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俺。アバントリアへ

完全不定期更新です

「ホーホーミルク」

「パンツムーミンパン」


 ターバンを巻いた若い男とマントを羽織った男が話し込んでいる。

 どちらも重そうな荷物を持ちながらも飄々とした様子で談笑する男達の話す言語は、到底聞き取れるものではない。


「セックルズコバコカタルシス」

「チッチ、チッチ、パイ・パーン!」


 男の高い声にマントの男が笑い出すと、それを皮切りに周りの似たような男達も一斉に笑い出す。まるで、この集団だけはその言葉を認識しているようだ。




 非常に頭のイかれた光景が目の前にあった。

 なんか城門前の列に並ぶ男達が一斉に笑い出したのだ。しかも意味不明な言葉を発しながら、奇妙な奴らだ。


「なあ、あいつらってなんなの?」

「ん? あぁ商人さん達だね」


 商人!

 初めて見るのが汚い変態チックな言葉で会話して爆笑してる姿なんて見たくなかった!

 もっとユーモア溢れる言葉や世界各地の面白話で華を彩る姿を見たかった。あと贅沢を言えば褐色で露出度高い女の子の商人が見たかった!


「ちなみにアレは商人さん達だけで通じるバキウムていう商人言語だから理解するのは難しいんだよ」


 理解したくねえよ!

 ゲンナリしていると、先ほどから解説してくれていたルーズが体を反らせて大きな胸を張っている。

 普通にしてればキリッとした顔つきが目を引く育ちの良い女の子に見えるのに、今では満面の笑みを浮かべているただの女の子だ。



 首筋あたりに手を置くとルーズから貰った神多夢可視感知妨害フィルムが貼ってある。

 実際に貼ってみて分かったが、効果がある時はどうやら神多夢自体が使えないみたいだ。ある程度無理をすれば使える感じはするが壊れそうなんで止めている。


「ほら、次は私達の番らしいわよ」

「いちおう貼ってるけど……こんなんで行けるのかよ」

「んっふっふっ、フウトくんは臆病だなあ。こういうのはリラックスしてないと逆に目立ってバレやすくなっちゃうよ」


 いや分かってはいるが万引きしてる感じがしてメッチャ嫌な気分だ。

 あと憲兵達の顔が怖いってのもある。

 仕事なのはわかるけどさ、もうちょっと人受けの良い顔はできないものかね。話しかけるのすら拒まれる強面で現代社畜勇者だった俺としては近寄ることすらしたくない。



「次っ!」



 だが虚しくもその時間はやってきた。

 二人に両腕を拘束されエイプリルフール掲載宇宙人のような無様な姿で憲兵達の前に出た。

 すると憲兵の1人が俺を見て舌打ちをする。


 まあ気持ちはわかる。

 美少女2人と両腕を組みながら目の前に出てくる男がいたら、俺なら顔面に蹴りをお見舞いする。

 肝心の俺は逃げ出そうとしたところを捕らえられたってだけなんだけどね。


「用件と滞在日数を」

「宿と買い物に、滞在は1週間ってところかな」


 縮こまる俺とは違い堂々と憲兵に話すルーズはなんだか格好良く見える。

 場慣れしてる感が出ていてオスクラに言い負かされた時とは大違いだ。

 憲兵は手元の紙にサラサラと何かを書くと、懐から赤石を取り出した。



「そ、それはっ、スーパーエイジャーッ!」

「これはイグナイトって言って、神多夢に反応して光る特別な石なんだよ」


 なんだ、それなら入った光が内部で数億回反射してレーザービーム宜しく発射されるわけではないのね。

 しかしやはりあったか神多夢発見器。

 まあそれから身を守れるという触れ込みのホーを貼ってるし、あとはオスクラ達を信じて結果を待とう。



 イグナイトを持った憲兵は俺たち一人ずつにそれを押し付け反応がないのを確認すると、紙に何かを記して妙な形のストラップを一つずつ渡してきた。


「アヴィクルだ。使い方はわかるな?」


「表示されてる数値がゼロになる前に街から出れば良いんだよね。そうしないと追加のお金を要求されて、払えなかったら捕まる。あってるかな?」

「よろしい。くれぐれも城内で変な気は起こすなよ」



「わかってるよー」と気の抜けた返事をして門の中に入るルーズを追って中へと足を踏み入れる。

 暗いトンネルのような中を通れば、そこは俺にとって異世界初の街だ。




 最初っから落っこちたり戦闘があったり街から嫌な雰囲気しかしないけど、初めて異世界生活っぽいやつを味わえる。

 そう思うとドキがムネムネしてきた。


 はやる気持ちを抑えられず、思わず走り出す。

 二人から離れない程度まで走りきると、胸の中にある高揚を表現するように思いっきり飛び上がった。





「俺たちの異世界冒険はこれからだァ!」

ご愛読ありがとうございました。

白濁十六連射先生の次回作にご期待ください。

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