第10話「隊」
統一戦が始まり、一日。
能力者たちは、それぞれの思惑を胸に動き始める。
リンクの力。
新たな出会い。
そして、敵同士が手を組む理由とは。
◇
あの日から一日。
能力者同士の戦いは全国へ広がっていた。
街のあちこちから爆発音が響く。
避難する人々。
能力者を探す能力者。
昨日までの日常は、もう残っていなかった。
俺たちは街を移動しながら情報を集めていた。
佳子が静かに目を閉じる。
「昨日より能力者の反応が増えています。」
「リンクを組んで行動している人も増えています。」
俺は街を見渡す。
「やっぱり凪の放送のせいか。」
御鏡は頷いた。
「能力者全員の目的が一つになった。」
「能力者は能力者を探し始めた。」
佳子も続ける。
「以前は孤立していた能力者同士が、一緒に行動しています。」
俺は疑問を口にした。
「でも、おかしくないか?」
「潰し合いをさせたいなら、一人の方が効率いいだろ。」
御鏡も腕を組む。
「俺もそこが引っ掛かっている。」
「わざわざ仲間を作らせる理由。」
佳子が静かに呟く。
「能力者同士を繋げること自体に意味があるのでしょうか。」
御鏡は首を横に振る。
「まだ分からない。」
「だが、そこに狙いがある気がする。」
遠くで爆発音が響く。
俺は黒煙を見つめた。
「あいつは……何を考えてる。」
---
◇
同時刻。
一花は拝島たちと行動を共にして一日が経っていた。
リアは相変わらず無言のまま歩いている。
一花はその隣へ並ぶ。
「腕……まだ痛む?」
「問題ありません。」
「昨日から血が止まってないよ?」
「問題ありません。」
それ以上、リアは何も話さなかった。
一花は小さく息を吐く。
(本当に……大丈夫なのかな。)
その時だった。
建物の陰から三人組の能力者が姿を現す。
全員がリンク済み。
互いに武器を構える。
「見つけたぞ!」
「四人だ!」
「やるぞ!」
三人が一斉に飛び出す。
拝島はその場から一歩も動かない。
「リア。糸を出して繋げろ。」
「はい。」
リアの背中から一本の糸が伸びる。
その先は拝島の右手へ繋がっていた。
一花は目を見開く。
(操ってる……。)
リアは糸に引かれるように敵へ飛び込む。
敵の攻撃が肩を裂く。
血が流れる。
それでも止まらない。
拝島が指を動かす。
リアも同じように動く。
敵の懐へ潜り込み、糸が首へ巻き付く。
そのまま地面へ叩きつけた。
一人が気を失う。
その瞬間。
残る二人の表情が変わる。
「しまった!」
「リンク切れが!」
一花は思わず声を上げる。
「リンク切れ……?」
残る二人の動きが乱れる。
さっきまで息の合っていた連携が崩れた。
リーダーの男が必死に最後の攻撃を仕掛けた。
敵の攻撃が拝島へ向かう。
拝島は糸を強く引いた。
リアが前へ引き寄せられる。
攻撃はリアへ直撃した。
「リア!」
一花が叫ぶ。
リアは膝をつきながらも立ち上がる。
拝島は表情一つ変えない。
「身代わりにはちょうどいい。」
一花の表情が曇る。
(そんな……。)
(人じゃない。)
(まるで道具みたい……。)
その頃。
卑弥と一花も残る二人へ向かっていた。
リンクを失った二人は明らかに動きが鈍い。
「くそっ!」
「リンクが切れただけでここまで動けねぇのか!」
一花と卑弥の連携で二人を追い詰める。
数分後。
三人とも地面へ倒れ込んだ。
静寂が戻る。
一花は倒れた能力者たちを見る。
「今の……何だったんですか?」
拝島は静かに答える。
「リンクは万能じゃねぇ。」
「チームの誰か一人でも戦闘不能になれば、その後はリンクが強制解除される。」
「一度切れたリンクは再接続できねぇ。」
一花は驚く。
「そんな……。」
拝島は倒れた三人を見下ろした。
「だから弱い奴は足を引っ張る。」
「一人潰せば全部崩れる。」
三人は悔しそうに立ち上がる。
武器はまだ捨てていない。
拝島は静かに歩み寄った。
「お前ら三人。」
「負け犬のお前らにも利用価値がある。」
男が睨み返す。
「……何だと。」
「俺の隊に入れ。」
「残ってる能力者を殲滅する。」
「最後に決着をつければいい。」
男は鼻で笑う。
「信用できると思うか。」
拝島は静かに近付いた。
「耳を貸せ。」
二人は数歩離れる。
一花には聞こえない。
聞こえたのは、一言だけだった。
「……大津凪。」
男の表情が変わる。
「本当か……?」
拝島は静かに頷く。
「極力、隊を増やせ。」
それだけが、一花の耳にも届いた。
男は仲間を見る。
少し考え、小さく笑った。
「いいだろう。」
「乗る。」
拝島も笑う。
「賢い判断だ。」
七人。
新たな隊が結成された。
一花だけが、その光景を理解できず立ち尽くしていた。
(敵同士なのに……。)
(どうして、手を組むの……?)
第10話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は戦闘よりも、世界のルールや敵側の動きを描く回になりました。
「リンク」や「隊」という新たな要素が、今後の物語に大きく関わってきます。
一花が見た拝島たちの姿は、本当に悪なのか。
次回から、物語はさらに大きく動き始めます。
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次回もよろしくお願いします。




