【探偵#3】
私の名前は星都風香。
「ずいぶんな荒らされっぷりね、猛獣でもきたの?」
「にしては傷口がきれいすぎるな」
瀬礼市で起きた事件に介入する、金花探偵事務所の探偵。
「この病院に来てる奴らは全員生き残り、というか、逃げ出してきた奴らだとよ」
用心棒、練斗も一緒来てくれた。
「星都さん、来てくれたんですね!!」
異界病院の待合室、その後ろから大きな羽が飛び出してくる。
「おー、マリー!元気してたか!」
「煉城さんも!駆け付けていただきありがとうございます!」
どこか幼さを残す美女、この病院の医師、マリー。
その特徴は背中の白い羽、そう、彼女は正真正銘の天使族。
「今回来ていただいたのは、電話でも話した通り、いきなり異界人の集団が何者かに襲撃されたんです!」
「ほうほう、それでこの病院に流れ着いたと」
練斗が周辺を見渡す、が、まさに凄惨な光景。
オークは深い裂傷、もう一人の鬼人族は何やら手裏剣が刺さっている。
「そうです、まだ集落には、回収できていない者達もたくさんいると」
それに…とまるでなにか気持ち悪い物を見たように話す。
「集落の若い女性、誘拐もされているそうです…」
美しい金色の髪を持つ顔に影、ここにいるのはギリギリで救えた半数ってことのようだ。
まず現代の日本は異界とゲートが繋がり半世紀、共存は進んでいる。
だが、根強い異界人差別も存在している、それはまさに社会の闇。
もちろん社会の輪に入り、人間と同じく働いたり、種族の力を生かしこの地球を良くしているものが大半。
けど…ゲート開通に伴う経済発展の犠牲者、安い労働力として連れてこられた異界人は、まともに生活することすら厳しいものも多く存在する。
病院だって行けないほどに。
そして、そんな異界人を救うために、この街外れのぼろい建物が作られた。
マリ―が天使の回復魔法で異界人専門の病院、時には様々な事情で生活苦になった異界人をかくまっている。
「今回襲撃されたのは、鬼人族やオークが大半を占める集落、たしか跨線橋の下に住み着いている…」
そして襲われたのはその近くの路地裏で食料や資材を調達している時だったという。
「それで、生き残った奴からはいろいろ聞いたのか?」
練斗がマリーを見つめる、練斗の雰囲気が怒りを帯び始めていた。
「はい、どうやら暗がりでいきなり男女の忍びに襲われたと、お互いをダーリンとハニーと呼び合いながら、そして暗器と二人の連携で一瞬にして…」
鬼人族もオークもそれぞれ異界で生まれた種族であり、戦闘に覚えもあるはず。
それを数すら関係なしに制圧する…一体何が目的?
でも、これで大体状況は理解した。
「マリー、今回の依頼はつまり、この襲撃者を探してってことね」
「はい、おそらく警察も異界人同士の喧嘩として、取り合ってはくれないと思います…」
魔法を多く使ったのだろう、立派な羽からは元気を感じない。
「目的も動機も見えないが、この瀬礼市で事件を起こした、それはもう死んだも同然なんだよ」
用心棒、煉城練斗の目の色が変わる、赤い二本の角からは煉獄が漏れ出している。
(私達、金花探偵事務所がいる限り、この街を狙うなら、許さない)
私は小さな覚悟をもう一度入れなおした。
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同時刻、どこか、薄暗い地下室。
「なんで…私達を誘拐するの…」
そこに集められたのは猫型の獣人族と鬼人族の女性数人、しかも皆若い。
(いったいなんで…こうなった…?)
鬼人族の女性は体感で数時間前の事を思い出す。
縄で絞められた女性たちは、集落でただいつも通り暮らしていた。
男性が日雇い、集落の多くは女性の異界人が多く残る。
その時だった。集落に突然奇妙な風が吹く、それは黒く色ずく謎の風。
だが、それを吸った瞬間、多くの物が突如倒れていく…
気が付いたら、ここだったというわけだ。
「みんなは…?子供たちは…?ここはどこ!」
鬼人族の女性が叫んだと同時、途轍もない速さの鞭が音を立てて撓る。
「ぎゃ!!」
「僕の趣味道具が許可なく話すな」
鞭をふるった男、その顔は正に恍惚。
「異界の女、頑丈で実に素晴らしい…」
集落の女性たちは一瞬で理解した、この男が私達を道具としか見ていないことに。
「でも…こんな野生臭い女より…必ず…必ず…」
その男のスマホに映るは…金髪のエルフ美女、そう、アストレア王国の王女。
「僕は…必ず手に入れる…たとえどんな相手が立ちふさがっても」
この男…狂気に染まる”趣味”。それがこの事件を広げていく。




