中編2
未界が世界にもたらしたのは、フォールズという脅威だけではなかった。それは、未界の森と東京のゲートの下にある巨木に実っている奇妙な紫色の果実だった。ミカンほどの大きさの未界の果実は、口にした女性にのみ特殊な能力――魔法を与える資源であり、一人の少女が口にして魔法を得たことにより、東京で生き残った人々を脱出に導いたことをきっかけにその資源の存在が知れ渡った。
彼女の魔法は物を爆発させる能力『ボム』でフォールズを殺すほどの力を持つという。更にその少女の魔法を研究したことで、彼女の能力の全てを把握した政府は、すぐに彼女の力を使って東京のフォールズの駆除に動き出した。その計画に自衛隊も参加したが、計画の主軸が当時18歳の少女ということに反対する意見もあった。それでも、政府は作戦を強行した。
何しろ、日本だけではなく世界中にカオスゲートが発生してフォールズの脅威に悩まされるという事態になったため、どの国も他国に頼ったり頼られたりすることができなくなったのだ。日本だけが被害に遭ったわけではない、ならば自国の力で対応するしかない、そのためにはどんな手段だろうと躊躇していられないのだ。
自衛隊と彼女の魔法をもってして、ハザードウォールの内部に突入し、フォールズの殲滅を試みた。彼女が魔法を使ってフォールズを退治し、自衛隊は護衛と援護に回るという戦法で戦った結果、少女も自衛隊もかなり苦労したが、首都にいたフォールズを全て退治することに成功した。その後、生存者の捜索及び、ゲートの真下にある巨木に実る紫色の果実の採取を始めた。生き残った生存者百数名を救出、20個の果実の採取に成功した。
政府としては、少女の話は半信半疑というものだったが、未界の果実が本当に特殊能力を与える力を持つなら、フォールズに対して非常に大きな価値を持っていることになるし、未界の産物という意味でも貴重な資源にもなるのだ。未界の果実を十分採取した自衛隊は、少女とともに採取した果実を首都の外に運び出すてめに行動を移した。だが準備の最中、ゲートから新たなフォールズが大量に降ってきて、少女と自衛隊は再び戦闘を開始した。
しかし、最初の戦いで体力を消耗しすぎた少女は思ったように戦えなかった。少女の限界が近いことを悟った自衛隊は、必要最低限の果実だけ運んで撤退した。だが、フォールズたちは自衛隊を逃がすまいと追いかけてきた。必死に撤退する自衛隊のために、少女は無理して魔法を使い、何とか大多数のフォールズを倒したが、少女は気を失ってしまう。やがて、切れ目に戻った自衛隊だが生き残っていたフォールズたちに追いつかれてしまった。
絶体絶命の中、一人の女子高生が未界の果実をその場で食べてフォールズたちに突っ込んでいった。その女性は、一瞬だけ体全体から光を放ち、フォールズたちに向かって右手の掌を向けた。すると、その掌から斬撃のようなものが放たれてフォールズたちを切り裂いていった。自衛隊、そして女性自身も驚いたが、女性はそのまま戦い続けて、何とかその場にいたフォールズたちを全て切り刻んだ。
一人の女子高生の機転によって、逆転した自衛隊。彼らは、魔法を得て人々を救った女子高生を称賛しながら歓声を上げた。女子高生は微笑みながら仲間たちの元に戻っていった。だが、そんな女子高生の胸からフォールズの爪が飛び出してきた。一体のフォールズが上半身だけになっていながら生きていたのだ。人々の悲鳴が響く中、女子高生は最後の力を振り絞って生き残りのフォールズにとどめを刺した。しかし、女子高生もその場で仲間たちに看取られながら息を引き取ってしまった。皮肉にも、この出来事が少女の語ったことが事実であることを証明した。
一人の勇敢な女子高生の死と引き換えに、東京の情報、生存者、未界の果実、そしてフォールズの残骸を入手した政府は、すぐにそれらをもとに研究を開始した。自衛隊の証言と彼らが記録した映像から、少女の話が事実だと証明されたため、未界の果実の研究を優先した。
様々な研究の末に、果実が地球上では確認されていない成分と特殊なエネルギーを持っていること、そして女性にのみ魔法を与えることが判明した。それも、十代の女性が最も効果があるということまで。だが、その成分とエネルギーも女性だけに力を与える理由も分からなかった。
食べた女性に特殊能力を与える効果を持つ未界の果実は、フォールズに対抗できる唯一の手段だが、政府はこれを活用していくことに迷いがあった。未界そのものに謎が多いが、その世界の果実にも分かっていないことが多いうえに得体が知れないという意見があり、活用そのものに反対という意見も少なくなかったのだ。しかし、他に手段が見つからないし、海外の情報でも有効手段が見つからないと聞いているため、政府はやむなく未界の果実の活用を決行した。
こうして、政府は批判されることを覚悟の上で多くの女性の希望者を募り、果実を食べて魔法を得てもらい、研究と実験を繰り返して、対落下生物討伐部隊、通称・討伐隊は編成されたのだ。魔法を用いるうえでの戦闘のスペシャリスト、隊員の全てが果実を食べて魔法を得た女性で構成された、自衛隊を上回る戦闘集団。この組織が編成されたことで、日本は世界で最初に、フォールズの脅威に抗うことができたのだ。そして同時に、未界の果実の有用性を示すことになり、今の世界を形成するきっかけになった。
後に、海外でも未知の世界落下生物駆除部隊(Unknown world falling organism extermination unit)、通称『UFE』というものが結成されたらしいが、日本国内で政府関係者以外は詳しい活躍を知ることはなかった。




