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俺。初勝利と撃破報酬

完全不定期更新です

 考えれば簡単なことだった。

 それに奴の神多夢は人を殺すには向いてない。本来の使い方は、どちらかというと後方支援向けだ。

 どんな過酷な状況でも奴とセットで組ませれば殆んど通常どおりの動きができるようになる。それに対して相手は灼熱の太陽や吹き荒れる雪で勝手に体力が消耗されていく。


 あとオスクラに聞いた話だと、あれは人間の構造自体を変えかねない神多夢だったらしく、もっと後々に出会っていればそれはもう手をかざすだけで体中から血が吹き出させることができるキチガイ能力に変わっていたかもしれない。




「見えた」


 背後からそんな頼もしい声が聞こえ、自身のすべてを知っているくせに、思わず口角が上がった。

 最初で最期の反撃だ。


 前から迫ってくるのはベジタボゥが握る剣先だ。

 奴は神多夢の扱いに長けるだけではなく、剣の扱いにも長けていた。

 その地位も、神多夢だけではない並ならぬ努力の賜物だろう。



 だが並々ならぬ努力をしてきたのは俺も同じだ。

 毎日飽きもせず……ごめん飽きてた。


 とにかく、これで終わりだ。

 これがダメなら万事休すってことで、サクッと諦めはつくが……



「オスクラァァァアアアア!」

「わかってる!」


 俺とオスクラが諦めない限りは、誰がなんと言おうが試合続行だ!




 ズシュッ!


「なにっ!?」

 途端にベジタボゥの顔が驚愕の色に塗り変わる。


 そりゃそうだ。驚いてもらわなきゃ困る。

 だって……


 ドシュッ!



「貴様ッ、自分を盾に味方へ攻撃させる……とはっ」


 俺の肺の数ミリ下から剣先が伸び、ベジタボゥの胸を刺し、貫いていた。

 漫画みたいに血を吐くが、俺も堪らず口端から血が漏れ出す。



「お前自身が言ってたよな……『私の視界に入るもの全てが、物言わぬ人形へと変わるのです』って、ならお前の視界に入りさえしなければ、神多夢の範囲から抜けるわけだ」

「……それで、自らを使ったのですか」


「あぁ……でも効果はバッチリだ」


 見るに心臓は傷つけただろう。

 

 オスクラの剣が、ベジタボゥと俺から引き抜かれた。

 脈動の俺は踏ん張れるが、やはり深層を持つ奴は仰向けに倒れた。





「……誰かに負けるなど、本当に久しぶり……ですねぇ」


「フウトっ、大丈夫?」

「俺は、なんとかな」


 溢れ出る血を抑えながら、地面に倒れるベジタボゥを見る。

 どこか自嘲するような表情をしている。


「……さっきと、立場が逆転した、な」

「ふっそうですね。私の負けですよ」



 その潔さに少し驚いて周囲を警戒する。

 さっきまで自分の圧倒を自慢していた奴が突然態度を変えれば、大抵罠や伏兵がいるもんだと、俺はゲームから教わった。


 だがベジタボゥが手を振り

「なにもないですよ。ここに来たのは私の隊だけですからね。あぁでも、翌朝にはここへ兵が寄越されるでしょう。私と隊の者達を回収するための……ね」



 まるで、さっきまで殺し合いをしていたのが嘘のような親切さだ。

 いやコイツなんか元から親切丁寧に神多夢の説明とかしてたな。



「……ふふっ、私を倒したからにはっ、褒美を、あげましょう」


 ベジタボゥは震える手で自分の懐に手を入れると、何かを投げてきた。



 ガチャン。


 それは小袋で中からは金属がぶつかり合う音がする。


「それは私からの、ささやかな……プレゼント、ですよ」

「……………」



 オスクラが俺へ顔を向けてきたので、軽く頷く。

 そうしてオスクラが警戒しながら小袋を手に取り開けてみると、大量の金貨が顔を見せた。

 うほっ、良い金貨。


 ベジタボゥは咳き込むと、空を一心に見つめている。

 俺も見ているその先が知りたくて上へと視線を向けてみるが、ただただ青空が広がり、白い雲は俺達を置いて緩やかに流れて行く。



「……そうですねえ。もし、バグズトロイヤ帝国に行くことがあれば……ピコブラッドという都市がある。そこへ行ってくれ、ませんか?」

「……どの口が言うか」

「そう言うと思ってましたよ……」



 再び自嘲気味に笑うと、呼吸が細くなっていた。

 もう明確に死が近づいている。


「あぁ、そうだ……失敗作品よ」

「…………」



 最後からなのかオスクラはツッコミを入れない。

 そんなオスクラに対し微かに笑うと


「貴女は……私とは違、い………」

「…………」



「……死んだわね」



 言うと、小袋を懐に入れ踵を返した。

 それでも俺はこの男を視界から外すことができないでいた。

 殺し合いをしたからなのか、最後に何かを言い残したからなのか、同情のようなものが浮かんでは沈んで行く。


「どうしたの、ソイツも言ってたでしょ。このままここに居たら兵に殺されるわよ」

「……それも、そうだな」





 だが、どうしても死闘を繰り広げた男の、開いた目を閉じさせたくて近づいた。


「……………」



 死体なんて数年前に死んだ爺さんくらいしか見たことがなかった。

 それでも何も感じないのは、ご都合主義だとか主人公補正だとかの、そんなもんだろう。


「というか、最後の最後まで漫画っぽいセリフ言うの止めろよな」


 そう言って近づいて、開きっぱなしの目を閉じさせる。









 そして俺の視界が暗転した。

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