第68話 細海先輩と御森くんとタンパク質の話
「あ、細海先輩が白湯以外の飲み物飲んでる!」
ランチ休憩から戻った御森くんが開口一番
私の飲んでる紙パックを見てパッケージを覗き込む
「なんすか、めっちゃ美味しい飲み物とか見つけた感じで……豆乳だ」
「豆乳です」
飲んでいるものが豆乳飲料と知り、分かりやすくテンションを下げ、ゆるゆると席に座った。
「…俺が知らないだけで、豆乳飲料がめっちゃ美味しいという可能性が…?」
「普通に美味しいですけど、御森くんの思う〝美味しい〟の基準に合致するかは保証できませんね」
ズズズっと音をさせ、最後まで飲み切ったのを確認すると
紙パックを畳む
「何でまた食後に豆乳チョイスなんですか」
「ここ最近、カロリーの高い物を食べると胃が重くてですね」
足元のゴミ箱に捨てながらため息をついた
「タンパク質が足りてない可能性があるらしく、胃の動きが弱っている場合もあると言われたので」
豆乳を投入である
「タンパク質が足りないって、知り合いに栄養のプロの人とかいるんですか?」
「いえ、AIに」
「AIに!?」
不調の自己診断が苦手な私だが、
御森くんの教育係になって以来、自己診断くらいは出来るようになろうと考えた。
そこでまずは、体調が悪い時の状況や日々の食事を入力しAIに相談した。
言語化をしてもらい自分の中で「これはこういう状態なのだ」と認識できるようにしてみたのだ。
おかげで現在、私のAIは順調に健康サポーターとして成長している。
「動物性のタンパク質を無理に摂ると体が全体的に怠くなるので、とりあえず植物性のタンパク質を意識して摂ろうと思って」
「タルタル祭りしてた人なのに!?」
「いやぁ…タルタル祭りは美味しかったんですけど、あれがトドメでしたね…胃が疲れてる状態と夏バテと相まってダメージが残りました」
胃が疲れてるそばから食べたい物を食べたいだけ食べたツケを払ってる状況である
「じゃあ、豆乳を飲んでコンスタントにタンパク質を補っていれば不調が解消するんですか?」
「解消したら良いですね〜」
「なんで他人事なんですか!!」
森羅万象、これさえ食べていれば大丈夫なんて食材はおそらく存在しない
「食事療法、と呼んで良いレベルかわかりませんが、人の細胞は約3ヶ月周期で生まれ変わるとかなんとか」
「……え、あの……はい?」
「なので、この豆乳生活も医学的に、というより漠然と3ヶ月後に摂取したタンパク質の結果が反映されてたら良いですねぇ〜レベルなんですよ」
これに関しては、日常的にタンパク質不足な生活をしていた私が悪い。
作るのが面倒な時にラーメンとかうどんとかに頼りすぎた。
生物の体は、食べた物で出来ているのだ。
「3ヶ月…」
おそらく毎日しっかり栄養のある物を沢山食べているであろう御森くんには、縁の無い知識だろう
「因みに、何味の豆乳飲んでたんですか?」
興味が湧いたのか、ゴミ箱の中を見つめるので
「今日は抹茶味です、結構色んなフレーバーがあって下のコンビニにはココア味が売ってますよ」
と、教えた数時間後
飲み物を買ってくると言って帰ってきた御森くんの手にココア味の豆乳飲料があり
「あ、思ったよりうまっ!!」
という呟きが隣から聞こえたのでした。




