俺。神多夢専用アイテムGet
完全不定期更新です
「……どうしてこうなった」
右手を歩くのは目も合わせようとしないオスクラ。
左手を歩くのはハルバートを折られ勇ましい表情の女の子。
両手に華の状態なのに全く嬉しくない。
というか気まずくて逃げ出したい。そんな弱った心を抑えて棒切れと
なった物を持つ女の子へ目を向ける。
三つ編みが綺麗で全体的に身なりも良い。
お台場あたりを歩いていても問題ないどころかスカウトされるかもしれない。……いやお台場行ったことないから想像なんだけどさ。
「えっと、こうしているのもなんだし、お互い自己紹介をしよう。俺はフウトだ。で、こっちがオスクラ。二人で旅をしてる」
紹介されてもこっちを向こうとしないオスクラに涙ちょちょぎれながら苦笑いしていると女の子が頬を膨らませて見上げてきた。
「ルーズ……ワケありで旅をしているの」
「そうか。ならお互い神多夢持ちの旅人同士ってことで、さっきのチャラになんない?」
「な・る・わ・け、ないでしょうがっ!」
テーブルがあれば叩きそうな勢いで腕を振り回す。まるで子供のようだ。
まあ、その分オスクラにないたわわな胸が揺れるので俺にとって満更でもない。
そういや忘れてたけど、さっきのシールは何なのだろうか。
「そういやあのシールって結局どんなん?」
「……さっきも言ったけど神多夢である事を隠すことができるアイテム。名前は確か『神多夢可視感知妨害フィルム』で、通称『ホー』」
相変わらずこの世界のネーミングセンスの無さに驚かされる。たぶん夢幻略奪者だったことより驚いてる。
ルーズは一枚取り出すと自分の首筋に貼り付けた。
「おー」
その効果は一目瞭然……というわけではない。
なんせ見えない力のようなオーラとも呼ぶべき物が消えたような気がしただけだからだ。一応、オスクラと見比べれば分かるがその程度の差しかない。
見せ付けるようにルーズは目の前で一回りする。
長い髪が舞い、香水が香る。旅人とは思えないレースのスカートがフワリと盛り上がるその姿は、オスクラとは違い女の子らしいものだ。
「どうかな、これで神多夢だって気付かれないはずだけど」
「……あ、あぁ。すごく可愛いと思うぞ」
しまった、思わず本音が出てしまった!
怒られるかと思ったがルーズの顔は赤色に染まっていく。
「しょしょっ、しょんなこちょは、ないでごじゃいまするよ!」
「スッゲー動揺してる!?」
「こ、こほん。それよりもホーについてだったよね。うん」
あ、逃げやがった。
隣を見ると、オスクラがにやにやと面白いものを見つけたと言わんばかりの嫌な笑みを浮かべている。
オスクラは身を乗り出すとルーズをじっと見据えた。
「ふふっ……褒められただけで顔を赤くするなんて、その大きなお胸と違って中身はお子ちゃまなのね」
「なっなにおぅ!」
やったぜ!
火に油を手に入れた!
まあ面白そうなので俺は被害を被らないよう少し離れてその様子を眺める。
オスクラが余裕そうに髪をかき上げると、顔は完全に意地悪っ子のそれだ。
対するルーズは顔を真っ赤にして力んでいる。
胸がない方がある方に勝負を仕掛けるなんて珍しいもんだ。
「そもそも、フウトは可愛いと褒めただけなのよ。それに対して過剰に反応するなんて、精神が胸に追いついていない証拠ね」
「あぅ、あ、いや、普通恥ずかしいでしょ! アナタだって褒められたら私と同じになるよ! フウトくん何か言ってやってよ!」
「お、おれぇ!?」
退避していたのに早速飛び火してきやがった!
まあでもオスクラに可愛いと言うだけならお安い御用だ。俺はオスクラに向き直り肩を掴んで真剣な目で見据える。
「……オスクラ、可愛いぞ」
「そ、お世辞で言ってるわけでもないみたいだし、ありがとね」
「ななななな、なぁ!」
ルーズは信じられないものを見るように顔を赤くさせ俺とオスクラを交互に見ている。
それが漫画みたいで異様に面白い。
再び余裕綽々で優雅に髪をかき上げると
「大人の女性ならこれくらいどうって事ないのよ。それに、私が客観的に見惚れられる容姿だというのは私が一番理解しているもの」
完全にオスクラが押していた。
ついにルーズは地面に手をついて硬い石畳を凝視する。
「……そんな、あれが、あんな事を言われても平然としていられるのが普通の大人なの? わ、私では到底辿り着けない境地」
「ルーズの境地は浅いな」
同意を求めようと隣を見るとオスクラがいない。後ろを見ると結構な速さで歩いていた。
急いでルーズの手を取り立たせて後を追いかける。
早歩きをするオスクラの顔を覗いても俺を無視していく。
「おい、どうしたオスクラ」
「忘れてたけど、ホーには制限時間があるのよ」
それにルーズは驚いた声を上げて一緒に歩き続ける。
こっちは大股で歩かないせいか殆んど走っているのと変わらない。
「そういえばそうだったね。ホーで隠せるのは数十分だけだからっ、早くあそこを乗り越えて城門に入らなきゃ!」
叫んで今度は二人して走り始める。
どちらも俺からしてみれば小さい子供と走るような感覚だが、思わず慌てて後を追う。そして俺も叫ばなければなるまい。
「ちょっ、待って! 俺の分のホーは!?」




