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最初からここに私の居場所はなかった  作者: kana


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~リズベット視点~




 リリーシアは私とは騎士団の練習場で出会ったの。同じ4歳とは思えないくらい小柄で可愛くて元気だった。


 わたくしが騎士団の幼児部に参加したのは、わたくしを生んだ女が『いざとなったら自分の身は自分で守れるようになりなさい』と言って、強引に通わせるようになったから。今となっては、それだけは感謝しているわ。




 ()()()はいつも男の人が傍に居ないとダメな人だった。

 気に入った相手を当然とでもいうように手に入れる。

 見た目だけなら年齢よりも若く、可愛らしい人だった。


 甘い言葉を囁いてくれる人。

 抱きしめて温もりを与えてくれる人。


 わたくしは自分の母親がお父様以外の男の人に甘え、愛を囁かれ、抱きしめられ、高価な宝石を強請る姿を見せられていたわ。

 幼くても母親のそんな姿を嫌悪していたわ。

 だから、5歳の拙い言葉でソレをお父様に教えた。


 わたくしの言葉を信じてくれたお父様に、浮気現場を押さえられ、わたくしの将来のためだとか言い訳をしていたけれど、そんな姿を娘に見せてきたこと自体が異常だと離婚を迫られた。

 泣いてお父様に『愛しているのは貴方だけ』『寂しかったの』と縋る姿はみっともなく、さらに嫌悪したわ。

 お父様は遊んでいて邸に帰れない日が多かった訳では無い。お父様は騎士団長として国や民を守るために寝る間を惜しんで働いていただけ。そんな父をわたくしは幼いながらも尊敬していたわ。


 お父様から二度と娘に会わないなら慰謝料の請求はしないと伝えられると喜んで出て行った。


 あの人は母親でいることよりも、女でいることを選んだ。そんな人がわたくしの母親。



 あの人が去っても寂しくはなかった。それどころか、二度と会うことがないことに安心したわ。それに、わたくしにはリリーシアも、マリエルも居たから、寂しいなんて思うことすらなかったわ。






 ずっと一緒にいたリリーシアから帰国すると聞いた時には寂しいというより心配したわ。

 だって、4歳で知り合ってから一度もリリーシアからオーギュスト王国のことも、ミラドール公爵(父親)のことも聞いたことがなかったから。

 大体、4歳で親元を離れてから一度も帰らないなんて、何か理由があると思うのが普通でしょう? そんなリリーシアが心配だった。

 だから、マリエルと相談してついて行くことにしたの。いつの間にかレイまで加わっていたのは・・・・・・クロイツ殿下が関係していると思う。リリーシアがクロイツ殿下のお気に入りだというのは、マリェリア王国の貴族なら誰もが知っているわ。

気付いていないのは鈍感なリリーシアだけ。






 初めて会ったリリーシアのお父様。ミラドール公爵は見た目も中身もとても素敵な方だった。

わたくし達三人を快く迎えてくれ、リリーシアと仲良くしてくれてありがとうって言ってくれたわ。


 ミラドール公爵が10年以上離れて暮らしていたリリーシアをとても愛していることは彼の言動から、わたくし達にも伝わってきたわ。


 リリーシアのぎこちない態度も少しずつ緩和してきた頃、編入先の学院に初登校した。


 素敵な学院でこれからの学生生活にワクワクしたわ。

 あの人を思い起こさせる声を聞くまでは・・・・・・


『べティー』あの人に似たわたくしの大嫌いなタイプの女だった。

 媚びた声も、甘えた声も、上目遣いもあの人のようで気持ちが悪かった。だってあきらかに演技だったし、本来のあの子は相当気が強い性格だと思うわ。きっと恥をかかされた相手に泣き寝入りなんてしないはずよ。


 面白い! 返り討ちにしてあげるわ!





 結局、リリーシアに手を引かれその場を去ることになったけれど、気になったのは『べティー』よりも『ギリアン殿下』のリリーシアへ向けた熱を帯びた瞳だった。あれが一目惚れってやつかしら?


 編入早々、騒がしくなりそうな予感。





◇◇◇◇◇




 帰ってきた私たちは着替えてから何時ものように談話室に集まった。


「演技女と馬鹿男たちを見ていたら黙っていられなかったのよね」


 ああ~ 終わった・・・・・・

 !!

 いや、待てよ。

 べティーが絡むとしたら恥をかかせられたリズベットよね? 私、大丈夫じゃね? ・・・・・・ダメダメ! 自分さえ良ければいい! なんてこんな考えはダメよ。リズベットは大切で大好きな友達だもの。


「でもあの人睨んでいたわよ」


 そうなのよ! それが心配なのよ! きっと何か仕掛けてくるはずよ。


「ああ、気を付けろよリズベット。あの様子じゃあ恨まれてんじゃないか?」


「それならそれで面白いじゃない。彼女が何をしてこようが、わたくしが返り討ちにしてさしあげるわ。ふふふっ」


 リズベットがわくわく楽しそうに見えるのは気の所為だよね。まあ確かにリズベットはべティーのように色目を使って男を利用する人が嫌いだものね。それはリズベットが育った家庭環境が原因だ。


 彼女の母親は夫が留守の間に何人もの男を邸に連れ込み関係をもっていたらしい。男に高価なものを強請り、撓垂れ掛かっている姿を幼いリズベットに見せていたそうだ。

 いざ夫にバレた時には『リズベットが将来男を上手く利用出来る子になってもらうために、わたくしが実践して教育していただけよ』とか、巫山戯た寝言を言って追い出されるところまで見ていたそうだ。まあ、どんなもっともらしい理由を言ってもただの浮気だからね。

 だから母親に似た行動をする人が男も女も関係なくリズベットは嫌いだし軽蔑している。

 それには私も同感だ。


 今日はべティーに嫌いな母親が重なったんだと思う。実際、べティーは嫌いな人や邪魔な人を、周りを味方につけ簡単に陥れ排除する。それに対して彼女には罪悪感がない。だからこそ、べティーが怖い。




 べティーとギリアン殿下よりも一学年下の私が前回入学した時には、既に二人は恋人同士だった。人目もはばからずイチャイチャしていたしね!


 それがどうよ! ギリアン殿下は冷たい態度でべティーを拒絶していた。


 まあ、ギリアン殿下の言っていたことは貴族としては間違っていない。

 さらに相手が王族ともなれば勝手に触れるなどという、罪に問われても仕方がない行動をべティーはしていた。前回はそれが()()だから許されていただけ。それだって私という婚約者が居なければの話。傍から見ればただの不貞。

 それなのに、断罪され殺されたのは婚約者だった私だった・・・・・・


 べティーの取り巻きたちの顔ぶれは前回と変わっていなかった。

 前回と今回の違いはギリアン殿下の言動。


 べティーが『魅了』の力を持っているかもしれない・・・・・・なんてのは私の勝手な憶測だったかも。

 そんな力を持っていたとしたらギリアン殿下はとっくにべティーに夢中になっていたはずだものね。


 彼女たちに関わるつもりはなかったけれど、リズベットに何か仕掛けてくるようなら、そうも言ってられない。


『魅了』どうこうは距離を取りながら要観察ね。


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