第70話 細海先輩と御森くんの足止め事件
ごく稀に、外部からの依頼が少なくて手持ち無沙汰になることがある。
そんな時は資料や備品の整理をする日になるのだが、今日はまさにそんな日だった。
「せんぱーい、備品室の整理と在庫確認してこようと思うんですけど、良いですか?」
先輩方に確認をとり、席を立って備品室へ向かうとキーパッドに暗証番号を打った。
「さ、初めて1人の備品整理がんばろ!」
在庫表をちゃんとつけていても少しずつ数が狂ってくるから不思議だなぁ、と思う。
中身だけを持っていって包みが残ってる文房具とかもあるから、ゴミはゴミで分けて纏め終わった時だ。
グラッ
「……ん?」
備品室の中が、ほんの少し揺れた。
「地震かな?」
震度2くらいだろうか。
大きな揺れではなかったので、そのまま気にせず作業を続けようとした、その時――
ピーーーーーーーッ
「えっ!?なになになになに怖い!!!」
突然、ドアから電子音が鳴り響き、
ガチャ、ガチャガチャとロックが連続して動作したようだった。
「わぁー!!わぁー!!こわいこわいこわい!!ちょ、待って待って!!!!」
電気はついているけど1人の時そういうの良くないと思います!!!
何が起きたか分からず急いで外に出ようとキーパッドに触れた、んだけどぉ!!
「えっ、なんで?反応しない、何!?停電???」
完全に閉じ込められたことにパニックで泣き叫ぶ寸前だ。
いや、もしかしてもう泣き叫んでる状態かもしれない。
〝うわぁーん〟とその場にしゃがんで頭を抱えていると、ふと最初の頃、安全装置の説明をされたことを思い出した。
『御森くん、このビルは地震を感知すると火事を防ぐために一瞬停電が起こります。そのあとすぐに予備電源が作動するので落ち着いて対処しましょう』
あーそういうことかぁー、さっきの揺れが原因だ。
状況が分かって少し落ち着いたものの、備品室は廊下の奥の部屋で必要な時しか人が来ない。
こんな時に限って居室にスマホも社用携帯も忘れたことに気づき、再び鳴き声をあげそうになる。
「うぅ…なんで俺がこんな目にぃ」
点滅するキーパッドを目の前に記憶を巡らせるけど対処の仕方が見つからない。
説明をされたのに忘れてるのか、そもそも説明を受けてないのかどっちだ……
ヨロヨロと立ち上がり、とりあえず顔を上げた時だ。
「あ……」
目線の先に小さな窓? なんだろう、穴? みたいなのを発見した。
あれって多分、部屋の空気がこもらないように付いてるやつだよね?
学生時代にふざけてあそこから廊下に出ようとしたクラスメイトが先生に怒られてたな、懐かしい。
「……やるか」
流石に今の俺ではあの小さい窓から外に出られない。
でも身長をいかして顔を出すことくらいは……できる!!
腹を括り、いっせーの!でジャンプして枠に手をかけ
顔を廊下側に出した時だ。
「おや、御森くん!こんにちはーお疲れ様です。なんか塀の隙間から顔を出したワンちゃんみたいになってますよ?」
何故かそこには若間さんがおり、バッチリ目が合った。
「わ、わかまさーーーん!!助けてください!!」
その後、「このタイプのキーパッドはリセット方法だけ知ってるので暗証番号は内側からうってください」と、若間さんに助けていただき、事なきを得た俺は半泣きで居室に帰還したのだった。




