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細海先輩と御森くん  作者: 紙屋川トカゲ
2章 本格始動
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第59話 細海先輩と御森くんとタルタル祭りとは別腹

「ぐっ……あ゛~おもしろかったー!!」


隣で豪快に伸びをする物部に笑いつつ

次々と席を立つ人たちの波に乗って映画館を後にした。


「いやぁーそれにしても細海ちゃんどう?めっちゃ作画良かったと思わん?」

「確かに、線が綺麗と言うか、内容も分かりやすくて凄く見やすかったです」

「でしょでしょ?めっちゃおすすめだから気になったら全巻漫画貸すからね!」

「それは、いいかな…」

「なんでさー!!」


公開初日から計15回、物部がこの映画を見た回数である

彼女はたびたび私や、私以外の友人を推し活に誘っては布教に余念がない

定期的に映画に誘われるのも、その一環なのだった


「もうね、私は主人公の彼を100憶の男にしたい訳よ~」

チケットの半券と鑑賞特典、そして“ぬい”と呼ばれる推しさんのぬいぐるみを器用に片手で持ち

写真を撮る物部はとても輝いている。


「物部が誘う映画は大体面白いからありがたいですけどね」

そう言いながら自分がもらった特典を開封した。


「だれだれだれだれだれ?」

「圧がすごいな…“二次崎さん”ですね」

私は必要ないのでそのまま物部に譲渡すると「にじちゃんきたっ!!!!!」と

特典を天に掲げ祈り始めた。


「ありがとう、細海ちゃん。細海ちゃん、ありがとう」

「コンプリートした感じですか?」

「違うよ、うちに一次くんが既に2人いるんだけど二次崎くん一人だけだったから、さ?」


“ね?”とウインクされたが、よくわからないので「そうなんですね」とあいまいに返事をする

15回観に行ってまだ全種揃ってない、ということか2週目に突入しているのかは聞かないでおこう


「さて細海ちゃん、おなかすいたね!食べたいものはあるかい?」

ご機嫌なステップで横を歩きながらそう聞かれ、少し悩んだのち「お蕎麦」と答えた。


「お蕎麦?お肉とかじゃなくて良い?」


物部と遊ぶときは家で食べれないものを食べようと洋食屋や焼き肉などに行くことが多い

突然さっぱりしたものを提示して申し訳なさを感じる


「蕎麦で、あの、タルタル祭り…」

そこまで言うと「あー」と納得したように近くの蕎麦屋を検索し始めた


「御森くんとの会話、後ろで聞いてたよ?連日タルタルソース料理はいかがですか?」

「最高ですよ、帰宅後の時短料理と違って食べたいものを時間かけて作って食べるのは楽しいです」


この夏季休暇中、2度寝するためにわざわざ早朝に起きて朝ご飯を食べ、惰眠。

夜はチキン南蛮や白身のフライ、サーモンムニエルなど

好きなだけタルタルソースをかけて食べるという自堕落生活を満喫している。


「おかげさまで今日はお出汁、口当たりがよい、さっぱりみたいなのが食べたいです」

「なるほど、それでお蕎麦ね」

「ですね、あと気が付いたんですけどタルタルソース使う料理ってほぼ揚げ物なので油の匂いがしないものが良くて」


“オッケーじゃここ行ってみよう”そう言って物部が見つけてくれたお店で

メニューを隅から隅まで眺める。


「私、バラ天丼とざる蕎麦のセットにしようかな、細海ちゃんは?」


メニューをぱたんと閉じ、真っすぐ物部を見据えた


「おろし天ぷら蕎麦(冷)で!」

「おぅ、細海ちゃん、油のにおいがってやつどうした、きりっとした顔やめろし」


久しぶりに食べたプロ仕様の天ぷらと香り豊かなカツオ出汁を堪能し

少し胸やけを引きずりつつ私の夏季休暇は過ぎていくのでした。

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