第9話「交錯」
戦いが始まり物語が一気に加速!
◇
街には避難を呼びかける放送が鳴り響いていた。
『能力者同士による被害が拡大しています。住民の皆様は速やかに避難してください。』
遠くで爆発音が響く。
悲鳴。
砕ける建物。
能力者同士の戦いは、もう日常のすぐ隣まで来ていた。
御鏡が陽菜を見る。
「陽菜。」
「避難所へ行け。」
俺は思わず口を開く。
「でも……。」
「巻き込まれる。」
短い一言。
反論できなかった。
陽菜は少しだけ俯き、それから笑った。
「……うん。」
「分かった。」
俺の前まで歩いてくる。
「でも、一つだけ約束。」
「ちゃんと帰ってきてね。」
「待ってるから。」
俺は頷く。
「ああ。」
「約束する。」
陽菜は安心したように微笑み、人混みの中へ消えていった。
俺はその姿が見えなくなるまで見送った。
御鏡が歩き出す。
「情報を集める。」
佳子も頷く。
俺は二人の後を追った。
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◇
同時刻。
遠く離れた街。
能力者二人が激しく戦っていた。
砕けたコンクリートが飛び散る。
近くでは避難の遅れた親子が動けずにいた。
「危ない!」
一人の少女が飛び出す。
迷わず親子の手を掴み、その場から引き離す。
「早く逃げて!」
親子は礼を言う間もなく走り去った。
能力者の一人が少女を睨む。
「邪魔すんな!」
攻撃が放たれる。
その瞬間。
一人の男が前へ出た。
ドンッ。
攻撃が逸れる。
拝島だった。
「一般人を巻き込むな。」
能力者二人は三人の姿を見るなり表情を変えた。
「……っ!」
「既に組織として動いてるのか。」
分が悪いと判断し、その場から逃げ出す。
少女は拝島を見る。
「助けてくれたんですか?」
拝島は淡々と答える。
「結果的にな。」
少女は少しだけ警戒を解いた。
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◇
「一人か。」
少女は頷く。
「はい。」
「藤道一花です。」
卑弥が笑う。
「可愛い名前。」
一花は少し照れ笑いする。
「あなた達は?」
拝島が答える。
「危険な能力者を追っている。」
「能力者だけを狙って襲う連中だ。」
「俺達も何人も助けてきた。」
もちろん嘘だった。
しかし。
さっき一般人を助けた光景を見た一花は、その言葉を疑えなかった。
「そんな人達が……。」
拝島は続ける。
「遠くに反応がある。」
「放っておけば、もっと被害が出る。」
一花は拳を握る。
「止めないと……。」
拝島は心の中で笑う。
(かかった。)
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◇
その時。
能力者が現れた。
「全員まとめて殺す!」
拝島は一歩も動かない。
「リア。」
それだけだった。
リアは迷わず前へ出る。
能力を受けながら距離を詰める。
腕が少し裂ける。
肩から血が流れる。
それでも止まらない。
相手を組み伏せる。
首には糸が巻き付けられる。
勝負は一瞬だった。
「見逃してくれ」
拝島が答える。
「能力使いこなせてねぇ野郎は誰とやっても同じ結果だ」
「リア。解放してやれ」
無表情のリアに恐怖を感じ、能力者は後退る。
リアは血を流したまま立っていた。
一花が駆け寄る。
「怪我してる!」
リアは傷を見る。
「問題ありません。」
一花はハンカチを取り出した。
「これ、巻いて。」
リアは手を伸ばさない。
「……。」
「命令されていません。」
一花は固まる。
「え……?」
拝島が背を向ける。
「リア。」
「行くぞ。」
「はい。」
リアは血を流したまま歩き出した。
一花だけが、その背中を見つめていた。
(どうして……。)
(誰も気にしないの……。)
---
◇
歩きながら。
一花はリアの隣へ並ぶ。
「痛くないの?」
「……。」
「怖くない?」
リアは少しだけ一花を見る。
「命令ですから。」
それだけだった。
一花は返す言葉を失う。
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◇
拝島が足を止める。
「一人で動くのは危険だ。」
「俺達と来い。」
「少なくとも、お前の正義は守れる。」
一花は考える。
(一人では守れない。)
(でも、この人達となら……。)
ゆっくりと顔を上げる。
「……お願いします。」
拝島は満足そうに笑う。
「歓迎する。」
四人は歩き出す。
一花は最後尾を歩くリアを振り返る。
傷口から落ちる血。
何も言わず歩くその姿が、頭から離れなかった。
その様子を見た拝島は、小さく口角を上げる。
「リア。」
「次は、あいつらだ。」
「……はい。」
一花だけが、その言葉の意味を知らなかった。
新キャラ藤道一花の登場!チームとしても動き出し今後の展開もお楽しみください!
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