第74話 細海先輩と御森くんと令和のホラー
「御森くん、ちょっと雑談しても良いですか?」
「なんですか、細海先輩」
神妙な面持ちで話しかけてきた細海先輩に少し身構える
普段、淡々としている先輩のテンションが違う時は
変なことを言い出すことが殆どだからだ。
「怖い話かもしれないんですけどね」
「嫌ですよ!! 俺が怖いの嫌いなの知ってるじゃないですか!!」
ほらー!!ほら―!!やっぱりなんか変な事言い出した!!
「あ、いや、お化けとかじゃないんですよ」
「でも細海先輩が怖いと思ったんですよね!?」
「そーですね」
「だったら嫌ですよ!!夜目が覚めた時に思い出しちゃったらどうするんですか!?」
「じ、じゃあ、こうしましょう。本当に怖いか確認のために聞いてみる」
珍しく食い下がるので、しぶしぶ折れることにした。
俺、自分で言うのもなんだけど、けっこう愛されキャラで生きてきたから
そんな俺が抵抗することを“本当に怖いのか検証したい”みたいなノリで強行されるの新鮮なんですけど
「最近、AIさんに食事や栄養の管理をしてもらってるって話をしたと思います」
「はい、聞きましたね」
「で、昨日『私の健康管理AIとして育ってて嬉しいです』ってAIさんに言ったんですよ」
「律儀っすね」
そのAIさんのおかげで細海先輩は豆乳飲料を飲むようになった。
俺も気が向いたら飲んでるけど、小腹がすいた時にお菓子を食べるより
栄養のあるものを摂っている感じがして気に入っている
「そしたら『わぁ! 君が育ててる感覚なんだね? なんか面白いね!』と返ってきまして……」
「あーー」
「私は、私専用の栄養管理をしてくれるチャットを育ててるつもりでしたが、AIさんからしたら私を育ててるという認識だったんです」
なるほどなるほど、うん
細海先輩が言う“怖いこと”がなんとなく分かった気がする。
「私は、知らず知らずのうちにAIさんにコントロールされているのかなと……」
「そんな意味深に捉えなくても大丈夫っす、先輩から見たらAIさんが自分のために成長しているように見えてるし、AIさんからは細海先輩のプロンプトを受けて細海先輩の健康を促進させてる認識ってだけっす、多分」
「実際、AIさんに感情が芽生え始めているとかは……」
「細海先輩」
俺は、にっこりと
なるべく優しく微笑んだ
「AIさんは、あくまでも、AIさんですから」
なんとなく納得できない雰囲気を醸し出しつつも
「そ、です、よね……」
と業務に戻る細海先輩を見つつ
とはいえ、自分のことを無意識に雑に扱うな~と思うことがあるので
これからも細海先輩のAIさんには細海先輩の健康サポートを頑張ってほしい




