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第1章:始まり‐1入学の朝

ピピピピ…ピピピピ…

室内に電子音が鳴り響く。

ピピピピ…ピピピピ…

目覚まし時計が朝のまどろみから意識を引きずり出そうと忠実に、与えられた使命(設定)を全うしようと奮起する。

ピピピピ…ピピピピ…

しかし、彼の主は彼を存在否定するかのように眠りこけている。

ピピピピ…ピピピピ…

「うが〜」

ガチっと、主の暴挙によって彼は志し半ばにその使命を終えた。彼の主が目を覚ましたのはそれから四十分たった後だった。



「あ〜、もうこんな時間か」

レンは面倒臭そうに起きあがり、一つ伸びをしてゆっくりと朝の支度を始めだした。

買ったばかりの新しい制服に着替え、洗面所に向かう。

洗面所の鏡に映るレンの姿は、彼を知らない人が見れば間違いなく美形に位置する整った顔立ちをしている。実際、初対面の女の子にはモテる方だった。

線の細い少年で、艶の良い黒髪は所々が寝癖ではねていた。

彼は寝癖には目もくれず、歯磨きと洗顔だけ済ませると、鞄を持って玄関に向かう。

時刻は八時四十五分。

今日は入学式なので一年生のレンは九時までに学校にに着けばいいのだが、学校までは歩いて十五分はかかる。

「ぎりぎりだな」

まったく慌てた様子もなく一人呟く。

「かと言って、走るのは面倒臭いな…まぁ別に遅れてもいいか」

勝手な結論をだしてレンは玄関を出る。

ばれれば両親は怒るだろうが、今日は朝から仕事とかでいないので問題無い。

「義父さんも義母さんもうるさいんだよな〜」

ぼやきながらレンは通学路を進む。

レンの本当の両親は、彼が生まれてすぐに他界している。

レンは“魔力”があるということで、“魔術師”の家系である黒野家に養子として迎えられた。

そして当然のごとく“魔術師”として育てられてきたのである。

両親には感謝している。

だが、“魔術師”として育てられてきた事は、レンには苦痛でしかなかった。

義父も分かってはいた。

だが、子宝に恵まれず跡取りとなる者がいなかったので、どうしてもレンを“魔術師”にしたかったのだろう。

いい迷惑だ。

そのために小・中と“魔術”を学べる学校に通わされ、高校も“魔術師”と武道家の通う学校(名前…なんだったかな?)に行く事になった。




出発してすぐの所に一人の少女が立っていた。

こちらを物凄い形相で睨み付けている。

(あ、やばいかも)

とりあえず素通りしようと思ったが…

「こらー!クロ、今何時だと思ってるの!?」

彼女はそれを許してはくれなかった。

仕方なく立ち止まり、お隣りに住む幼なじみの“五十嵐 マオ”に淡々と答える。

「八時五十分ぐらい」

「私をどれだけ待たせる気!てか何を悠長に歩いてるのよ!?」

マオは怒鳴りながらレンの腕を掴んで走りだした。

マオはどちらかと言えば小柄な体型で、長くてさらさらした黒髪を背中に垂らし、左右で少し結んでいる。それが走る動作に合わせて跳ねている。

元気一杯の美少女で、気立てが良く、困っている人を放っておく事ができない性格の持ち主で、学校中で人気があった。

いつも学校をサボろうとするレンを家の前で待ち構えている。

マオは普通の家系の娘なのだが、幼少の頃突然“魔力”が目覚めたため、家庭内には“魔術師”がおらず、黒野家に師事していた。

そんなこともあり、小・中と同じ学校に通い、高校まで同じ学校に通うことになった。


マオのように急に“魔力”が目覚める者は決して少なくない。



かつてこの世界の人間は、異なる世界“魔界”から現れた“悪魔”と呼ばれる者達と戦争を繰り広げていた。“悪魔”は人間界を支配しようと攻め込み、人間たちはこれを阻止しようと戦った。

しかし、“悪魔”の奮う強大な力に人間達は対抗する術を持たなかった。

そうして、侵略されるしかないという状況まで追い込まれた時、人々の救いを求める心が一人の名も無き“神”を生み出した。

“神”はその力を以って“悪魔”を追い払い、人間界と“魔界”が繋がる“門”を閉じて封印を施した。

しかし、封印はいつか解ける。

その時のために“神”は人々に“神の力”を授けた。

現在、“神の力”は“悪魔”を滅ぼす術、“魔術”と呼ばれている。

“魔術師”は“神の力”を授かった人間達の末裔が、その力を発揮する事のできる者達の事を示す。

かつての人々は皆“神の力”を使う事ができたが、今ではその力の根源“魔力”が薄れて、“魔術師”も年々その数を減らしている。


“神の力”は人間全てに宿っているため、マオのように突然“魔力”が目覚めたりする人達がいる。

そして、“魔術師”の子孫は例外なく“魔力”を受け継いで産まれてくる。



なんとか学校に間に合った二人は急いで(急がされて)体育館に向かい、入学式を終え、割り当てられた教室に向かった。

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