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第11話 「信頼」

第11話です。


今回は御鏡と佳子の戦い方、そして二人の信頼関係が見える回になります。


二つのリンクが交わり、戦いは個人から「隊」へ。


ぜひ最後まで読んでください。


意識の端で、別のリンクを示す二つの光が揺れている。


「止まってください」


佳子の声に、俺たちは足を止めた。


人の消えた交差点。


乗り捨てられた車の向こうから、七人の能力者が姿を現す。


先頭にいるのは、俺を鎖で拘束した男。


拝島拘。


隣には他原卑弥。


その後ろには、見覚えのない小柄な少女が立っている。


見覚えのない男が三人。


そして、制服姿の少女がいた。


「反応は二つあるのか?」


俺が聞くと、佳子は右目に光を宿した。


「はい。二つのリンクが反応しています」


「でも、能力者は七人います」


御鏡の表情が険しくなる。


「二つのリンクが手を組んでいるのか」


拝島が鼻で笑った。


「こいつらも俺たちの隊に入った」


拝島が後ろの三人を指す。


「リンクが違っても、同じ目的で動く」


制服姿の少女が前へ出る。


「あなたたちですね」


「能力者を襲っているのは」


「何の話だ?」


少女の足元から、幾つもの光が伸びた。


しかし俺を見据えた瞬間。


光は一本に重なる。


「藤道一花です」


拳を構える。


「あなたたちを止めます」


一花が地面を蹴った。


一瞬で距離を詰め、俺へ拳を振るう。


「落さん、右!」


佳子の声と同時に、御鏡が俺を引いた。


拳が頬の横を通り過ぎ、背後にあった車の窓が砕ける。


「話を聞け!」


「言い訳は聞きません!」


一花が再び踏み込む。


同時に、拝島の後ろにいた男が地面へ手をついた。


アスファルトが盛り上がる。


無数の杭となり、俺たちへ迫った。


御鏡が前へ出る。


「反発!」


衝撃が弾けた。


すべての杭が、逆方向へ吹き飛ぶ。


御鏡が右腕を押さえる。


反発の反動なのか、指先が僅かに震えていた。


卑弥が右から蹴りを放つ。


御鏡は身体を反らし、間一髪でかわした。


直後。


黒い鎖が足元を薙ぐ。


「くっ……!」


片足を上げて避ける。


しかし、体勢が崩れた。


そこへ別の男が刃を振り下ろす。


御鏡は地面を転がり、何とか攻撃をかわした。


刃が制服の袖を裂く。


休む間もなく、次の攻撃が迫る。


御鏡は避け続ける。


だが、少しずつ動きが遅れていた。


「埒が明かねぇ」


「先に後ろの弱そうな女を潰せ!」


三人の標的が佳子へ変わった。


左右と正面。


逃げ道を塞ぐように、攻撃が迫る。


御鏡は佳子の前へ飛び込んだ。


「反発!」


激しい衝撃が交差点を揺らす。


三つの攻撃が弾き返された。


直後。


「ぐっ……!」


御鏡の右腕が、力なく垂れ下がった。


口元から血が流れる。


「御鏡さん!」


佳子が叫ぶ。


「これ以上は……」


「分かってる」


後方にいた拝島が、三人へ声を飛ばす。


「闇雲に能力を使うな」


三人の動きが止まる。


「力は無限じゃねぇ」


「使えば減る」


「手練れは残りを読みながら、どこで使うかを決める」


拝島の視線が、御鏡の右腕へ向く。


垂れ下がった腕。


口元から流れる血。


拝島が僅かに眉をひそめた。


「だが……妙だな」


「二発使っただけにしては、反動が大きすぎる」


御鏡は答えない。


佳子だけが、その意味を知っているように唇を噛んだ。


拝島が小さく笑う。


「まあいい」


「今は使えねぇ。それだけ分かれば十分だ」


三人へ顎を向ける。


「やれ」


三人が一斉に飛びかかろうとする。


考えるより先に、俺は右手を突き出していた。


「やめろォ!!」


ズンッ!!


三人の身体が、一斉に地面へ叩きつけられる。


「ぐあっ!」


「なんだこれ……身体が重てぇ!」


できた。


初めて、複数の相手へ力を向けられた。


だが。


三人へ広げた力を、同時に制御できない。


意識を少し乱しただけで、重力が一人、また一人と弱まっていく。


数秒も持たず、三人を押さえていた力が消えた。


「はっ、もう終わりか?」


三人が身体を起こす。


その僅かな時間に、佳子はポケットから小さなケースを取り出していた。


中には、連携用のワイヤレスイヤホンが入っている。


片方を自分の耳へ。


もう片方を御鏡へ渡す。


「連携でいきましょう」


御鏡は頷き、イヤホンを装着した。


垂れ下がった右腕を庇いながら、敵の前へ歩み出る。


そして。


静かに両目を閉じた。


敵が笑った。


「降参か?」


御鏡は答えない。


「佳子」


「はい」


「見えているか」


佳子の右目が淡く光る。


「ちゃんと見てますよ」


敵が一斉に動いた。


佳子の瞳が、敵の視線を追う。


肩。


指先。


足の重心。


能力が流れ始める瞬間。


そのすべてを視る。


「右」


御鏡が半歩だけ右へ動く。


拳が頬の横を通過した。


「ステイ」


踏み出しかけた足を止める。


目の前を黒い鎖が横切った。


「ダウン」


身を屈める。


頭上を刃が薙ぐ。


「アップ」


地面から突き出した杭を、最小限の跳躍でかわす。


指示は短い。


御鏡は一度も聞き返さない。


まるで一つの身体を、二人で動かしているようだった。


「左」


卑弥の蹴りが迫る。


御鏡は左へ半歩ずれ、紙一重でかわす。


「前、二」


迷わず二歩踏み込む。


左右から迫った二人の拳が、御鏡の背後でぶつかった。


敵の顔から笑みが消える。


「なんで……」


「目を閉じてるのに……!」


御鏡は、佳子の声だけを聞いていた。


言葉は短い。


それでも、二人には十分だった。


「見ているのは、俺じゃない」


佳子が僅かに笑う。


「さあ、反撃開始ですよ」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


御鏡の力には、通常の能力消費とは異なる反動があるようです。


そして、目を閉じて佳子へ視界を預けた御鏡。


短い指示だけで通じ合う二人の連携を楽しんでもらえたら嬉しいです。


次回、反撃開始。


落と一花の選択も動き始めます。

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― 新着の感想 ―
しっかり描き込んでいる作品ですね~ 情景が深いです 「前を向け」が、落の生き方そのものを少しずつ変えていく言葉になっているのが印象的でした。 能力の謎だけでなく、御鏡と佳子の息の合った連携や、リアを…
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