俺。模擬戦
完全不定期更新です
先に仕掛けたのはルーズだった。
最初とは違い弾丸のような速さで近付くと、一度大きく踏み込んで突いてくる。
その速度はやっと反応できる程度で、経験から卓球のスマッシュを彷彿とさせた。
帝国兵と戦った時の動きすべてがスローに見える感覚があるのに、ルーズの動きは帝国兵のように遅くない。
ただ反応できる程ではあるので、俺はそれを払い除ける。
そして横一閃。
だがルーズは軽く避ける。
「ちっ!」
自分の声が発せられ空気を震わせるより速く剣を振り下ろす。
ルーズはそれをポールで受けると斧槍を斜めにし剣を下へ誘導した。
床に剣が当たるより先にポールを離すと回転させ下から振り上げる。
俺は地を蹴り、前のめりになった体をそのまま上へと押し出しこれを避ける。
そのままルーズの真後ろに着地し小さなステップを踏んで距離をとり剣を振るう。
これもルーズが振り返りながら受け止め斧槍を振った。
それを受け、何度か斬り合う。
何度もお互いの刃がぶつかり火花を散らす。
ガッ、キィィィィッ……
ぶつかり合う音が間延びしスパゲティのように伸び遠くへ飛んでいく。
自分達がどんな次元で打ち合っているのか嫌でも理解した。
きっと漫画の主人公達もこんな状態で戦っているのだろう。
アホなことを考えつつもお互いの刃はぶつかり合う。
避け
払い
流し
ただただ振るい続けた。
これは竹刀の先を合わせるのや鍔迫り合いと同じだ。
お互いの間隔を知り牽制し、少しの間息を整える。
ただそのやり取りで起きる衝撃は激しく、壁や床に多くの傷痕を付けていく。
そしてその時が来る。
ルーズが踏ん張り損ねたのかぐらりと体がズレた。
それを見て今まで片手で振るっていたのを両手で持ち直し、上段から一気に振り下ろす。
「!?」
だがルーズは体を回し避けると、一気に俺の背後まで廻ってきた。
勢いを乗せ斧槍を横に振るう。
「のっ!」
本気で振り下ろしていなかった剣を無理矢理方向転換させ受け止める。
驚愕の顔をするルーズの斧槍を払い除け、再び上から振り下ろした。
ガッ!
「ッ、マジか!」
しかしルーズは俺の腕を蹴り上げた。
後ろへ反られる中、お返しにとルーズが上から振り下ろしてくる。
神多夢を使いたい気持ちを抑え、体を捻り無理矢理避けると次はスパイクで突いてきた。
これを剣先で下に逸らしこちらから斬りかかるが、ルーズは難なく避け再び斬り合い膠着状態が続く。
ルーズが攻め俺が払う。
「さっきから当たったら死ぬようなものしかきてないんだけど!」
「気のせいだよ気のせい」
「どう考えても気のせいじゃないだろ! その胸削ぎ落としてオスクラ並みの貧乳にするぞ!」
叫んでから今度は攻めていく。
ルーズを押して行き攻防が逆転した。
隙を見て今度は片手で振るう。
それを斧槍を回転させることで流された。
大きく隙の出来た俺に対し斧槍を持ち直すと顔面に向かってスパイクが走る。
俺は体を限界まで仰け反らせる。
すると、顔があった場所を躊躇ない速度でスパイクが刺した。
背後に逃げながら横に一閃。
これをルーズは体を反らして避ける。
即座に体勢を直し、こちらも容赦なく剣を振るうが、いとも容易く弾かれた。
続けて払い上げる。
だがルーズは剣を避けると体を捻って鋭い回し蹴りをしてくる。
これを間一髪で避け体勢を直す。
そこに頭から斧槍。
剣を横にし受け止める。
酷い金属音が間延びして聞こえるが、それを跳ね除け正面に一蹴り。
もちろん避けられるので、その足で床を叩き、斬る。
しかしこれも防がれ斧槍を回転させ払われる。
「しまっ!」
「これで終わりっ!」
不敵に笑ったルーズは斧槍を持ち直し顔めがけて稲妻の如く凄まじいスパイクを放った。
非常に避け辛いが、これを避けねば誰とも知らない外国人がくれた2度目の人生が本当の意味で終わってしまう。
ルーズには悪いが……。
一瞬だけ神多夢を全開にする。
全身の状況を理解し適切な判断を下す。
瞬時に体勢を戻し剣を振りながら顔をズラし避ける。
頬に斧刃が掠れ薄皮が切れるが気にせず進む。
「そんな!」
悲痛な声が聞こえた気がしたが、知ったこっちゃない。
こっちも命がかかっているんだ。
斧槍が後ろに向かっていくのを感じながら、持ってきた剣をフェンシングのように構える。
そして本日二度目の驚愕に染まる顔めがけて、突く。
放った刃は大気を斬り裂きルーズの顔面向かって走り抜けーーー
「……ま、まいりました」
剣先はルーズの既のところで止まっていた。
無事の声を聞いて剣を退かし、前で払う。
鞘のない剣を泳がしながらも
(……あ、危なかった)
外面では平常を装いながらも胸の内はバクバクと鼓動が強く打っていた。
自分のこともそうだが、手元が狂ってルーズを傷つけていたらと心配だったのだ。
しかしルーズの奴は武器の具合を調べると言ったわりに完璧に殺しにかかっていた。
いや俺のように既で止める自信があったからかもしれないが、忠告なしでのアレはヤバい。
こちとら剣を触って数日の初心者なんだぞ、手加減をしてほしいものだ。
最後の方に神多夢を使ってしまったが、あれは、なんだ。ハンデ的なやつだ。
まあお互いに目立った外傷もなくて安心安全万々歳だ!
額の汗を拭いつつ、今度こそ勝利画面を意識して、剣を振った。




