第75話 細海先輩と御森くんと休日の定義
祝日
カレンダー通り営業の弊社にとって祝日とは休日のことである
デメリットとして必ずどこも混んでいるけど
1人飯デー以外は引きこもっている私にとって、1週間で1日多く休日があるのはとてもとてもありがたいことなのだ
「(何時まで寝てられるだろう…最近は朝に空腹で目が覚めてしまうから朝ごはんや枕元に水分もちゃんと用意して)」
何も予定がない日、これが私にとって純粋な休日のため
祝日の前日はこれでもかというほど用意をする
全ては〝回復〟にあてられる時間を有意義に過ごすためだ
「(そのために今日は朝から寝床も布団乾燥機をかけてきた、家に帰れば質の良い睡眠が待ってる!)」
晩ご飯も軽めで栄養価重視にしよう
そんなことを考えていると「先輩ちょっと良いですか」と御森くんに声をかけられる
「はい、どこか分からないところがありましたか?」
「あ、すみません、業務の内容じゃなくて」
おもむろにスマホの画面を私に向けると
「明日、知り合いとこのイベント行くんですけど、お昼におすすめの店ありますか?」
イベント……?
「……ちょっと待ってくださいね」
じーっと画面を見つめる
結構遠くだ、乗り継ぎも何回かするだろう
平日の端境のイベント……こんな遠くに……
「会場から少しだけ歩きますけど、確か有名なうどん屋さんがありますね」
そう言いながらURLをLINEで送る
「ありがとうございます!あ、予約できるじゃないですか〜!お昼休憩の時に電話してみよ」
ニコニコと嬉しそうにスマホをポケットにしまい業務に戻る御森くんに素朴な疑問をぶつけてみた
「御森くんには、疲労という概念がないんですか?」
「え、なんですか急に、俺だってちゃんと疲れるから遊びに行くんじゃないですか〜」
疲れるから、遊びに、いく……?
「疲れてる時は、休んで疲労回復するのでは?」
「??え、はい、だから休むために遊びに行くんですよ?」
「「………???」」
数秒、お互いが何を言っているのか理解しようと空気が止まる
「か、からだを、休めるのが〝疲労を回復させる〟方法では?」
御森くんが休みの日に遊びに行くのを否定したい訳ではない
疲労回復のために遊びに行く事が私の中で整合性がとれなさ過ぎたので体育の教科書みたいな発言が出てしまった。
「やー、体を休めるっていうの分かるですけど、俺1人で閉じこもってるのストレスなんで気持ちを回復させる方が第一優先ですね」
〝あとまぁ、寝たら疲れって取れるじゃないですか?〟
当たり前のようにつるりと出てきた言葉に、同じ人間のはずがここまで個体差があるのか…と息を呑んだ
「まぁ、睡眠の質も人それぞれですからね……」
ただ寝るだけで疲れが取れる訳ないだろう
という言葉を飲み込んだ私は「ちなみに、うどん屋さんのおすすめは海老天と卵あんかけうどんだそうですよ」と大人の対応をして会話を終わらせた訳ですが
祝日明けに「めっっっちゃ出汁が最高でした!!」とイベントも満喫していきいきしている御森くんを見て、底しれぬ恐怖のようなものを感じたのでした。




