王妃様の妹がマシェリア王国のバーンズ侯爵家に嫁いでいるから、この国に母親の実家がある。
王妃様はデミトリー公爵家の令嬢だったのだ。
ギリアン殿下とは母方のいとこってことだね。
それにしても、令嬢たちの黄色い悲鳴がうるさい。
居るはずのないミカエルの登場に、ここが食堂だってことがすっかり頭から抜けていた。
「やあ!ミカエル!」
「あ! ギリアン兄上~」
や・め・て~!
食堂にいる全生徒がここに集中しているじゃない! 貴方たち目立つのよ!
「ギリアン様ぁ~! あっ! その方を紹介してもらえませんかぁ~キャッ、可愛い~ぃ」
ほら! こんなチャンスを見逃すべティーじゃないのよ! そのクネクネした動きを止めなさい! き、気持ち悪いわ!
まあ、べティーはジョシュアに阻止されて近付けないようだけれど!




