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俺。二人で宿

完全不定期更新です

「……脱ぎたい」


 整頓された石畳の上を鉄靴が叩く心地いい音と底が摩れて傷をつける嫌な音を引き連れていた。

 それは異世界に来た時から身に着けている鎧が原因だ。

 全身鎧ではないものの重量は重く、これだけで人を撲殺できるのではないのかと思ってしまう程にある。


 それでも体が慣れているせいか大して苦痛には感じなかったが、さすがに身に付け過ぎると肩がこって仕方がない。

 しかも歩くたびに金属音がするので耳障りなことこの上ない。


 すると前を歩くオスクラが立ち止まりとある方向に指を指す。

 顔を向けると少し大きめの宿だ。もちろんビジネスホテルなんて物ではなく、大きな家に見える。


「ここで休みましょうか」


 いつもの無表情に戻ったオスクラがさっさと歩き出すのを見てルーズの方を見る。

 こちらもさっとまでとは違いキリッとした顔で出来る女性オーラを発していた。


「俺達はここで休むけど、ルーズはどうするんだ?」

「私は少し寄って行きたい所があるから良いかな」


 一緒に休むのかと思ったが、なにやら用事があるようだ。

 まあ止めはしない。俺が首をつっこんで良いか知らんし話すときのルーズは真剣そのものだったから、恐らく俺が付いて行っても無駄だろう。

 肩を竦めて軽く手を振りオスクラへ続こう。


「あっ、武器のこと忘れないでよね!」

「わかってる!」


 チッ、いちいち覚えていたか。

 でもベジタボゥから譲り受けた金貨がある。まだ一枚も使ってないしルーズの武器を購入しても余りある程だ。

 壊してしまったのはこちらだし、ある程度奮発した物でもいいだろう。



 オスクラを追って扉を開けると思ったよりも簡素な受付だった。

 ソファやテーブルが置いてあり向こう側に受付と店員。

 その店員と話をしていたオスクラへと小走りで近づき肩を叩いて自分が来たことを知らせる。


「すまん、遅れた」

「これくらい別にいいわよ。鍵も貰ったし、早く部屋で休みましょう」

「部屋数は?」

「1つよ。アンタが妙なことをしなければ私としてはどうでもいいことよ」


 言って踵を返すオスクラに続く。

 部屋は2階奥部屋でこれまた簡素、ただ堂々と鎮座するダブルベッドを除いては……


「だっ、ダブルベッドって、これ俺の寝る場所どこだよ!」

「私は右側、アンタは壁側の方ね」

「そういう意味じゃねえよ!」


 聞き耳を持たないオスクラは手荷物だけを部屋の隅に投げ込むと、そのまま出て行こうとする。


「ちょい待ち、どこ行く気!」

「お風呂よ。なにアンタも来るの? さすがの私でも裸の付き合いをする気ないわよ」



 言い残すとオスクラはそのまま出て行ってしまった。

 俺もなにかしようと、まず鎧を脱ぐ。3日間脱ぎなれているのでもう一人でも難なく外せる。


「……ふぅ」


 やはり現代人の自分には鎧なんて物は不要だな。それに俺の戦闘スタイル的にも微妙な位置だ。

 脈動で肉体強化する俺はスピード重視で動く。当たって痛いのはごめんだからな。

 それだと重い鎧は枷にしかならない、それでも着けているのは、なんだかそうしなければならないような気がするからという単純な理由だ。

 本当なら脱ぎたい。


「さて、オスクラが戻ってきたらどうしようか」


 短剣を弄びながら考える。

 日本にはないファンタジーな所には行っておきたいが、よくある感じに治安が悪いとかだったら嫌だしな。それでも神多夢を迫害するところだから力は目立つだろうし、それを考えるとできるだけ暴力沙汰にならないところにしたい。

 酒場には行っておきたいけど行くならオスクラ同伴だな。俺一人だとどう対応したら良いのかさっぱりわからん。

 まあ、まずは街をブラブラして行きたい所が見つかり次第行くことにしよう。


 考えているうちに扉が開いた。

 もちろんオスクラで、裸ではない。

 よく見ていた漫画だとここいらで裸にタオル一枚の姿で出てきて男が慌てふためくなんてシーンは星の数ほど見ていたが、現実はそうもいかないらしい。


「アンタも風呂入るの?」

「いや、俺は外をブラブラしてくる。オスクラも出るか?」


「まさか私はもう休むわよ。アンタと会う前から戦闘続きで疲れが溜まってるんだから」

「わかった。なにかあったら俺に言ってくれ」

「替えの下着はいらないわよ」



 オスクラなりのジョークに笑いながら片手を上げて入れ替わるように外へ出た。

 腰には念のための短剣。

 そうして宿から出ると、物買いしている人達の声が耳に届いてきた。相変わらず変態チックな言語も混じってるが、それがまた異世界感を引き出している。



「……よし、俺にとっては初めての異世界買い物だ!」


 踏み出した足は、石畳とぶつかり心地良い音を返してきた。

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