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前回でも何度か見た光景が今も目の前で繰り広げられている。
馬車から降りて4人で校舎に向かっていたら、突然3人の男子生徒が現れた。
大体こんな時は近くにべティーがいるはずなんだけど・・・・・・と、辺りを見渡すと・・・・・・いた! 柱の陰からニヤニヤしながら覗いていた。
「君たち!べティーへの嫌がらせはやめろ!」
言葉も出ないとはこの事ね。べティーに踊らされた哀れな男たち。
「何とか言ったらどうなんだ!」
「べティーに謝れ!」
「ふぅ~、嫌がらせですって? 昨日マシェリア王国から編入してきたばかりのわたくしたちがいつ嫌がらせをしたと言うの?」
そう、この中には昨日の場面を見ていたクラスメイトたちも居たみたいね。
クラスメイトたちはべティーの取り巻きたちにシラケた視線を向けている。
「へ? 編入?」
「だ、だが! べティーがそう言っている!」
「ねえ、貴方たちは馬鹿なの? 昨日わたくしたちが馬車に乗って下校するところを見ていましたわよね? そして、今! 登校してきたばかりのわたくしたちが何時! 虐める時間がありますの? それに・・・・・・名前も名乗らない貴方たち? わたくしたちの名前をご存知?」
「え?」
「な、名前?」
「べ、べティーが・・・・・・お前たちだって」
「ええ! 知っていて当然ですよね? 名前すら知らずに虐めたなどと・・・・・・まずは自分の名を名乗りなさい! お世話になっているミラドール公爵に報告させていただきますわ」
「「ミラドール・・・・・・公爵?」」
「ええ、この子がリリーシア・ミラドール。ミラドール公爵家のご令嬢よ」
うわっ、この騒ぎに集まっていた野次馬たちの視線が私に向けられた・・・・・・
もう! 目立ちたくなかったのに~
これも全てべティーの嘘のせいだわ! 許すまじ! 今回は泣き寝入りなんてしないわよ。言いたいことは言うと決めていたんだから!
「ご紹介に与りました。リリーシア・ミラドールと申しますわ。それで、誰が誰を虐めていたと? ああ! 家名は存じ上げませんがべティー様でしたか? その方が私たちに虐められたと仰られたと? 本当に?」
「「「そ、そうで、す」」」
さっきまでの威勢はどこへやら。三人とも声も体も小さくなっている。ってことは、我が家よりも家格が低いってことね。まあ、わかってはいたけれどね。小物臭がぷんぷんしていたもの。
「べティー様本人はどちらに・・・・・・ああ! そちらの柱の陰から覗かれていますわね。どうぞご本人様に登場していただきましょう」
私に集まっていた視線が一斉にべティーに向けられた。
隠れてニヤニヤしていたべティーは、突然大勢の生徒たちに注目されて逃げることも出来ず、慌てているようだ。
縋るような目でべティーが周りを見渡してもどうせ助けてくれる人はいないわよ。
彼女の頭の中はこの場から逃れる言い訳でも考えているのでしょうからね。
「さあ、べティー様此方へどうぞ。私たちに虐められたと仰る貴女から説明していただけますか?」
「うふふっ面白くなってきたわね」
リズベットはやる気になってるわね。
「相変わらずリズベットはいい性格してるよ」
そんなリズベットにレイが呆れている。
「リズベットですから」
マリエルは納得しなくていいのよ。
「さあ、べティー様? 早くこちらへ。どうしました? 貴女が説明して下さらないと彼らが困ったことになりますわよ?」
私たちに言い掛かりをつけてきた彼らは、当然多少の処罰を受けることになる。だって私、公爵令嬢だもん! 国は違えどリズベットだって侯爵令嬢だし、マリエルも辺境伯令嬢だよ。ただで済むわけないじゃん。
オロオロしているだけで動こうとしないべティーにリズベットはしびれを切らしたようだ。
「早く来なさい!」
ビクリと肩を跳ねさせたべティーに追い討ちをかけようとしたところで・・・・・・
「ここで何をしているのだ? 何があった?」
ギリアン殿下の登場だ。
「エ~ン、ギリアン様ぁ~」
助けが来たとばかりにべティーは涙を流しギリアン殿下に向かって走り出した(凄いな、さっきまではオロオロするだけで泣き出す気配もなかったのに自由自在に泣けるんだ)。
そして、抱き着こうとして阻止された。
阻止したのは前回べティーの腰巾着で、私を目の敵にしていたジョシュア・ルーデル伯爵子息。騎士団長の息子だけあって鍛えてるからゴツイ体格をしている。
その彼がべティーを止めて、冷たい視線をべティーに向けたまま腕を捻りあげている。もちろん軽くでしょうけれど。
痛い! 離して! 違うの! 話を聞いて! と繰り返すべティーの声がうるさい。ま、誰も相手をしないけれどね!
それより前回と目の前のジョシュアが同一人物だとはとても思えない。だって彼はべティーの嘘を信じ、私を断頭台まで引き摺って行った人だから。
それが今は何? 鋭い目つきでべティーを見下ろしている。
大体ギリアン殿下も、このジョシュアもそんな冷たい目をべティーに一度も向けたことはなかった。それはいつも私に向けられものだった。
彼らはいつも甘く蕩けるような眼差しをべティーに向けていたことしか記憶にない。
・・・・・・やっぱり色々おかしい。
一つ目、ミラドール公爵家に義母とべティーが迎え入れられていないこと。
二つ目、私に全く関心のなかったお父様が、今回は優しいし、愛されているような気がする・・・・・・前回、甘えることも許されなかったからか、どう受け止めればいいのか分からないのよね。
4歳でお父様の元を離れる時は、態度も精神年齢も反抗期の子供のようだったお父様が、今は年齢に相応しい立派な大人になっていた。
三つ目、ギリアン殿下とジョシュアのべティーへの態度。もしかしたら前回とは違う態度を取っている腰巾着が他にも居るのかもしれない。でも、それは何で?
私が疑問を一つ一つ頭に浮かべている間に、リズベットがこの騒ぎの原因をギリアン殿下に説明を終えていた。
それに私を除く三人は自己紹介まで済ませてたいようで『早くお前もやれ』とレイに小さな声で催促された。
「はじめましてミラドール公爵が長女リリーシアと申します。以後お見知りおきを」
はぁ~心の中でため息を吐く。会わなくて済むなら二度と会いたくなかった。
今はどうあれ、前回の彼らはべティーの嘘を信じ私を殺したのだ。
「君がリリーシア? 僕のいとこの?」
「そうですわね。・・・・・・あとはお任せしてもよろしいでしょうか? このままでは初授業に遅れてしまいます」
早くこの場から去りたい。同じ空気すら吸いたくない。てか、べティーをどうにかしろ! 二度と私たちに関わってこさせないで! ついでにギリアン殿下もジョシュアもね!
私はあの日々を忘れていないからね!
婚約者だった私に向けた嫌悪感を隠そうともしない軽蔑した眼差し・・・・・・向けられた者の身にもなってみろ!
それから! 今も騒いでいるべティーを静かにさせろ!
ギリアン殿下の返事を聞く前に礼を執って背を向けた。視線でリズベットたちを促す。彼女たちも小さく頷いて、失礼にならない程度の礼を執って付いてきてくれた。
だからギリアン殿下が呟いた声を聞くことはなかった。
『あの子が僕の婚約者になるはずだった子なのか・・・・・・』
いつも誤字報告ありがとうございます。
とても助かっていますm(_ _)m




