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俺。期限切れ

完全不定期更新です

 起きて顔を洗ってオスクラを起こし顔を拭かせ着替えさせる。

 今日の朝もそんな感じの始まりだった。


「今日も街の中歩いてくる」

「くれぐれも忘れないように、あと答えも出しておくようにね」

「わかってるよ」


 オスクラとは部屋で別れ今日も一人で街にくりだす。

 4日目でもやることは変わらず街の散策だ。

 でもいつもは人が賑わう表通りを行くのだが今回は人通りの少なそうな裏道を行くことにする。


「あーるーこーあーるーこー」


 ひたすら人気のない道を歩いていく。

 変なゴロツキやホームレスのおっちゃん達が見てくるが無視だ無視。

 ここなら神多夢を使ってもバレないだろうという考えのせいか、不思議と怖くはない。



 ここいらで危ないおじさん達から羽交い締めに会う美少女と遭遇。

 颯爽と助け出す俺。


「危ないところだった……怪我はないかいレディ」

「あ、貴方はいったい?」

「なに名乗るような者じゃないさ(キラッ)」

「キャッ、素敵抱いて!」


 そうやって見つめ合う二人は徐々に惹かれ合いキスを交わす。


「今夜は寝かせないぜ」と翌朝までナイトメアパーリィナイッ!

 全年齢対象ほのぼの牧場物語的なこの物語は美少女と遭遇した瞬間から18歳未満お断りのエロでグロ無しなB級エロ物語へと変貌するのさ。



「………」



 なんて上手い話があるわけもなく、事件も何もなく平々凡々に歩き回っていた。


 俺って異世界転生した最強系の主人公だったんじゃないの?

 もしかしてただ死んで転生しただけのモブキャラ?

 異世界の裏通りなんていうフラグの花畑を歩いていたらイベントCG埋まるようなイベントの1つや2つ起きるんじゃないの?

 いや確かに何もしてないけど普通エロいイベントまみれで、ラノベに例えると最初のページ開いた時から肌色万々歳というやつじゃなかったのか!


「……よそう。現実が小説に勝てないのは分かりきってるはずだ」


 まず美少女と一つ屋根の下、しかもベッドで夜を共に過ごしているのに何もしない時点で俺の気の小ささが目に見えている。

 そこを直さないと次のステップに踏めないだろうし夜の営みなんて以ての外だ。

 といっても前は童貞のまま30を超え魔法使いになってしまったのだから、今更女の人と仲良くしろという方が難しい。


「空から女の子が降ってきてくれたら早いんだけどなぁ……」


 天空の城から落ちてくる美少女と異世界から来たおっさんが出会う時、新たな物語が始まる!


「なんてこと起きない、カァッ!?」


 ドサッ。


 突然の背後から衝撃が走り前のめりに倒れた。

 思っ切り顔面を打ったせいで鼻が痛い。あと背中がやけに重い。

 顔を背中の方に向けると、そこには二つの髪が揺れる美少女が乗っていた。


「……なんのようだシュナイデン」

「見かけた。から。」


 俺の背中に乗っていたのはオスクラより無表情で死んだ魚の眼を持つ美少女ことシュナイデンだった。

 いつも通りの無表情で俺を見下ろすシュナイデンはある物を持っているらしく、それを俺の顔に押し付けてくる。


「ちょ、痛い痛い、待てまったく見えないからっ、まずは起こさせて!」

「じゃあ、ズボン。下ろす?」

「なんでもかんでもそっち方向に持っていくな!」


 30超えたオッサンより下ネタ発言をする女の子に退いてもらう。

 顔以外にダメージがないかチェックして無事なのを確認、その後シュナイデンが持っていた物を見ると、それは街に入る際に見たストラップで名は確かアヴィクル。

 そのキーチェーンゲームより安っぽい画面には「M」と表示されている。


「……それ誰の?」

「わたし。の、朝から光って、うるさい」


 たしかに五月蝿い。

 モスキート音みたいなのがずっと鳴っているし画面は赤く点滅している。

 明らかに俺が持っているアヴィクルとは別物になってた。

 しかもMってたしか……


「それ期限切れてるじゃねえか!」

「そう。」

「そう。じゃねえよ! このままだったら憲兵に捕まって終わりだぞ!」


 ワオなんて日だ。

 こんな厄介ごとに巻き込まれるんならオスクラみたく宿に篭っておけば良かった!


 頭を抱えていても音は鳴り止まず、何事かと人が集まってきている。

 急いでシュナイデンを小脇に抱え一気に表通りまで駆けた。

 その間、当の本人はオナモミのように肌にくっつくアヴィクルを鬱陶しそうに両手でくっつけあっている。


「どこ? いくの。」

「とりあえず門近くの憲兵とこ持っていく!」


 ひと蹴りで人混みを飛び越え、全力に近い速度で走っていく。

 剣を持ってきていなかったので神多夢は発動しないため完全に自分の力だけでの疾走なので、剣を持ってる時とは違って大分遅い。

 しかも小脇に女の子を抱えて走っているのだから疲労も溜まる溜まる。

 というか女の子を脇に運ぶ姿って誘拐に見られてないか不安になってきた。


 走っていても門までは数十分はかかる。なので度々短剣に触れ神多夢を発動させながら進んで行く。

 神多夢のおかげか相当早い時間に着くことができた。

 急いで憲兵の元へシュナイデンとアヴィクルを連れて行くと、キツい目線が突き刺さる。


「こんな朝っぱらから何事だ」


 明らかに不機嫌そうな顔をしたおっさん憲兵が前に出る。

 そいつにシュナイデンを突き出し手についているアヴィクルを見せた。


「あの、こいつのアヴィクルが期限切れたみたいなんです」

「そうか。なら早くこの街から出て行け」


 もっと怒られるかと思ったがおっさんはすぐ踵を返して戻って行く。

 胸を撫で下ろし、ぞんざいな仕事に感謝しつつシュナイデンを門まで連れて行こうとすると


「……いや。」

「いやって……なんでだよ」


 今まで黙っていたシュナイデンが唐突に拒絶し俺から離れようとしない。

 女の子特有の感触に鼻の下が伸びるが、なんとか引き離す。

 仕事態度が酷くとも彼らも仕事だ。このままでいたら流石に捕まったりするかもしれない。それか最初に言っていた通り罰金だろうか。

 どっちみち巻き添えは嫌だし、放置しておくのも嫌だ。


 腰を落としてシュナイデンの目線に合わせる。

 相変わらず感情の読めない瞳をしているが、今はどこか揺らいでいるように見えた。

 憲兵の方を見ると変わらず険しい顔でこちらを見ている。

 それを確認してからシュナイデンの肩を掴む。


「どうして嫌なんだ」

「……まだやる。べきこと、がある。」

「……そうか」


 いくら無表情で感情の起伏がなくとも曲げられない何かはあるようだ。

 これで「なんとなく」なんて答えだったら憲兵と共に外へ叩き出そうかとも考えたが、そんな必要はなさそうだ。

 立ち上がり、憲兵の方に向かって歩く。

 なぜ自分がこんなことをするかは知らないが、やらなくてはならないという感情が胸の内から広がっていた。


「すみません」

「なんだ、まだ用か」


 険しい顔はそのままに気だるそうな声を出す憲兵のオッチャン。

 街に入る時は怖くて話すこともできなかったがシュナイデンのことを思えば、そんな心の弱さも吹き飛んでいた。

 心を強く持ち憲兵を見据える。


「こいつの滞在期間を延ばしてもらえませんか?」

「なにを馬鹿な」


 失笑する憲兵に腹が立ったがそんなことを表に出すような社畜勇者ではない。

 それが駄目なら他の策だ。


「なら街に一度出て、また入ることはできますか?」

「お前は馬鹿か? 国の許可書も持っていない放浪者風情が短期間で同じ街に何度も入れると思っているのか」

「お金を払えば許してくれませんか」

「すまんが規則なんでね」


 仕事態度は酷いくせになんでそんなところは律儀なんですかねェ。

 マジで前にいた仕事できないくせに無駄なプライドを持つクソ野郎共を思い出す。

 そして俺も、無駄に力を自覚しているだけあって斬ってしまおうかという考えが脳に浮かびまくっている。

 ムカつくしイラつくし殴ってやりたい気持ちもあるが、コイツ等も社畜仲間だろう。もっと平和的な解決を望もう。


「期限が切れたならアヴィクルを返してさっさと街から出て行け、本来は罰金か牢屋行きのところを目を瞑ってやっているんだ」


 確かにそうだ。

 間違いを犯しているのは憲兵ではなくシュナイデンの方だ。

 普通に考えるならシュナイデンが法を犯す者で憲兵がそれを見逃してやるからさっさと出て行けという善人か偽善者かのどっちかだ。

 そう考えるとなんで俺がシュナイデンのためにわざわざ憲兵と話しているのかさっぱりだが、俺的にはなんとなく憲兵の方が気に食わない。それは俺がシュナイデンのことは知っていて、憲兵のオッチャンについては無知だからだろうな。


「ほらっ、そこの女! さっさとこの街から出て行け!」

「………」


 なにも喋らないシュナイデンが癇に触ったのか、シュナイデンの腕を掴み強引に連れ出そうとする。

 それを見て思わず短剣に手を伸ばすと――



「待ちなさい!」


 空気を震わす凛とした声が響き渡った。

 聞いたことがある声に顔を向けると、そこにいたのは……


「スフィーダ!」

「なっ、ヘラウス様!」


 そこに立っていたのは軍服のような服装に身を包み、真紅のマントを羽織った銀髪美女スフィーダだった。



「昨日ぶりねフウト君。今は再会を喜んで良い時かしら?」


 言って不敵に笑うスフィーダは輝いて見えた。

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