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【探偵#9】

僕の名前は天瀬湊、ちょっと特別な高校に通う、勉学に励む17歳。


「湊くん!次はテストも終わったことですし、早く行きましょう!」


僕の横ではしゃいでいるのに上品さが抜けないのは、この学校に転校してきたエルフの姫、フィリア=アストレア。


「フィリア、あんまり食べ過ぎると良くないんじゃない?」


「週に一回程度なら、問題ありませんし普段から健康に気を使っています!!」


またハンバーガー食べたって知ったら、ノクスが切れそうな…


「今日はノクスは本国との打ち合わせで先に家にいますし、余計なことは言われません!!」


「そうだねって言っていいのかわかんないけど、今日はたくさん食べよう」


僕も一つ、厄介な賭けを挑まれて、正直疲れてる。


(森田…なんであんなことを)


今度行われる瀬礼市での高校生の演劇発表会、なぜかそれにフィリアを誘う権利を掛けて、森田修也と戦った。


結果は僕が辛勝。約束通りチケットを貰い、護衛のノクスも含めて見に行くことに。



森田の真っ直ぐな気持ち、そして自身の気持ちに整理がつかないまま、フィリアとの関係がこれでいいのかと迷っている自分がいる。


(でも、まだこの関係が居心地がいいんだ)




_____________________




フィリアと行きつけのハンバーガー屋に行き、日が暮れる前に家まで送っていた。


「湊!今日もありがとうございます!また行きましょう!」


「うん、次はノクスも来れるといいね」


今日話した内容のほとんどはテストの反省会、正直思い出しなくない記憶になりつつあるのが、フィリアの前にそんな感情は蓋をした。


「では、明日の放課後は休日の演劇イベントの話をしましょう。では」


とんがった耳に髪をかけながら、手を振って彼女はエントランスに入っていく。


「ノクスにもよろしく伝えといて!」


僕は彼女が見えなくなるまで手を振り続けた。



_______________________




「瀬礼市でとある名の通った暗殺者の目撃情報が増えている、警戒を怠るな」


私の名前はリュシエラ・ノクス、エルフの王族に使える護衛兼メイドの妖精族。


電話先はゲートを超えた先、そこにある我らの故郷、アストレア王国。


「了解しました、お嬢様に及ぶ危険は全て排除します」


本部の人間、とくに騎士団の幹部連中はみな親バカに近い、お嬢様のことが心配でならないのだ。


「その暗殺者は、忍術に精通しているとのこと、ターゲットの情報はまだ入っていない」


噂で聞いたことがある、確か同級生である森田修也の家、森田家に代々仕えてる暗殺組織。


「何か些細なことでも必ず本国に連絡するように」


こちらの準備はいつでも…という言葉を最後に、電話は切れた。



思い返せば、お嬢様の留学が瀬礼市の瀬礼国際高等学園に決まった時、その時の皆の動揺はひどかった。


やれ騎士団の精鋭を地球におくり、新拠点を作るだの。護衛に何数名も名乗り出るなど。


王国の騎士団がこの程度で動揺してもいいのかと本気で思ってしまった。



まぁお嬢様のお世話や生活関係、そして護衛は古くから使える私になることは皆わかっていた。


そもそもお嬢様は年頃の女の子、同性でないと諸々大変だろうし、何十名のエルフの騎士が日本にやってくること自体、現地の者達を混乱させるだろう。


戦闘力も使用人としても、私の実力的に文句は出なかった。



異界との通信が可能な携帯機器を丁寧に切り、所定の位置に戻す。



「暗殺者か、この街で珍しいからすぐ情報が入る」



お嬢様の留学が許可される、つまりは治安の問題は当然良くなければならない。



この瀬礼市はゲートが開き、異界と地球が混ざる混沌の街。


だが、そこには強力な探偵組織、金花探偵事務所が存在している。


この街で事件を起こしたり、犯罪を起こす組織は即壊滅するといわれている。


探偵の影響で犯罪組織や地球の利権を狙う異界人がこの地を避けているというのがこの街の現状。



私が様々な情報を頭で整理し終わったと同時、部屋のドアが盛大に開く。


「ノクス!只今戻りました!」


このテンション、機嫌がすこぶるいいらしい。


「お嬢様、今日は天瀬とハンバーガーを食べてきましたね、匂いでわかります」


「え…そんなに匂いがするの…」


かなりショックを受け、横に置いてある消臭剤を体にかけ始めた。



「お嬢様、安心してください、私が特異なだけで、情人からすればほとんど感じない匂いですよ」


頬を膨らませながら、お嬢様はプイっと顔を背ける。


「ノクスの意地悪」


「お嬢様、今日は何が食べたいですか?テストも終わったので美味しいものでも食べて疲れを癒しましょう」


お嬢様は美しい。私の使命は…


この何にも代えがたい美しい日常と、彼女の未来を守ること。


その為なら、命だって惜しくない。



(お父様…私はノクスを名乗れる妖精族に成れたのかな?)


この問いは、きっと一生帰ってこないのだろう。




_____________________




森田財閥 書斎_____



「島崎、頼むよ、俺はもう引けないから」


「修也様、いくらなんでも…それはまずいのでは?」



イラついたのか、背丈ほどある本棚を強引に蹴りつける。


「島崎、なに?勘違いしてる?」


「そんなことはありません!ただ…党首様もそこまでとは…」



森田修也はどす黒くにごった目で、島崎という男を見つめる、そこには絶対服従を確信した何かがある。



「なら捕まえて、政治や経済的に利用すればいい、敵は多いだろ!」


「そんなことすれば、戦争になってしまいます!轟の人間がいたとて…」


彼の言葉は、森田修也には届かないようだ。


「俺の者に成れないなら…もう強引にいくだけなんだよ!!」


格下とみなした男に負け、さらには目を付けた女の思いさえ”奪われた”のだ。


「修也様…」


「もうチケットは渡した、あとは、”椿と豪太”を動かして」



まるで周りが見えない暴走機関車となった彼の選んだ選択は、のちにとんでもない事件を引き起こすことになってしまう。


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