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第1章:始まり‐2神代学園

レン達が通う“神代学園”は、年々減少する“魔術師”を育成する、魔術科。

“魔力”のない者も実戦で戦えるように育成する武術科。

この二つに分かれ、“悪魔”に対抗できる戦士を育成する事を目的に国が設立した教育機関のことで、このような教育機関が設立された理由は、日々弱まる“魔界の門”の封印が原因である。

封印が弱まったせいで“門”に小さな隙間が生じ、そこから“悪魔”が現れるようになってしまった。“悪魔”は無差別に人を襲う径行がある。

そのために人々は身を守る力と知識が必要になり、このような教育機関は多く設けられている。



レン達の割り当てられた教室は二人ともD組だった。

神代学園は少し変わったクラス制度を持っている。

一学年につき、生徒百二十人でAからDの四つのクラスに成績順で分かれていて、どのクラスも半分が魔術科の生徒でもう半分が武術科の生徒に分かれている。出席番号も成績順で、武術科は一から十五番、魔術科は十六から三十番に分かれいる。

このように分かれているのは定期的にクラス替えをするためで、神代学園は一学期ごとに成績でクラスを変更する。

神代学園は一年につき四学期間に分かれているから、計四回クラス替えをすることになる。


出席番号はレンが三十番、マオが二十九番だった。

つまり、一学年魔術科の下から一番と二番めだ。

どうゆう査定基準で分けているかは知らないが、マオはとても不満そうだ。

「結構自信あったのになー、てかなんでクロは私より下なの?」

「さ〜」

教室に着いてすぐレンの寝癖を直しながらマオは不満を漏らして問い掛けるが、レンからは気のない返事が返るだけだ。

マオは慣れた手つきで髪を直しながら溜息をもらす。レンはいつも朝起きたままの髪型で来るため見るに堪えられず、こうしてほぼ毎日マオが髪をセットしているため慣れてしまった。

「まさか、入学試験まで手抜きしたんじゃないでしょうね?」

レンは自分が興味のある事以外は全くやる気を出さないので、気になって聞いてみたのだが、

「うん」

案の定だった。

「落ちたかったんだけどね、受かっちゃった」

残念と心の底から嘆くレンにマオは呆れ返るしかなかった。

(本気でやればもっと上までいけるのに…)

それを口には出さない。今までの経験上、無意味だと分かっているからだ。


レンは物心がついた時にはすでに“魔術師”として無理矢理育てられていた。

その事はレンにとっては不満だったのだろう。

やりたくない事をやらされ続けた結果、レンは自分が興味のある事だけにしかやる気を出さなくなってしまった。

興味のある事といっても、ほとんど何に対しても興味がないため、やる気を出した所など見た事がなかった。

(…いや、一度だけあったか。まぁ興味とかの話しじゃないんだけど)

そんな昔の事を考えていると、段々教室が賑やかになってきた。

さっきまではほとんど生徒がいなかったのだが、段々集まってきたようだ。

生徒が集まるに連れて、視線(特に女子の)がこちらに…と言うよりレンに集まってきているような気がした。

と言うか、段々増えていっている。

(まぁ、見た目はいい感じだからね)

マオは幼なじみの気安さで普段あまり意識しないのだが、レンは異性から見ればかなり美形だ。

なので中学の時からかなりモテていた。

初めの内だけ。

レンは恋愛に興味がなかったために、寄ってくる女子を軽くあしらい続け、交際を求めてきてくれた子に対しても断り続けていた。

そのため皆諦めていき、寄ってくるのは新入生ばかりになったのだが、結果はどれも同じだった。


今はどうなのだろう?

高校生にもなったのだから異性に興味を持ち始めてもおかしくはないはずだが…

「ふぁ〜あ、眠た」

全く興味なさげだ。

女子達の好意の視線を軽く受け流している。

それどころか殺意のこもった男子の視線すら気ずいていない。

こちらは見られてもないのに視線が痛いというのに、いったいどういう神経をしているのか…

「あれ?」

急に視線の圧力が下がった気がして軽く辺りを見回すと、男子生徒が一人こちらに近づいて来ていた。


男子生徒がレンの前で立ち止る。

(でか…)

マオは男の外見に目を見張る。

男は推定百九十センチはくだらない長身でレンを見下ろしている。

体格はかなりいい。

金色に染めた髪を逆立て、耳にはいくつかピアスをしている。

どこからどう見ても不良だろう。

「…」

レンは黙って男を見上げている。

レンの身長は百七十センチ弱なのだが、この男と並んでいるとまるで大人と子供のように見える。

周りの声を漏れ聞くに、男はこのクラスの武術科の生徒で“橘 ハルト”というらしい。

橘は明らかに苛立った表情でレンを睨みつけている。

レンはよく、女子にモテる事に嫉妬した男連中に絡まれる事があった。

橘もその類いかもと、マオは今までの、こういう状況に出くわした時のレンの対応を思い出す。

……………

特に自分で何もしてなかった気がする。マオが注意したり、周りにいた女子が男子連中を非難したり、誰かが先生を呼んで来たりなど、とにかく自分では何もせずにやり過ごしていた。


だが今回は難しいかもしれない。

橘の醸し出す雰囲気に、マオも他の生徒も威圧されて動く事ができない。

教室中に張り詰めたような緊張感が膨れ上がる。

何かの拍子に爆発してしまうんじゃないかと思っていると、今まで黙っていたレンがそのきっかけ作ってしまった。

「何か用?」

周りの雰囲気に気付いていないのか、レンが呑気に用件を尋ねたのだ。

次の瞬間、いきなり橘が拳を突き出した。


「っつ!」

思わずマオは目を覆った。レンが殴り飛ばされるイメージがありありと浮かんでしまい、見ていられなかった。

「……………」

だが、予想していたような惨状が訪れた様子がない。

「………え?」

マオが恐る恐る目を開けると、目の前には拳を突き出した格好のままレンの顔の前に止めている橘の姿と、ボーっと拳を眺めるレンの姿があった。

いきなりの事にもレンは驚いた様子もなく、終始不動で佇んでいた。


「なんで何も抵抗しないんだ?」

その様子に橘の方が呆気にとられ口を開く。

「面倒だから」

「は?」

レンからの答がよほど以外だったのか、橘は口をポカンと開いて変なモノでも見たかのように呆然とレンを見下ろしている。

「だってどうせ避けられないし、防ぐのも痛そうだし、もしかしたら殴られないかもしれないだろ?」

……………………………

「はは…はっははははっ」

真顔でそんな事を言ってのけたレンに、橘は始め呆然としていたが、急に壊れたように腹を抱えて大笑いをし初めた。

周りの生徒達もその様子に緊張が解けたようで、皆二人の様子を見守っている。マオもなんとか状況を理解してレンの方を見遣る。

レンはなぜ笑われているのかが全く分からないのか、首を傾げて橘の様子を窺っている。

橘はだんだんと笑いが治まってきて、レンの方に向き直る。

「お前おもしれぇな、名前は?」

「…黒野 レン」

「俺は橘 ハルトだ。今の事は無かった事にしてくれや」

「分かった」

面倒臭そうに受け答えするレンに苦笑を漏らして橘は続ける。

「いや〜昨日の夜中はしゃぎ過ぎちゃってあんま寝てなくてさ、センコー来るまで寝てようと思ったのに女共がうるさくて、そしたらその原因がお前っぽいからどっかぶっ飛ばせば静かになるかなと思った訳よ」

「ふ〜ん」

橘の説明に一応納得がいった様子でレンは適当に相槌を打っている。

橘はよく喋る男のようで、その後もあまり聞いていないレンにお構いなく喋り続けていた。

マオも一安心して二人の様子を窺う。

橘は見かけより悪い奴ではなさそうだ。

今は身振り手振りを織り交ぜて、レンに何かを喋り続けている。その様子はなんだかとても楽しそうだ。

(クロはそんなことなさそうだけど)

苦笑しながらしばらく二人の様子を眺めていると、教室に教師らしき白衣の男が入って来た。

「はい、皆席に着いて」

ぞろぞろと生徒達が自分の席に着き始める。

レンたちも席に着いた。

橘はまだ話したりない様子でしぶしぶと席に戻っていった。

ほっと息をついて、レンも自分の席に座る。入って来た男は左手に白いチョークを持って黒板に何かを書き始めた。

カッカッカッと白チョークが黒板に書いたものは名前だった。

“柳 涼”

「柳リョウ。このクラスを受け持つ事になりました。よろしく」

やる気のない簡潔な自己紹介を済ませて、生徒達を見渡す。

柳は見た目三十歳前半くらいで、痩せた体型をしていて、顔は白いというより蒼白。

長くて艶の無い白髪の多い髪を後ろで束ねてぶら下げている。眠そうな目の下には薄くクマができていて、眼鏡がそれを大きく見せている。

全体的に不健康そうなイメージの男だ。

ボーっと生徒達を見渡し終わると、のろのろと出席簿に記入しだした。

席は三十席で、全部生徒が座っているので欠席はいない。書き終わると柳は口を開いた。

「それではまず、本校の班制度について説明します。班制度は今年から変更がありましたのでしっかり聞いてください」

神代学園は生徒達が出現した悪魔と戦うことがあり、その時には武術科の生徒と魔術科の生徒が班を組み、戦闘に臨むことになっている。

「まず、去年までは同じクラスの生徒達でバランスが良くなるように班を作っていましたが、今年からは学年全体で作ることになりました」

一息おいて全体に説明が伝わったか確認してから、次の説明を続ける。

「次に、班員は一学期ごとのクラス変えで変更されていましたが、固定になります」

もう一度、一息おいて説明を続ける。

「最後に、人数は去年までは六人でしたが、今年からは四人になります」

そこまで説明を終えると、真面目そうな生徒の一人が手をあげた。

「なんですか?」

柳が眠そうな目をその生徒に向けた。

「班員は具体的にどうやって決めるのですか?」

「あ〜そうですねぇ、説明がめんどうなので班員のリストを配ります。みれば大体分かると思いますので、呼ばれた人は取りに来てください。黒野さん。上杉さん…」

そう言って柳はプリントを配りだした。

半分の生徒がそれを取りに行く。呼ばれない生徒は呼ばれた生徒の誰かと同じ班のようで、皆名前を呼んだりしながら確認しあっている。

「マオは僕と同じ班みたいだよ」

プリントを受け取ったレンが、とぼとぼと自分の席に戻るついでに、前の席のマオにプリントを渡す。

「どれどれ」

レンからプリントを受け取る。そこには確かに、D組三十番“黒野 零 ”

二十九番“五十嵐 眞愛”と書かれていた。

他に二人。

A組一番“神楽釖哉”

二番“神楽 弥鞘 ”と書かれている。

この三人が自分の班員ということだ。

柳が見たら分かると言った意味が分かった。

A組の武術科一番、二番とD組の魔術科の下から一番、二番。

弱い魔術師と強い武術使が班を組む事になっているようだ。

当然、その逆もある。

「はい。皆席に戻って」

柳の指示通りに皆が席に戻ったのを確認してから、本日の予定の説明が始まった。

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