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俺。斧槍こわれる

完全不定期更新です

 アバントリアの姿は見えても、一向に着く気配はない。

 土で舗装された道から石畳の綺麗な道になっているのだからこの上を歩いていけば行けるのだろうが……


「……遠い」

「アンタそれで何回目よ」


 仕方ないじゃないか、かれこれ2時間近くは歩いているだろう。

 周りに黄金絨毯は見えるが城壁に近づいてるのかすらわからない。

 時たま馬車に道を譲ったりしながら歩くのでさらに遅くなっているだろう。


「なあオスクラ」


 その時、俺の中で一つの疑問が生まれた。

 ベジタボゥの記憶の最後で見た光景がまだ目に焼きついているせいなのか、それとも自分が見慣れた物だったからか、今までファンタジー世界だと思い込んで目を伏せていたが疲れ果てていれば聞くしかあるまい。


「この世界って『車』ないの?」



 これはベジタボゥが最後に乗っていたのを覚えていたからの発言だ。

 あいつも『車』と言っていたし、スマホとかスーファミよりは伝わりやすい言葉だろう。

 オスクラは汗一つ流さず端麗な横顔を俺に見せながら少し唸る。


「あるにはあるわよ」

「本当か!」


 良い事を聞いた。

 街に着いたらチェックインした後にでもベジタボゥから貰った金で安物でも良いから購入して、颯爽と迫害の街から退散しよう。

 そんな名案を浮かべていた俺にオスクラは呆れた声を出した。


「あんな高級な物、余程のことが無い限り使われないし、なによりだだっ広い大地を補給地点なしでどうやって進むのよ。それに舗装されてない道なんていくらでもあるのだから、パンクして立ち往生するのが目に見えるわ」


「じゃ、じゃあヘリとかオスプレイとかジェット機にバリキリーは!?」

「ヘリ? そんなものないわよ。あ、でもオスプレイならあるわよ」

「マジ?」

「えぇ、連れてってあげましょうか? 私はそっちのけはないから、近寄りたくはないけれど」


「それ知ってる、未成年は絶対行っちゃいけない場所だ!」


 叫び続けていると次第に近くなっている気がする。ある程度の気分晴らしにはなったようだ。

 だが、それと共に見てはいけないものを見たような気がした。


「……なあ、あれって門番じゃないのか?」

「そうね」

「軽いね君、追われてるとかじゃなかったっけ」


 そこには列を成す集団とその前にいる憲兵が数人。

 完全によく見る門前検査ですねわかります。


 見えているはずなのにオスクラは平然とした顔を崩さず、歩調を狂わせることなく歩き続けている。

 慌てて追いながらもどうやって切り抜けるかを考える。

 ……駄目だなにも思いつかん。



「オスクラはどうやってアレをやり過ごす気だ? 追われてるとかそんなん以前に、あそこは俺達みたいな神多夢を迫害する街として知られているんだろ?」


 神多夢が常識として知られているのなら神多夢を見抜く方法もあるはずだ。

 それに引っかかりでもすれば囚われるか追い返されるか、とりあえずまともに街へ入れないのはわかる。

 するとオスクラが懐から一つのシールを取り出した。


「アンタも持ってるでしょ、これ」

「いや何それ始めて見た」


 幾何学模様が描かれたシールを左右に振ってみせるが本当に見たことがない。

 念のため体をまさぐってみるが、そんなものは出てこなかった。


「マジ持ってない。つかそれなんなの?」

「はあ……これはね」




「それは神多夢を隠す物だね」


 突然の声に、神多夢を発動させ体を声とは正反対の場所へ飛ばす。そのまま大剣を引き抜き振り向きざまに振るう。

 オスクラも前へ飛びながら短剣を後方の人物へと伸ばす。



 カァァアアンッ!


「ああああああああああああああああああああああああっ!?」


 高い金属音と共に女の子の叫び声が聞こえた。

 よく見てみると、それは棒を持ち震える女の子だった。


 さっきの音はなんだったのかと見回してみると、地面に斧槍らしき剣先が落ちている。

 もしやこれを斬ってしまったのではないのかオスクラの方を見ると軽く頷かれる。マジか……


「……あのー、すみません。これ貴女の落し物ですか?」


 できるだけ知らないフリをしつつ落ちていた先を女の子へ差し出す。

 しかし女の子はそれを払いのけると一歩前へ踏み出し俺へと顔を近づける。その形相は恐ろしいものだ。



「困ってるみたいだったから声をかけてあげたのにっ、なんなのこの仕打ち! 確認もせずに斬られるわ、忠告なしで神多夢使うわって……うわーん!

 1ヶ月間おやつ抜きにして苦労の末買ったハルバートがぁ!」


「ハルバート安いな!?」


 なんだそれ1ヶ月間おやつ抜きにするだけで買える武器とか完全に偽物掴まされてるじゃないか!

 だが女の子はそう思ってないらしく、肩で息をしながら俺へ指を指してきた。




「弁償しなさいっ! これ、私からの命令!」

「たしかに悪かったけどさっきの話を聞いたら当たり屋にしか見えねえよ!?」


 俺の声は空しく天へと上り空中分解した。

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