第65話 細海先輩と御森くんとワードローブ
夏の暑さも少しずつ和らぎ、
風通しの良い服の中に、しっかりとした質感の長袖が混ざり始めた頃
仕事着の制服化をしている細海先輩にも少し変化があった。
「おはよーございます!細海先輩いつもと雰囲気違いますね!」
「おはようございます、今日から秋冬のローテーションが混ざっていきます」
俺はまだ暑いから夏服のままだから服好きとしては羨ましい
「良いなぁ、俺も早く長袖着たいっす」
パソコンの電源をつけて席に座ると
ジワっと汗が出る感覚に眉をひそめる。
「うー…動いてると大丈夫なのに止まると汗が出るのイヤすぎる」
手で自分を扇ぎながら今日の業務を確認していると
「御森くんくらい筋肉量が有るとまだまだ暑いんでしょうね」
と、隣からファイルを団扇がわりに風を送ってくれた。
「わーありがとうございます〜!そうなんですよ、だから皆んなが衣替えしたあとも暫く半袖が続くのめっちゃ寂しいとか有ります!!」
もう大丈夫です。と、手のひらを向けると
細海先輩はパソコンに向き直った。
「私は逆にずっと長袖で半袖の出番は年々減ってますよ」
「そういえば、休日にたまたま会った時も長袖でしたね」
熱中症の疑いがある人に声をかけた日に
細海先輩が着ていたのは
確かに長袖のシアーシャツで素材が涼しげだったから
ぜんぜん暑い日にラーメン屋さんから出てきても違和感の無い服装だった。
「素材で遊べるの羨ましすぎる」
流石に服好きの俺でもシアー素材の服は勇気がいる
「最近は太陽の光を避けるために長袖でも暑くない服が増えてありがたい限りです」
こうやって話していると細海先輩は普通にオシャレを楽しめる人なのだろう
仕事の日は仕事をするためのコスプレだと言っていたが
なんで仕事の日は絶妙にチグハグな服をわざわざ仕事用の制服にしてるんだろう
「細海先輩って、仕事用のコスプレをアップデートしないんですか?」
前に聞いた時は家族のお下がりを仕事用の制服にしていると言っていた
でも、自分用に買った服じゃないせいか
いつもどこか〝似合っていない〟けど〝それっぽい〟を行ったり来たりしてる気がする
「あー…」
なんとも気の抜けた声を漏らし
「理由としては、着飾る寄りになると化粧をする時間を確保しなくはいけないのと、仕事の日と休みの日の落差を楽しみたいから、ですね」
「前者は身だしなみより睡眠を取ってるってことですね?」
「御森くん、そういうのは気付かないふりをするものです」
〝さ、そろそろ朝礼が始まりますよ〟
そう言って朝礼ノートを開けた
「はーい」
自分もノートを開き、今日の業務についてメモを取る準備をする
「(落差を楽しむかぁ)」
俺は常にテンションが上がる服装をしていたいから細海先輩の気持ちは分からないけど
服装でその時の気分を変える、って考えたら
それはそれで楽しそうだな、と思った。




