↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
細海先輩と御森くん  作者: 紙屋川トカゲ
2章 本格始動
PR
74/82

第67話 細海先輩と御森くんの残業

それは、いつものように忙しさを感じつつ

俺らしく楽しく仕事に取り組んでいた日の

業務終了間近の出来事だ


「お待たせいたしました、サポートの細海です。」

サポート回線から入ったコールを受電した細海先輩の目が申し訳なさそうに曇る


「御森ですか?はい、はい、承知しました。お繋ぎします。」


唐突に自分の名前が出た事に緊張しながら、インカムをつけた

「え、細海先輩、俺なんかやらかしましたか…」

ここ数日の業務が走馬灯のように巡るが

それらしい案件が見つからない


「いえ、先日説明会に行った会社の課長さんなんですが」

「あぁ、あの時の?」


その説明会で随分と俺のことを気に入ってくれた課長さんがいた。

個人LINEまで聞かれそうになったけど、コンプライアンスの問題でお断りして名刺を渡した時

『困った時は是非御森くんにご教示願いますよ!』

と、景気良く肩を叩かれたが

まさか本当にご指名がくるとは…


「了解です、繋いでください」


名刺入れからその時にいただいた名刺を出し

通話を繋いだ


『御森くん!!先日はどうもどうも』

嬉しそうな声に「こちらこそ、先日はお世話になりました」

と、問題なく対応をスタートした訳だが…


「で、ですね、画面中央の登録を押して完了です」

『おー、ありがとう!ところでこの機能なんだけど…』


対応を始めて10分

最初は5分ほどで完了できる案内だったが、地続きで質問が続いた。

「あー、そちらはまだですね」

簡単な質問だったので俺もこの時は何も思わず回答したのだが



対応を始めて25分

「そちらでご希望のデータが出力されましたでしょうか?」

『これこれ、これが欲しかったんだよ!ところでこのデータって修正できないの?』

「あ、修正はですね…」



対応を始めて40分

『なるほど!じゃあ変更した場合、前の情報はどうなるのかな?』

「上書きになるので心配な場合はバックアップしておくのをおすすめします。」

『なるほど、ところで…』



え、どうしよう、全然終わらない

終わったら終わったそばから別の質問がくる

パソコンに表示された時刻が終業時間に近づくのを見ながら

ふと、説明会の時の細海先輩の言葉を思い出した。


「御森くん、こちらのお会社はとても熱心かつ詳細を確認される利用者様が多いです。1回の質問でお時間を要する可能性が高いので、なるべくおおらかな気持ちで対応できれば理想的です」


そしてさっきの申し訳なさそうな目はこういう事だったのか…と腑に落ちた

とはいえ、入社して約半年

申請方法は教えてもらったけど、そこまで遅い時間まで残業をしたことも無い。

何より大体は細海先輩と一緒に業務が終わる

でも、今回は完全に俺だけ業務が長引いてるパターンだよね?


チラッと隣を見ると細海先輩が終業作業をしているのが見え少しだけ焦っていた時だ


「細海さんは業務が終わったら定刻で上がってください」

と、部長が言いに来たのを見て「あー…初めての1人残業だぁ〜」と心の中で涙を流しつつ電話口でしっかり声の笑顔をキープした俺は偉すぎだと思う。


……

…………


『やぁー御森くんありがとう!!またよろしく頼むよ!』



こうして、俺の業務が終わったのは定刻から2時間経った時だった。


「つ、疲れた…」

急いで打刻と残業申請を出し、ふと手元を見ると

細海先輩の字で〝帰りの廊下が怖かったら電話してきていいですよ〟と書かれたメモが置いてある。


「もー!細海先輩過保護っすよ!!そんな会社の廊下が怖いわけ…」


一歩居室を出ると人気のない真っ暗な廊下がシン…と広がっていた


「……」


そのまま流れるようにスマホの電源を入れると

LINEを開き細海先輩の通話ボタンを押してみる


『お疲れ様です』

「お疲れ様です、細海先輩メモありがとうございます…」


ひとまず、間接的に1人を回避できたので

恐る恐る廊下を歩き出した。


『あそこの会社は完全に理解されればいっさい連絡が来なくなるんですけど、初動がとにかく細かくて時間がかかるんですよ』

「や、熱心なのは良いことですよね…でもできれば早い時間にお問合せしてほしいっす」


なるべく周りは見ないように、会話に集中していたから

リフレッシュルームの電気がついていた事に気づかず

不意に、後ろから肩を叩かれた衝撃で「だぁあああ!!」と情けなく叫んでしまった。


「あーびっくりしたぁ…御森くんお疲れ様!」


振り向くとそこには缶コーヒーを持った部長が立っていた。


『御森くん!?どうしたんですか!!』

軽く腰が抜けて床にしゃがむ俺の代わりにスマホに向かって

「細海さんお疲れ様ぁー、ここからは僕が御森くんと警備室までいくから大丈夫だよー」


そういうと、〝あ、合流したんですね、ではお疲れ様です〟

と早々に細海先輩は通話を切ってしまった。


「ぶちょ〜脅かさないでくださいよぉ〜」

「いやいや、僕ちゃんとリフレッシュルームにいるからねって声かけたでしょ、新人さん1人で残業させませんよ!」

ヨボヨボと立ち上がりながら、そう言えば電話中そんな事を言ってたような…


「改めて御森くん、お疲れ様です」

そう言って缶コーヒーを渡してくれる

「じゃあ、この時間まで残業した時の経路を説明するので付いてきてください」


ニコニコといつもの調子の部長に安心しつつ

今後、この時間まで残業だったら本当に1人で帰らなきゃいけないんだなぁ…と少し重い心を引きずって帰路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。