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俺。斬る

完全不定期更新です

 よく見えないが、ここではない別の国。

 そこの上流貴族として彼女は産まれたようだ。


 城に住み、周りには常に執事やメイドといった使用人が大勢いて、起床から就寝まで世話をされる。

 毎日の食事も豪華なものだ。

 俺と食べた屋台の山串など足元にも及ばない豪勢な料理や果物が、大理石の柱やシャンデリアで飾られたテーブルの上にこれでもかと言うくらい敷き詰められる。

 それらを器用な手つきで食べる様は、口元を拭き続けた姿とは似ても似つかない。

 ちなみに、彼女は勉強と舞踏会が苦手なようだ。

 家庭教師や指導の先生方、パーティに来た貴族から逃げては使用人達が忙しなく動き回っていた。

 それでも一貴族の娘らしく礼儀作法だけは完璧なように見える。

 言葉遣いも上手で、もしこの状態の彼女と出会っていれば会話だけで息が詰まっていたかもしれない。


 そんな彼女の人生が一変したのはいつ頃だろうか。

 彼女の感覚でいくと、突然のことだった。

 国の偉い人達が入ってきて部屋中を漁り始めたのだ。

 使用人達もどこかに消え、いつの間にか自分の居場所は忽然と消えて無くなっていた。

 俺の感覚でいえば、父親の失態やら借金やら、悪事なんかも公になったらしく自宅を直接調査され、それらが事実として認められたということか。

 そのせいで彼女の親は地位と名誉、財産なんかも全部無くなった。

 親がどうなったかなんて知らないが、兎も角、ここから彼女の「苦悩」と一言で片付けていいのか分からない……酷い人生が始まったと思う。



 あまり明言する気はない……というより、俺自身思い出したくもない体験だった。

 まず、女のとして、人としての尊厳人権が無くなる。

 次に足がなくなった。逃げられなくするためだそうだ。

 ああ。それでも湯浴みはできたかな。

 いや水ぶっかけられただけなんだけどさ。客に出すために最低限体を綺麗にしておかないといけないし。

 それと1日に何人相手にしたかなんて覚えられなかった。

 基本複数だったし、それに個人相手になると複数より内容が酷になって……思い出したくもない。


 飯は屋台の物より貧相……というよりゴミだ。

 排泄はそのまま、そこら辺で、基本全裸だったし羞恥心なんてとうになくしたな。

 身籠ったことも何度か。

 全部おろされたけど――


 女の機能がなくなったのは……いや、覚えてないな。

 確か焼けた鉄棒を刺すという変わった趣味の奴がいて、恐らくその時かな?


 まあ……なんだかんだあって、再び捨てられた。

 そりゃあもうゴミみたいにポイッと投げ出されたよ。

 貴族だった頃の名残はなにもない。

 そこら辺で転がってる家なしのような……は言い過ぎか、五体満足でやる気さえあれば金を稼げる分あいつらの方が恵まれてる。

 こっちの方がもっと醜い状態だしな。

 身につけているのは布付きれ1枚、歩く足はない。

 無一文で食生活も悪かったせいかまともに体を動かせない。

 体中には過度な趣向の痕が数え切れないほど刻まれている。

 と、まあこんなになっても生きてるのが人間というもので、そしてこんな状態でも生きることを止めないのが彼女の強さだった。


 そうして物乞いを始めること数日。

 といってもロクに喋れないし足もないから這って移動するしかない。

 そうすると、自ずと人は離れていった。

 しかし彼女は気にせず地を這う。

 幸いにも外の飯の方がマシな物が多い。白濁を飲むよりは、とそれで食いつないでいく。



 どこの世界でも同じようで、懸命に生きている奴には良いことが巡ってくるようで、転機は訪れた。

 ――もちろん悪い方向で。



 その日もいつも通り物乞いなんかしているとガラの悪い連中が彼女の眼の前で止まった。

 しゃがんでジロジロと見ると、厭らしい笑みを浮かべると二、三個と話をして彼女を担いでどこかに歩き出した。

 理由は、まあ、わかるだろう。

 足がなく粗末な服を着ていようと、彼女の顔はまだ美しいものだった。

 俺的にはよく数日も攫われずに済んだものだと感心するくらいだ。

 で、その後の展開は察しの通り。


 それでも以前と違ったところがあった。

 強姦、性的暴行、蹂躙、言い方は色々あれど今回は詰まるところソレだ。

 しかも囚われてるわけでもなく逃げれる可能性もある。

 そして彼女には生きる力があり、志も残っていた。

 だから、今回は抵抗を試みた。

 最初に事を行った時のように精一杯の抵抗をしてみたのだ。


 ……結果的に、それが悪かった。


 暴れた時に拳が一人の男の顔面に直撃。

 やったぜクリーンヒット、もう一回逃げられるドン。

 とは終わらないのが世の常というものでして、彼女の行動にたいしてガラの悪い連中はもう閑々。額に青筋なんか立てて怒鳴り散らしてきた。

 そのまま性的暴行からただの暴行へと切り替わった。


 それでも彼女の心は揺れなかった。

 何度殴られても眼だけはしっかりと開き、相手を捕らえ続けていた。

 暴行がさらに悪化する。


 俺なら最初の1、2発でギブアップしていたと思う。

 だというのに、彼女はひたすらそれに耐えていた。耐え続けた。

 ただ、耐えればそれで終わるほど、現実は甘くない。



 男の一人が大きな斧を持って奥から現れた。

 大体の察しはできる。

 彼女を殺そうとしている。

 わかる。

 ただ理解はできなかった。

 だって俺はただの傍観者で、この世界の人間ではないから。


 男が斧を振り上げた。



……



 次に目を開けた時には、既に地獄絵図が完成していた。


 その中心に立つのは、もちろん彼女だけだ。

 足に続き両腕を失くした彼女は発言した神多夢で手足の代わりとしていた。

 両腕足があるべき場所が鎌というのは、かなり奇妙な格好だと暢気なことを思った。

 彼女は鎌で器用に歩くと男達の存在を忘れたように歩き、部屋の端にあるテーブルへと向かう。

 その上に置いてあった金を持てる限り持ち、掛けられていたローブを羽織った。


 外に出ると、ちらちらと雪が降っていた。

 白い息を吐くと生きた心地がするのを感じる。

 まばらに積もった雪の中を彼女は器用に歩いていく。

 歩いている彼女の中で一つの考えが浮かんだ。



 ――復讐をしよう。



 今まで相手にした男達の顔は全部覚えている。

 何も知らない力もない女の子なら無理だったかもしれないが、今は力がある。

 この力を使って、憎いアイツ等を殺していこう。

 そのためにはまず自由な手足が必要だ。


 彼女は歩いていく。

 ただひたすらに、自分を傷つけた男達を殺すためだけに、歩く。

内容が暗いと言われ、明るく変更。

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